FC2ブログ

(346) 「ボケ」 とは ?

(346) 「ボケ」とは?   

 ボケと記憶の話をします。

♣ ① まず「気体の記憶」。私たちが「針の穴」に糸を通すことを考えましょう。あなたが若いうちは一発で通りますが、歳をとると手間がかかります。でも、 「めくら滅法」ではなく、糸先を穴の横や上に当てているうちに、糸は通るでしょう。このような糸通しは「試行錯誤」と呼ばれ、糸通しの直前の記憶は 1秒くらい有効 です。これを「瞬時記憶」と呼び、生涯を通じて役立つ記憶のメカニズムです。ただし、この記憶は何秒もしないうちに、跡形もなく消えます。理由: 神経細胞の中を通過する瞬時記憶は「形」として残らないからです。だから「気体の記憶」とも呼ぶのが適当で、気体のように フット消え去ります。

♣ ② 次に「液体の記憶」。認知症診断のために用いられる「長谷川テスト」をご存知ですね。「100から7を引くといくつですか?」など 記憶の程度を30個ほど尋ねます。私たちは 今日のお昼の「おかず」は覚えていますが、一週前の「おかず」は思い出せないのが普通です。その記憶の守備範囲は「分(ふん)から時間」程度で、これを「短期記憶」と呼びます。認知症では この短期記憶時間が著しく短縮し 問題が発生します。このような記憶は まず脳の中の「海馬(かいば) と言う」組織に情報が貯め込まれます。時間単位で覚えていられる理由は、脳細胞に「酵素」が働き、その痕跡が残るからだ、とされます。この短期記憶は私たちが一晩睡眠しているあいだに、きれいさっぱり消し去られます理由: 海馬の記憶容量は小さいので、そのメモリーを消しておかないと、次の日の情報操作に差し支えるからでしょう。だから、「液体の記憶」とも言われます:濡れて残ったったけれど、やがて蒸発して消えます。人間が文明開化に成功した理由は、この「短期記憶」を文字化できたことによります。この結果「お金をいくら借りた、いや借りていない」などのトラブルが回避でき、他の動物にはできない「世界制覇」の成功を収めました。

♣ ③ 最後に「固体の記憶」。もし、ある情報や事件が非常に強力であったり、繰り返されたりすれば、その記憶は脳細胞の中で 遺伝子を動かし、「記憶蛋白」を形成します。これは、気体や 流れ去る液体と異って そこに留まる物質であり、脳の中にガッチリ保存され て、記憶の礎となります。理由: 記憶蛋白がそこにあるなら、いつでも需要に応じて 記憶を引き出すことができます;つまり、記憶蛋白は「個体の記憶」と表現する ことができ、同時に「長期記憶」でもあります。

♣ 脳の働きは、前記の 三つの記憶力 によって発揮されますが、一般の動物でも 一時記憶と短期記憶は存在します。しかし、人間の人間らしい精神作用は、これらに加えて 長期記憶の正確さ にあります。特に、情報が「視覚的な文字」として記憶されると、人間独特の文化が発達して行きます。もし、私たちの生活から「書類」が消えてしまったら、認知症のお年寄りのようにと、トンチンカンになるでしょう。

ボケとは何? 人の脳には約150億の記憶細胞があり、これらすべてが 瞬時・短期・長期記憶に関与します。しかし、神経細胞は 成人後 毎日 10万個ほど減る と言われます1, 2) 。歳とともに、新規な記憶が苦手となるのは、このためです。しかし、精神力となると、かなり高齢になっても衰えません。それは、記憶と判断が、単に 一個一個の脳細胞の活性によるだけではなく、相互の細胞同士がシナップスと呼ばれる「連絡網」で結ばれ合って働くからです。毎日10万個の減少と聞けば、心細い限りですが、1年で 3,650万個;これを約4千万個とみなしても、20歳 → 80歳(60年間)で24億個の減少に過ぎません;元の数は150億個だから 比べれば 余裕がありです ! ところが、認知症では 脳細胞の減少が激しく て 毎日普通の 何倍も減り、病院のCT検査で たちどころに分かるほどになります。これでは、人間の優れた脳活動は モグラ並み に低下します 3) 。「 時 — 所 — 人 」の認識 がこの順に薄れ(= 自己の喪失)、加えて「短期・長期記憶」も失う;この状態が「ボケ」と言われるものです。原因治療のためには「脳細胞」を元の数に増やすしかなく、現在の医学では いまだに挑戦中です。一般に、50歳以後の加齢に伴う体細胞数の減少は ご存知のように、毛髪・皮膚・視力・聴力などの全身の何処にも起こります。ただ、「人間性」に関する変化は「脳の変化」として最も受け入れ難いことなのですね。

認知症のボケは進行性です。でも「誤嚥性肺炎」と「廃用萎縮」の防止に努めれば、それ自身は命に関わりません。「ボケの現場をよく見知った人の “愛情” が ボケと共存の糸口になる」、これが人類の希望の華になっています。

  参考:パールの安全管理  1) # 88 : 脳細胞のひみつ。 2) # 334 : 鍛(きた)えるって? 3)  # 31 : ボケ勝ち?

職員の声

声1: 日本人の平均寿命を 1年延ばすのに必要なお金は 約2兆円 と学びました4) 。どこまで高齢者にお金をかけるのかは、私たち一人一人の価値観次第だと思います(係り:近年の高齢者は、社会の「価値観」とは無縁に 「長い、長がーい老後」を もて余す方が増えている印象です)。

声2: お年寄り(要介護1で)が一年をお過ごしになるためには 240万円 かかるとの事でしたが、認知症で「要介護5」になると 500万円 ! 重い決断に迫られます(係り:日本は 高齢者に対する まともな対応が可能な数少ない国の一つです-- 家族持ちのサラリーマン平均年収 420万円 に比べると 考え深い予算です)。

声3: ヒトの体の細胞は無限に再生できるものではないけれど、平均 50回のヘイフリックの回数券を持つ、と学びました5) ;脳細胞も50回程度は再生して来るのですか?(係り:脳細胞には 神経幹 (かん) 細胞がありません、ゆえに、再生しません;でもマウス実験で脊髄再生の実験が報告される時代です)。

声4: ボケは、脳細胞数の減少が関係する とは理解できますが、それは最近の高齢化が原因ですか?(係り:がんらい 人の体は50歳を天寿とされ、その頃に脳の病気で亡くなることは稀でした。(でも、700年前の“徒然草" (つれづれぐさ)には 認知症とみられる症例の記録 6) があります)。50歳を越え 85歳まで生きる人の多くは 「ガン・心臓病・脳卒中」で死亡します。しかし、85歳を越えて生存すると「認知症が 著しく増えてきました。日本では 良き介護制度の結果 異常に長い延命が可能となっており、このことが、逆説的ながら、 かえって 社会疲弊の根源となって 新しい問題の発生をみております —— 現在 介護保険で達成している延命期間 は:- 女 +12年、 男 +9年)。

声5: ボケの将来展望 を教えて(係り:人の繁殖遺伝子寿命は50歳です;昔の人は繁殖を終えた頃 逝きました;いまは繁殖寿命の2倍も生存 します。そこで、あなたの観察結果をお尋ねします:百歳の方々の「毛髪や皮膚など」を見て、まだ より長期の使用に耐えると判定しますか? —— 毛髪は薄く 頭皮はピカピカ透けて見える? お風呂でこすっただけ、または 抱え上げただけで 皮膚が擦り切れ 出血しますか?もし、あなたが ”大丈夫、まだ使える ! ”と判断なさるなら “千寿の賭けは 進め ! です ! 頑張りましょう !! )。

参考:パールの安全管理  4) # 345 : 数値で福祉を眺める。 5)  # 92 : ヘイフリックの回数券。 6)  # 2 : 痴呆以前。
プロフィール

ふじひろパール

Author:ふじひろパール
「ふじ」=新谷冨士雄
「ひろ」=新谷弘子

社会福祉法人 パール
安全管理 ふじひろのページ

最新記事
全ての記事一覧
月別アーカイブ
カテゴリ
リンク
QRコード
QR