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(340) 延命 と バベル の 塔

 (340) 延命 と バベル の 塔    

 今日は 最近の医療・介護で特別に問題な 「延命」について バベルの塔を例にお話をします。

♣ 旧約聖書 創世記 第1章によれば、世界の言語が一つであった昔、バベル(現在のイラクにあった地名)の人々は集まって 天まで届く塔 を造り始めました。神はこれを見て、人間の尊大さ」を懲らしめる ため、言葉を乱して、お互いに意思が通じ合わないように しました。そのため、塔の建設はできなくなり、人間は以後 各地に分散し、それぞれ別の地方の言葉を話すようになったと言われます。今でもメソポタミアに行けば「ジグラット」として、バベルの塔の名残が見られるそうです。

♣ そこで「おさらい」です。今日の主題である「延命」を論ずるまえに、必要な「記憶」を呼び戻しましょう。まず「三々九度の表」を暗唱しましょう 1) 。次に 前回 お伝えした「トリアージの色タグ」を思い出してください 2)

♣ 只今 NHKの「大河ドラマの平清盛」、松山ケンイチ、見ておられますか? 800年まえ、時の権勢を誇る 平清盛(たいらのきよもり) は 64歳になって 突然の高熱にのた打ち回り、その熱さは「風呂の水を沸騰させるほど . . . 」と、私の小学校時代に習いました。彼は人を殺し過ぎたので「怨霊 (おんりょう) が彼に乗り移っている」との ご神託のもとで、神木をいぶし、その煙の中に清盛を寝かせ 怨霊退治をする儀式が行なわれました。怨霊は去りましたが、清盛も煙でいぶされ 死にました。彼は悪霊で穢れた体を清められた結果、死んだのだと理解されました。これは 現在で言われる「尊厳死」でしょう。

♣ さて、「延命」とは「いま死ぬハズの人の命を先へ延ばす」という意味です。人は おのれの知恵により 「延命という バベルの塔」 を案出し神様のご方針へ挑み (いどみ) 始めた のですが、すでに 持て余していますね。例を挙げましょう:

Living Will (生前に 尊厳死の権利を主張し、延命治療の打ち切りを 勝手に自己指定すること)の延命処置の停止に 迷うことなく同意しますか?( → ドクターが関与してもいない Will へ、手をこまぬいて 無治療のまま 忠実に見ているだけだと、ドクターは“見殺しの罪”に問われかねない。死ぬ予定の人の権利、と、死に行く人を治療すべく呼ばれた医師の倫理意識、この二つの心の相克 (そうこく) は 簡単に評決できないと思う)、

到底ムリ、と思われるから、延命処置を行なわない —— たとえば、意識のない「要介護5の人」に胃瘻をしない( → 「胃瘻は不適応」と判定した人は罪に問われないか?)、

③ “エホバの証人の信仰者”に輸血をしない( → この場合、宗教的にも法律的にも、輸血をしたら“有罪”です —— 輸血してはいけない人をナゼ救急室に運んで来たの?)、

尊厳死を すなおに尊ぶか?( 平清盛 は「尊厳死」でしたが、今のあなたなら 人のいぶし殺しには 抗議するでしょう)。

♣ 私なら、「三々九度」で「レベル300」+トリアージで「黒タグ」、この場合は延命しません。それ以外は 上記の ①~④ に関わらず、延命したい です。

♣ さて、神様はバベルの塔で言葉の意味を わざと乱して しまわれました。そこで、「延命というバベルの塔」の中で、あなた方が どれほど 乱れているのか、私は調べて見たいと思います。

参考:パールの安全管理 1) # 9 : 言語化と数量化 (意識レベルの判定をベットサイドで行なう際のメモ:一桁は“目を開いて意識ある応答ができる”;二桁は“体を揺り動かしたら なんとか応答ができる”;三桁は“叩いても ゆすってもても 返答がない”)。2) # 339 : 救急とトリアージ。

職員の声

声1: 私は ご利用者の意識レベルが少しでもおかしいと すぐ医師に判断を仰いでいましたが、「三々九度の表」で 色々な意識レベルに注意を向けたいと思いました。

声2: いつも「死にたい」というご利用者、栄養も服薬もきちんとしています;死について、本人の真意は誰にも分かりません

声3: 私は自分の延命を望みませんが、修羅場 (しゅらば) に居合わせたら、どんな判断をされるのか分からないのが「人」というものでしょう(係り:修羅場の判断は別でしょうが、たとえば日常的な糖尿病や高血圧の治療だって「延命の一種」です;特養に入所すること自体が「延命処置」です;だからこそ、延命は「バベルの塔の物語」なのです)。

声4: 今回 私は救急車で、在宅のご利用者を病院に運んだら、ご家族が なんと 治療を断り、救急のドクターが怒り出すという一件がありました(係り:治療を求めないが、しかし病院で死なせたい、というご家族は少なくありません —— でも少ない病院ベットは 治る病気の人が利用するのが 本来ではありませんか? 治療がなければ 医療費もゼロ、ご家族の我がままと病院経営との折衷点は ホテル経済しか解決できないかもね)。

声5: 治る可能性のない人を延命 するのは「苦しみ」を長引かせます;麻酔で寝かせ、延命しないのが良いと思います(係り:そんな机上論議は 役立たず ですよ;治る見込みが絶対ないモノは「年齢だけです;ドクターは あなたの病状に サジ を投げない のが通常なのです;微妙な意見は現場経験を積んだ後になさい)。

声6: 「延命はムリ」って、いったい 何がムリ なのでしょうか?(係り:漫画家の手塚治虫は「脳」だけ残されれば、どんな処置もムリではないと言っていました;今70億人の地球人が減って 絶滅種千人ほどに少なくなれば、彼の夢も実現される価値があるかも)。

声7: 経費を他人頼みで 延命の話だけが飛び交う のは 白々しいです(係り:透析または要介護5 を20年で 費用は およそ1億円 —— イギリスではサッチャー時代から60歳以上の透析は保健外です)。

声8: 延命した義父の死、延命しなかった母の死;ひたすら悲しいです(係り:結局、バベルの塔の混乱なのです;多くの人の言葉は収束せず、みな異なったイメージの 「延命 = バベルの塔」 の話でした;こうした議論によって、多くの人が現実的な 穏やかな死を考えるようになるのでしょう)。
プロフィール

ふじひろパール

Author:ふじひろパール
「ふじ」=新谷冨士雄
「ひろ」=新谷弘子

社会福祉法人 パール
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