(302) 世 代 会 計

(302) 世 代 会 計 

今日の話題である「世代会計」;これは 20年ほど前にアメリカで考案された概念で、社会保障の面における「お金と人々の満足度の関係」を 世代間の相違として検討します。

♣ 人は一生のあいだ「税金や社会保険料」などを納めます(= 負担金)。他方、年金・医療・介護などの恩恵を受けます(= 受益金)。個人ごとの実感として「負担と受益」は異なりますが、社会全体としては 国の「収入・支出」として計算が可能です。で、全体として 国は 世代間の負担金 ≒ 受益金 となるように 舵を取るでしょう。ここで、受益金を全体予算で除した値を「受益率」と呼び、この「受益率」を世代間で検討することを「世代会計」と呼びます( Generational Accounting)。

♣ 近年、高齢者の年金・医療・介護に関わる予算が増えてきたのは ご存知の通りです。現在の高齢者が応分の負担をしているのなら 何も問題は発生しませんが、世代会計で見ると、宮島理の分析1) ではこうでした:- 2008年時点で、「引退世代」の生涯受益金はプラス4000万円(大得 とく)、これに対して 「未・引退世代」はマイナス8300万円(大損 そん)でした――両者の格差は1億2千万円を越えます。研究者によって 数値は異なりますが、共通な成績として、引退世代の受益金は それを支える若い世代の負担金を大きく上回っていることです2) 。つまり、若い世代が 著しくワリを食っている のです。これは日本の「敬老精神」の表れなのでしょうか?

♣ 諸外国でのデータのでは(引退世代の生涯受益率でみる)3) :- 日本 520%(自分が負担した額の5. 2倍のサービスを受ける)、イタリア 132%、ドイツ 92%、フランス 47%、カナダ 0%(プラスマイナス トントンです)、スエーデン -22%、タイ -88% などです。これを見ると、日本は とび抜けた「敬老国家」だと分かります。これは 日本政治の特徴でしょう。

♣ 最近では これに関して 経団連会長の米倉弘昌氏の見解があります4) :60歳以上の世代は約4000万円の受益超過、20歳未満の世代では約8300万円の負担超過で、格差は1億2000万円に及ぶ;このような世代間の不公平は勤労者の不満や、制度持続可能性への不安が高まる;負のスパイラルを防ぐための改正が急がれる(上記 1) のデータを裏書しています)。

♣ 私たちは 高齢者介護の仕事に従事しているので、 「世代会計」というアイディアに面して やや戸惑い を感じます。もし軍人にたとえるなら、恩のある退役軍人の支援に滞りがあってはならないけれど、現役の若手軍人が意欲喪失するほどの資金迂回が行われないように工夫すべき でしょう。矛盾するようですが、「入るを図って 出づるを制す」という基本理念を忘れては 制度の持続性に問題が出てきます。

♣ つまり、介護は あまり手厚く 複雑なものにせず、 「天然介護」 の精神で5, 6) 行なうのが良い;私は 穏やかさの中に 満足を求める「介護のあり方」を模索し続けて行きたいと考えています。

   参考: 1) 宮島理:世代間格差と敬老精神 Net : 2010.8.20。 2) データは「世代会計」で Net に種々あります。 3) 島澤諭:世代会計入門、Net, 2011. 4) 次の世代のための日本経済の再生:米倉弘昌、学士会会報 4月号 (#894) :6~16, 2012。 5) パールの安全管理 # 260 : 天然介護。 6) # 296 : 今の介護は ご誓文に沿っている? 

職員の声

声1: 国の収入・支出の概観 は?(係り:年度ごとに変わりますが、総予算 約95兆円(税収と借金が およそ半々):この内 社会保障費が その約1/3を占めます。社会保障費の内訳は:年金が1/3、医療1/3、介護・生保・社福の合計が1/3の割です。社会保障費は防衛費(数兆円)よりも ずっと高額です。

声2: 社会保障費は 退役者と勤労者でバランスが取れていない のですか?(係り:本文にあるように、一人当たり、退役者+4千万円・勤労者マイナス8千万円;これでは長期維持の展望が心配になります)。

声3: 日本の高齢者は自己負担額の約5倍の受益を受けるとのことですが、その分、若者がワリを食っている のでは 何の自慢にもなりません。

声4: 生涯負担金と受益金のバランスを 何故トントンにしない のですか?(係り:それは 国ごとに政府が決めます;カナダはトントンです;日本の老人の生涯受益率は+520%と高いのは誉であり、 「敬老精神」の表れでしょう)。

声5: 負担金 ≒ 受益金にしようとすると反対派の政治団体がそれを壊すと聞きます(係り:いったん付けられた予算を減らす「財政改革」は どの国でも至難の業 です:若者が投票所に 行って 自己の理を主張すべき でしょう)。

声6: でも、そんなバラマキ政治では ギリシャ破綻の二の舞 になりませんか?(係り:それは「手厚い福祉のパラドックス (逆説) 」と言われています)。

声7: 私が肌に感じている高齢者たちは +520%の給付を求めるほど欲深いとは思いません;それよりも、老人と若者の間で そんな格差があるという「世代会計の存在」が、従来 広く知られていなかったことを残念に思います;しかし私は老人の性善説をとりたい です;正しい情報の下で 勤労者側の未来にも 良い展望があるような活動を行ないたいです。 
プロフィール

ふじひろパール

Author:ふじひろパール
「ふじ」=新谷冨士雄
「ひろ」=新谷弘子

社会福祉法人 パール
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