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(314) 「入浴」 の おさらい

(314) 「入 浴」 の お さ ら い  
  
 パールが始まって以来 14年目になり、初期の混乱は もう嘘のように遠くなりました。新しく入社された若い職員も増え、先輩からの「語り継ぎ」で仕事をこなしているのが大部分ですが、ここで 入浴の「おさらい」をしてみましょう。

お年よりや 病気の人の入浴問題は よく取り上げられていますが 1) 次の3点 は新しい話題になろうかと思います 2~4)

♣ ① 入浴といえば「体をきれいにする」ことですが、洗い過ぎは危険です;不注意に洗えば むしろ「汚くなる」のです。正常な しっとりした肌は、皮膚の表面に皮膚常在ブドウ球菌というバイ菌が住んでいて、これが皮膚の脂肪を餌にして、脂肪酸の酸性膜をつくり、アレルゲンや悪いバイ菌を跳ね除けています。脂肪酸があると、水分は抜けない ので、しっとりした肌です。不用意に洗うと皮膚常在菌が流されて、角質がバラバラになる し、アレルゲンが入って来て アトピーになりやすく、水分が抜けるからドライスキンです。日本人でドライスキンが非常に多いのは、洗い過ぎ によります。

藤田絋一郎 先生は 5) 、お風呂に入るのは 毎日でも構わないけれど、石鹸で洗うのは 三日に一度とか、ずっと洗わないとか、このほうが皮膚には優しい、とおっしゃいます。シャンプーで洗うなんて トンデモナイ ! 皮膚常在菌が洗い流されないような方法を工夫しましょう。ゴシゴシ擦って垢を剥き取る人もありますが、皮膚細胞は一生に50回程度しか補給されません 6) 。若いうちに剥きすぎると、お歳になって 新しい皮膚細胞の補給は断たれ、皮膚はテカテカに光り、わずかなムリで 皮膚は すり切れ 出血してしまいます。

♣ ② 今、お風呂の回数は 毎日であっても「当たり前」の時代ですが、エネルギー事情を考えれば、トンデモナイ ! 日本が豊かになる前には せいぜい 週に1度の入浴でした。だって、お風呂を一回 沸かすためには、直径 30cmの薪束が2~3束 必要です。江戸の人口100万人なら、ひと風呂につき5万本くらいの木が山から消えます。つまり 入浴 = 山禿げ を覚悟しなければなりませんでした。今の日本は 石油や天然ガスを利用するので 空中の炭素を増やしても、山禿げは防がれていますが、全世界的に見て 毎日の入浴が いつまで許されるでしょうか? 毎日入浴は決して「当たり前」ではなく、資源的に見て 大変な贅沢であることを自覚しましょう !

♣ ③ ケチな気分が昂じると、昔の人たちは どうしていたのかが問われます。千年前の「清少納言」(= 枕草子)時代には「たらい行水」でした。五百年まえのフランス王・ルイ14世は 7歳のとき初めて入浴したとの記録があります。つまり 風呂に入らないとバッチイけれど 「死にはせん! 」のです。習慣とは恐ろしいものですね。30年まえ(1985年)、日本のバブルが真っ盛りの頃、女の子たちに「朝シャン」という流行がありました。学校や職場に行くまえ、彼女たちはシャンプーで髪の毛を洗い、「肩のフケ もうナシね ! 」と言って 清潔を誇りました。つまり、それ以前の女の子の肩には「フケが落ちているのは当たり前」だったのです。それも これも「流行」だったのですね。髪を洗い過ぎると、毛根に含まれる大事な物質(残存脂肪・白血球・免疫物質など)が流失し、それこそ皮膚と毛髪の寿命が縮んでしまいます

業者はシャンプーを売りつけて儲けますご家族は“親孝行”と信じて 石鹸でなく シャンプーでお年寄りをピカピカに磨きます肝心のお年寄りは ドライスキンで、皮膚脂肪も枯渇して 弱ります。こんなことがないように、ご家族も 職員も 賢くなりましょう。だって、「昔は人生50年」、皮膚細胞も 50年 もてば OK でした; 「今は人生90年」です、昔風に ゴシゴシ擦ったら 皮膚は 90年 も持ちません !!

♣ 入浴は高級な遊びです。楽しく 賢く 洗う ことは、高齢者の入浴に欠くことのできない知識ですね。よーく 反芻 (はんすう) してみましょう。

  参考: 1) 和式入浴における血圧・心拍数の推移と その臨床的意義:新谷冨士雄 ほか3名、ICUとCCU 6:759~765, 1982. パールの安全管理  2) # 11 : 入浴時の洗い方。 3) # 51 : カーボン・ニュートラル。 4)  # 112 : 入浴と洗浄の知恵。5) 藤田絋一郎: “きれい” 社会の落とし穴、学士会会報 851: 94~113, 2005. 6) 中川恵一:がんのひみつ 学士会会報 880:106~118, 2010 (Jan.)

 職員の声 

声1:皮膚は 擦れば擦るほど 若い新鮮な細胞が下から躍り出てくると思っていましたが、一生の間に タッタ50回 しか再生しないのですか?(係り:皮膚に限りません;人の細胞の再生は有限であり、それゆえ「命は有限」なのです;脳細胞に至っては 再生さえしません)。

声2: でも 在宅での入浴で、「亀の子タワシ」でゴシゴシ擦らなければ満足されない85歳のご婦人があります(係り:中には「軽石」で擦ってくれ、とおっしゃる方もありますが、いずれ 皮膚細胞が枯渇し 肌がサランラップのようにテカテカ に光り わずかな刺激で 皮膚が千切れる ようになります —— 特養のお年寄りでは よく見られます—— 皮膚細胞枯渇のため であって、打つ手がありません)。

声3: 「シャンプーをつけ 徹底的に垢を落としてくれ、ワシは歳をとってもこの通り 皮膚は強いのだ」と洗浄を強要される男性もあり、返す言葉もありません(係り:日本は垢取りマニアの国です;聞く耳を持たない人に説教はムダでしょう;いずれ肌が千切れ 紫斑となる日が遠からず来ます)。

声4: 先日読んだ雑誌の記事ですが、老人の洗髪は若者と違って 代謝も低下 汚れも少ないから お湯流しは一回だけで十分 だとのこと(係り:にもかかわらず 多くの 娘様・お嫁様の目は厳しくて、たいていは 徹底洗浄を望まれます . . . 家族教育の問題ですね)。

声5: 自分は入浴好きなので、こんな話を聞くと困ってしまう(係り:トンデモナイ ! 問題は入浴ではなく、皮膚細胞を擦り取ることにあるのです)。

声6: 私は泡立ちの良いシャンプーをたっぷり使い、しっかり肌を洗いたいです;将来 肌が薄くピカピカになって 紫斑ができてもそれは自己責任 です;やむを得ません(係り: オー !! )。

声7: 休みの前日に入浴しなかったら、我が子が 「汚いから一緒に寝たくない !! 」 と拒否されました(係り:入浴をして 汚れを取ってください:肌を擦り取らなければ良い のです)。

 参考:垢と脂肪の取りすぎ実験 = 病院で注射を受けたとき、アルコール綿を貰いますが、それで指先を何度も擦ってください → 指先が脱脂され シワシワになります。また「汚れ取りベンジン」を綿に染ませて同じ事をする → もっとひどい結果が見られ、指先が「白い粉」に覆われます
プロフィール

ふじひろパール

Author:ふじひろパール
「ふじ」=新谷冨士雄
「ひろ」=新谷弘子

社会福祉法人 パール
安全管理 ふじひろのページ

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