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(356) おおかみ 老年

 (356) おおかみ 老年    

 今日は、仕事で 大変役立つ 新しい概念 = 「おおかみ老年」を勉強しましょう。

♣ よく知られた「狼少年」と言えば、皆さん方 ご承知ですね。二千年以上も前、イソップの寓話 (ぐうわ) に出てくる物語です。羊の群れを預かった ある少年が 退屈のあまり「狼が襲って来た、みんな 助けてくれー ! 」と叫んで村人を呼び集めた;だけど それはウソの退屈遊び であって、助けに来た村人はすごすご引き返した。このウソ騒ぎ が何度も繰り返されたあと、そこに本物の狼が現れた。少年の助け声に村人は もうやって来ず、大事な羊は食べられてしまった → ‘仏の顔も三度’、そんな意味の寓話です。

♣ 似たようで ちょっと異なる介護のお話を二つ お伝えします。

♣ ① は 91歳の独居男性、要介護2 。まだ記憶力は健全で、話も普通にできますが、便秘で苦しくトイレが近い、という理由で 最近半年の間に自分で20回も救急車の出動を依頼しました1) 。 いずれの場合も、病院での治療を必要とせず、帰宅されています。そういう既往歴のある方でしたが、その後、氏は パールのショート・ステイをご利用になり、そこで ナース・コールは5分おき !! ――その様子を診て、私たちは問題の本質を見抜き、ご親戚の方に電話相談し、問題解決に役立つ専門病院をご紹介申し上げました。

♣ ② 二例目は88歳の独居女性 要介護2:老人性の息切れ があり、今年の4月から4ヵ月の間に救急車の出動を7回要請しておられました。パールの近くには 大病院が数か所あり、その全てを救急受診され、いずれの病院でも 診察と検査で 呼吸器系統の疾患を見出されず、ご帰宅されています。ご本人は 入院対応できなかったことで立腹されています。

♣ これら二例は“人の同情を集める目的のための狼少年”を演じたのでしょうか?

とんでもない、はっきりと 違います ! 「狼少年」とは、言葉通り「健康脳を持つ狼番の少年物語」です;少年の大脳はまだ幼くて、人生を乗り切っていない。これに対して この91歳の方の脳は 90年の荒波人生を乗り越えた脳です。世の中を理解した その脳が 今や理 (ことわり) ある説明や助言を無視して救急車を呼び、しかも これを繰り返し、学習することさえ忘れた状態になっているのです。つまり、大脳機能の欠損 ――「認知症の進行」を疑わねばなりません。

♣ 教科書的な認知症とは「いったん獲得した正常な大脳機能が失われた状態」です。失われてしまい、「もはや存在していない大脳細胞の病名」を考えようとするから 私たちの頭は混乱します → 脳のどの部分が消え去ったのかを診断する困難さ。強迫神経症などの複雑な鑑別も必要ですが、この場合なら 診断を要する脳細胞はそこに残存しています → 悪さをしている脳はどの部分かを診断。 「認知症」の診断は「消えてなくなった脳を診断」するのだから 厄介です。

おおかみ老年は外見から見れば 子供の「狼少年」とそっくりの混乱状態ですが、中味はぜんぜん違う ―― そこには「感謝、同情、配慮、愛 . . . 」などの 人間特有の大脳機能は存在しません。もし あなたが現場にいたら 敬老精神と善意によって 親切な対応をするでしょう。しかし、あなたのロジック(論理)は認知症の脳には一切 伝わりません―― だって、相手には反応してくれるハズの大脳がない のですから。

♣ このことに思い当たったら、通用する心は「ボディ・ラングエッジ、つまり「心の優しさ」しかありません。「困った 困った !! 」と耐えるだけでなく、おおかみ老年かも知れないな?と疑い、 精神科のドクターに相談することから始めて下さい。

♣ くどいようですが、老婆心 ! 狼少年の大脳なら そこに実在して、活動しながら混乱を呼んでいます ―― 治療可能です。ところが、おおかみ老年の場合、活動する脳は部品が欠落し、存在しない脳の指令によって混乱が発生しています ―― 病理病名は「退行変性」で、根本治療は不能です。
  
  参考:パールの安全管理  1)  # 355 : 救急車を20回呼ぶ。

職員の声

声1: おおかみ老年は狼少年のゴロを踏んでいて、うまい表現だ と思う;そう言えば、私自身 おおかみ老年の方々を沢山見て来ました。

声2: 近年の子供は 賢くなって、狼少年なんていなくなった;逆に おおかみ老年は どんどん増えてきたので、この名称は画期的だ と思います。(係り:日本は敬老精神が旺盛だから、ナース・コールを押しっぱなしの おおかみ老年 にさえも 優しい声が掛かります)。

声3: 救急車を20回も発動させるなんて、公費乱用ではないか?係り:救急車の隊員に おおかみ老年を判定させるのはムリです)。

声4: 訴えているお年寄りの人権は山より重い と思えばこそ、ご本人の訴えを尊重していますが、高齢者の訴えは「割引して判定」する必要がありますか?係り:いいえ、ありません !! でも、ご本人の「大脳」が訴えているのではなく、欠損脳細胞の芝居 であるのなら、断固として精神科医との相談が必要です)。

声5: 認知症の周辺症状の多彩さからくる あの混乱 ―― 救急車20回も、5分ごとのトイレ騒動、乱暴、不潔、虚言も ―― 現実との落差に驚きおののくばかりです(係り:あるハズの大脳細胞がそこにないのですナイ脳が演出するお芝居の流れ は予想も付きません)。

声6: 結局 人は長命の終わり頃には 脳がおかしくなる んだよな ―― 子供のウソは見抜けるが、人生90年を闘った後のウソだからバレにくいよ

声7: お年寄り、と聞けば「尊厳」とくる;職員の心にまず 尊敬の基礎があるからおおかみ老年の大嘘は バレにくいんだろう な。

声8: 救急車を20回も呼ぶ「年寄りボケの大タワケ」を キチンと見抜く力量が問われているんだ、と私は自己反省をしています(係り: 鍵は、存在しない脳の大芝居を見抜く、ということに尽きます)。
プロフィール

ふじひろパール

Author:ふじひろパール
「ふじ」=新谷冨士雄
「ひろ」=新谷弘子

社会福祉法人 パール
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