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(350) 認知症 の 700年

 (350) 認知症 の 700年  

 「慣れる」とは不思議なもの、今 私たちは「認知症」と聞いて、一群の病気の人たちをピタリと想像し 何の狂いもなく仕事に励むことができます。でも「認知症」という言葉は、まだ世に出て7年目の新しい言葉 です。

2005年に厚労省が この名前を制定しました。それ以前は「痴呆」;さすがに「痴呆」は差別的な臭いが濃厚だったでしょうね(= 精神的にうつろなさま;ばか、あほ、まぬけ)。

♣ 近年の日本の歴史では、有吉佐和子40年前(1972年)に「恍惚 (こうこつ) の人」という作品を世に出し、世間はショックを受けました1) 。じゃ、それ以前には何と呼んでいたか?「気違い、狂い、年寄りボケ」などでした。実は、認知症は兼好法師(徒然草)が700年前に記載した病気で 1) 、高齢者が少なかった時代には目立たなかっただけです——今日は「原典の現代訳」をお見せします2, 3)

認知症の正しい定義 は:― 「いったん正常に獲得された人の知的能力が 再び失われて行く状態」です。でも、いろんな症例報告が増えるにつれ、その正体が見え始めました。まだ手探り状態の初期、オーストラリアの46歳の“クリスティーン・ブライデン”という女性の物語が有名です。立派な公務員でありながら、認知症と診断され、「自分らしく生きることができる」と訴えて、ご自分の精神症状日誌を発表され、好感が持たれました。

♣ 日本でも湘南病院の院長先生ご自分の様子を詩にしてご発表でした。そのあらましは:- お願い:私が医者だったことを まず忘れてください; 「蛇がいる ! 」 などヘンなことを言うでしょうが怒鳴らないで 怒らないで下さい;食べたばかりの朝ご飯を「まだ貰っていない」と言うでしょう;昼夜が分からず 怖くて騒ぐかもしれません;そんな時 私の好きだった歌を聞かせてください . . .

♣ アメリカのレーガン元大統領は辞任4年後に認知症、骨折、続いて肺炎で亡くなりました——絵で見るように“典型的な”認知症の経過です。同時代のイギリス元首相サッチャーも 辞任10年後に認知症で 夫の死を知らず、まだご生存中です。身の周りで知った人の認知症が増えるにつれ、社会の人々は「人間」についての理解を深めて行きます。

♣ 認知症の名前が定着して今年で やっと7年、今では 病気として、また生活としての 認知症の方々は「正当な扱いと介護を受けてお過ごし」です。40年前、700年前 の混乱 がしのばれます

認知症になった人、これからなる人、そのお世話をする人、みんなが正しい知識と笑顔で対応できるようになった今日この頃を見渡すと、わずか十年余の介護保険時代ですが、日本の社会は深みを増し、成熟してきた ことを思わずにはいられません。
 
参考: パールの安全管理  1) # 2 : 痴呆以前。 2) # 324 : 徘徊の自由。 3) # 331 : 認知症の社会的背景。 

兼好法師:「現代語の訳」: ある人が久我( くが )方面に向かう道筋を歩いていると、立派な下着を身につけた人が、木像のお地蔵さんを田んぼの中で 泥んこになって 丁寧に洗っているのを見かけた。不似合いな事をする人だと思って見ていると、狩衣(かりぎぬ)姿の男が二三人やってきて「やっぱり こんな所にいらしゃっていた」と言って、この人を連れて立ち去っていった。この方は久我家の内大臣殿であった。健常時は非常に立派で、人々の尊敬を集めていた方であった。

職員の声

声1: 昔は、認知症と言わないで「気違い、あほ、ばか、まぬけ . . . 」と呼んでいたのですか? ひどすぎる !

声2: 痴呆は障害者であり、「障がい者」と書きます、ナゼ文字を変えたのですか?(係り:障害は昔「障碍(しょうがい)と書きました;しかし漢字制限のため「障害」にしようという論議で、反対派が「害」という文字を忌み嫌い 激しく抵抗しました;漢字制定委員会は「がい」という「ひら仮名文字」を提案して難を逃れました:愚かな裁定でした ! —— 人に障害を加えると「障がい者」になる、と書かねばならないからです)。

声3: 認知症の名前が 生まれて7年目だとは知りませんでした;ご家族は隠したがる病名だけれど、治療・介護ができる時代になったことを喜びます(係り:お年寄りの「白髪や皮膚の皺」は隠せません ! 認知症は頭の中身の白髪だから、隠せば隠すほど、隠す人が疲れる だけ)。

声4: 現在は 正しく理解されるようになった認知症ですが、自分がこの病気になった時、果たして公表できるだろうか? 係り:当のあなたは「ボケ勝ち4) になっているだろうし、きっと“一番の幸せ者”とみなされているでしょう)。

声5: 認知症になりかけた 湘南病院の院長先生のポーエム(詩)が私の胸をせつなく打ちました係り: . . . 私が医者だったことを まず忘れてください;「蛇がいる ! 」などヘンなことを言うでしょうが怒鳴らないで下さい. . . このあたり、ジーンときます)。

声6: 私は40年前に、有吉佐和子の「恍惚の人」を読んで 信じ難い思いでしたが、7年前に「鉄の女・サッチャー元英首相」が認知症になったと聞いて、“やっぱりなー”と、人生の営みに思いを馳せました(係り:7年前になって、“同情のつぶやき”が やっと可能になった のですね)。

声7: 兼好法師は700年前に 認知症の人物像を初めてエッセイとして記録、以後、人間が長生きすれば 認知症の発生が避けられない 事を示唆しました;今の時代、国は本格的に認知症の研究と対策 に乗り出すべきでしょう(係り:加齢に基づく「白髪や皮膚の皺」は、研究が進んでも 治る性質のモノではありません;長寿の寿ぎ (ことほぎ) は、「社会の身の丈」をわきまえて行わないと、蟻もキリギリスも“共倒れになるでしょう)5)

声8: 仮に認知症が正しく対応されたとしても、高齢者の諸問題は尾を引きます —— 無為孤立・血族への無関心・社会負担など . . . 数えきれません(係り: “人生50年”の昔のほうが幸せだったと考えますか?—— なら み佛様に、「胃瘻や非常識な延命をすべからず」という仏法上の説教を、お願い しましょう)。

参考:パールの安全管理  4) # 31 : ボケ勝ち。 5) # 80 : 蟻とキリギリス。
プロフィール

ふじひろパール

Author:ふじひろパール
「ふじ」=新谷冨士雄
「ひろ」=新谷弘子

社会福祉法人 パール
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