(300) 裸の王様

 (300) 裸 の 王 様

 人は誤りを犯す動物です(Humans make errors)。その誤りを発見するまでの段階に「ヒヤリハット、ニアミス、アクシデント」の報告がある事を、皆さん方は知っていますね。もっと高級な誤りもあり、三つの例を挙げます。

♣ 先月、さる有名な「物づくり大企業の凋落(ちょうらく) 」が新聞に報じられました。会社の中枢部は「物づくり」をコツコツするよりも、金融の「先物取引」の方が 楽で儲けが多い と知りました。その結果、自社製品の品質維持をおろそかにし、その有名なブランドは いまや回復困難なほど傷つきました。現場が発する危険信号はトップ経営者に届かず、社長は「裸の王様」になって、ブランド名とともに業績悪化の道を止めることができません——アクシデント報告を重く見なかった経営者責任の問題ですね。

♣ 次の例は、10年以上も前、別な会社の話しですが、皆さん方も たぶん 耳に残っているこの言葉 = 「君、それは本当か !? 」。この言葉は ある有名ブランドの食品会社で発生した食中毒事件での言葉です。社長は自信を持って取材記者たちの前で 事故の疑いを否定しました。しかし、その席で工場長の耳打ち を受けると、真っ青になって記者会見の席で 絶望的な目を工場長に向け叫びました:“君、それは本当なのか? ” 社長は 自分の知らない所で「ブドウ球菌中毒」という事故が発生していたのです。もちろん、彼は責任をとり、その会社は解散の憂き目に会いました。この場合の社長も「裸の王様」でした。悪かったのは 社長なのか 部下なのか、傍では分かりません。

♣ 三つ目の例、某施設で この冬寒の報告です。特養のご利用者85歳の方が、深夜、寒い とおっしゃるので、職員が湯タンポを足に付けてあげました。半日後の午前、麻痺側の足に3×10cmの水泡が発見されました。典型的な「低温火傷」ですね。しかし、発見後の初期処置は的確で、K大学の皮膚科で最高の治療をして頂き、ほとんど問題ない状態に落ち着きました。

♣ 問題は損傷の第一発見者が なんと盲目のマッサージ師だったことです。湯タンポをいれた職員の報告では「麻痺側でない、右足の外側に湯タンポを置いた」というものでした。最終調査によると、「足の下方に湯タンポを置き、その上に直接、両足を乗せた」というものです。これでは事故は必須です。職員のレポートを受けた責任者は「裸の王様」になってしまいました。「きみ、それは本当か ! ? ! 」と言いたかったでしょう。

♣ 人は誤りを犯す動物です。だからこそ、二重・三重にチェックを心掛けます。どうか、ホウレンソウ 1) を励行し、どうぞ、パールの経営者を「裸の王様」にしないで ください。

  参考: パールの安全管理 1)  #147 : ホウレンソウ。

職員の声

声1: 「現場の実情」と「トップの判断」は しばしば泣き別れます;これを放置すれば組織は崩壊 です(係り:どちらかのサイドの責任とは断じがたい、双方でホウレンソウを尊重する姿勢が必須ですね)。

声2: 大会社なら危機管理部門が目を光らすでしょうが、小規模な介護施設で特に注意する姿勢を教えてください(係り:各職員が「一般教養を深め、迅速なホウレンソウを実行すること」に尽きるのではないでしょうか)。

声3: アンデルセン童話の「裸の王様」ですが、やはり王様は側近の言うことを鵜呑み にしてはいけない;王様といえども 現場を知るべき だと思いました。

声4: ふつう「湯タンポ → お年より . . . 」と聞けば、第三の言葉は「やけど」ではありませんか?(係り:その通りです;「岡目八目(おかめ はちもく 2) )で、第三者には すぐ分かることが、 寒がっているお年よりに接すると 見えなくなる . . . それがヒューマン・エラーの元です)。

声5: 人は誤りを犯す動物です;故に、二重・三重のチェック が必要なのですね(係り: 同僚の職員に見て貰えばよかった のです)。

声6: ヒューマン・エラーが起こる背景には、何らかのリスクファクターが存在します;それを少なくすべく、業務改善の提案を行なって行きたい(係り:介護ケアは かなり“個別的業務”ですね——つまり、大勢の人の前での業務ではありません;だからリスクの大きい仕事です;それだけに「人の意見を聴く、相談する」という姿勢が強く求められます)。

声7:他山の石3, 4) という言葉をよく聞きますけど(係り:人の失敗から学び取る、ということですね。私たちの技量の大部分は「他山の石」の集積だ と思います;失敗を怖がらず、さりとて「裸の王様」の愚かさを繰り返すことなく、しなやかに進んで行きましょう)。

参考: 2) 岡目八目 = 人の碁を わきから見ていると、打っている人より八目も先まで手が読めるということから 第三者は 当事者よりも情勢が客観的によく判断できるということ。  パールの安全管理 3) # 81 : 人は見かけによる。 4) # 126 : 万年目の亀、その2。
プロフィール

ふじひろパール

Author:ふじひろパール
「ふじ」=新谷冨士雄
「ひろ」=新谷弘子

社会福祉法人 パール
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