((297)  健康 寿命 と 最期  

(297) 健 康 寿 命 と 最 期

この表題で、皆様方はぼんやりと、その意味が推定できるでしょう。そうです、平均寿命が長くても「元気な長生き」でなくては意味がない、と。しかし「元気と不元気との境目」を どう見分けましょうか? この点に関しては、WHO(世界保健機関)がある程度の見解を示しています。

♣ 大きく二つの考え方があります: ① 心身障害のない平均寿命、つまり健康寿命とは、その人の基本的 A.D.L.(食事・更衣・排泄・入浴)の遂行能力に支障がない生存期間である(実務的には「要介護でない期間」)。 ② 心身障害のある平均寿命、これは重い病気や難病で困っている場合、その程度に応じて、寿命の年数を統計計算の上で」、割り引いて計算します(例:不妊慢性リュウマチは2割減、認知症は3割り減、など)。

♣ ① について、東北大の研究があります。それによると、日本人の65歳時点の平均余命は、男 16.1年、女 20.4年ですが、自立でない期間は、男で 最後の1.4年、女で2.7年だと言います —— 逆に言えば(平均値ですが)人々は この程度の期間、介護を受けたあと、亡くなる、という意味です。

♣ ② については、WHOの2002年の測定結果があります。これによると、日本人男性では平均寿命78年のうち、終わりの5.7年が「要介護」(寿命の7.3%)、女性では85年の平均寿命のうち、おわりの7.3年が要介護(寿命の8.6%)と判定されました —— 人生の最後 およそ 8 % の期間は「要介護」である、と理解されます。② の資料のほうが、なんとなく身近な気がしませんか? いずれにせよ、日本は平均寿命・健康寿命ともに「世界最長」という結果でした。

♣ ちなみにスイスの障害調整平均寿命は、男性 71.1年、女性 75.9年;最短記録はシエラ・レオーネ(アフリカ、男 27.2年、女 29.9年)などです。こうしてみると、日本は「なかなか元気な期間も長い延寿国ではありませんか !!

♣ 20世紀の医療福祉を一言で要約すれば、それは「延命の医療福祉」です。長い人類の歴史の中で、これほど顕著に平均寿命と延命期間が伸びた時代はありません。

♣ しかし、一つの成功は新しい課題を生みます。つまり私どもは、単に 統計的な長寿ではなく、要介護でない長寿を希望しています。それは「無いものねだり」でしょうか? 私たちに求められる課題は、この「要介護の期間を短くすること」でしょうね。それを可能にする方法を工夫しなければなりません1~3)

♣ さて 最後は難問です。我々は理想的な(要介護時期の短い)長寿を達成する、としますが、最後はどのように逝く のが良いでしょうか? 85歳以前の場合、統計上 多いケースは(30%)・心臓(16%)・脳卒中(12%)ですが、人は高齢も85歳を越えると これらの病気で死ぬ頻度が 大変 少なくなります。ちなみに 死亡原因の第4位は「肺炎」——いわゆる「誤嚥性肺炎老衰」(10%↑)が次に現れ、第5位は入浴関連(4%)、後は「自殺・交通事故など」(3%)で、病気から離れ 社会現象となります。つまり 病院対応の効果は薄れ、家庭 または 介護施設対応が主力となるでしょう。

 ちなみに、超高齢者での「突然死」は「不整脈」によることが多く、その原因の「心筋梗塞」は否定できませんが、数はすくない。新聞に載る診断名は「心不全」が多いけれど、その実態は 「認知症・老衰 → 寝たきり誤嚥性肺炎」が主体のようです。なお「大往生」という病名はありません。つまり、(ことわざ)に「大往生したければ、医療にかかわるな ! 」というのもあるほどです。

♣「誤嚥性肺炎」を選べば、その経過は1年から5年程度かかり、要介護度の高い「寝たきり」となるため、介護者からは喜ばれません。これを避けるとすれば、あなたの最後の選択は「第5位:入浴関連」( = 水に溺れる)でしょうか?これも 釈然としませんね。この現実を考えるのはイヤだから、何か楽しい旅行プランでも立てて 気晴らしをしましょう。人々が「ピンコロ地蔵」に参拝する気持ちがわかりますね。

参考: パールの安全管理 1)  # 228 : 三つの寿命。 2)  #247 : スエーデンの認知症は優雅か?  3)  #248 : 介護の将来像。

職員の声

声1: 私の介護職暦は5年ほどですが、もし私がこの統計を聞いていたら、日本人の長寿度にたまげていたでしょう(係り:日本人の長生きは有名ですが、要介護の時期も一番長い、とは知りませんでした;支える側の尽力も大変ですね)。

声2: 人生の終わりの 8 % 程度の期間 が「要介護」になっているとの統計ですが、私は この事実に まったく気付きませんでした。

声3: 日本が長寿なのは「平和・栄養・医療」のおかげ、と思っていましたが、いまこそ「要介護」の期間を短縮すべく 工夫したいです(係り: 8 % の法則 」を敷衍(ふえん)すれば、死亡90歳なら要介護期間= 7.2年、100歳なら8.0年などとなり、寿命が長ければ長いほど、要介護期間は延びます;ピンピンコロリは無いものか?)。

声4: 私は要介護期間を短くすることに大賛成です(係り:もちろんです、だが その各論が問題なのです ! —— 世の経験者は 高齢になっても 「ジョッギングとか、ヨガ . . .」が良い . . . オーケストラの指揮者は 超高齢で 指揮中にコトンと逝く、など 万人向けでない奇抜なアイディアを出します)。

声5: 特養のS.S.様は“ご臨終”になったあと45日も穏やかに過ごされました;それは 水分・栄養・愛の結晶によると思います(係り:関係者のご努力には敬意を表しますが、この場合 「延寿ではなく 延命だった」のでしょう)。

声6: 私は20歳ですが、80歳くらいまで生きて、コロリと逝きたい です;延命はお断りです係り:もし あなたがコロリと逝ってしまえば、周りの人たちが「無関心・虐待の罪」に問われ、手錠を掛けられるかも知れません —— 日本では コロリと逝くことも ままなりません)。ご自分がしてもらいたくないことを 他人にしてあげることは よくありません。日本の「延命習慣」は「悪習」でしょうね。

声7: でも「 8 % の法則」で110歳まで生きたとすれば、要介護期間が約9年になります;それでは「能なしの人生」です(係り:このあたりの事情は、医療・福祉や道徳では解決できず . . . まだ未開発の領域です)。

声8: 最期は どんなのが良いかって? . . . もっと他の選択肢はないのですか?(係り:不老不死で天国へ、でしょう —— チャールス・ダーウイン、もはや、進化論に無関係な世界です ーー どんな形で逝こうと、人類の予後に影響はありません)。
プロフィール

ふじひろパール

Author:ふじひろパール
「ふじ」=新谷冨士雄
「ひろ」=新谷弘子

社会福祉法人 パール
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