(35) 漢方薬のひみつ

漢方医学とは伝統的中国医学の影響を受けた「日本の医学」です。よく勘違いされますが、「漢方」は中国方ではなく、「日本方」ですよ !!

♣ 伝統的な日本には金創医(きんそうい)、御殿医・民衆医がいました。金創医は刀の傷を治す医療者であって、卑しく貧しい身分の職業でした。御殿医は貴い方の病気を「おまじない」によって治す高級医でした。民衆医は「証」(しょう)によって「生薬」を処方して病を治す仕事に従事していました。いずれの医療も 基本的には伝統的な「おまじない」によって病気を治す方法であり、その原理は、科学を基礎とする 現代医療とは比べるべくもありません。

♣ 1877年(明治10年)、西郷隆盛と日本政府の間で「西南戦争」という戦いがあり、死傷者は何万人にも達しました。従来の武士の「こぜりあい」なら10人とか 20人の負傷者の始末をするだけでしたが、鉄砲創を含む 何万人の手当ては、日本では経験になかったのです。そこで、政府要人たちは、傷病者の手当てをする人たちの「手つき・考え方」を観察し、「漢方はダメだ、洋法を用いよう」と決め、以来、日本は洋法医学で統一されました。洋法の裏には「科学」があったからでしょう。なお、看護の重要性をも認識し、1886年(明治19年)には日赤看護婦の養成を始めました。

♣ そもそも「科学」とは 西洋の暇な旦那衆が 趣味として「理論ごっこ」を楽しんだものであり、その歴史は今から2500年前の古代ギリシャ時代のターレスに始まります。日本では和歌や俳句が旦那様がたの趣味でしたが、西洋では「自然哲学」と称して「科学する心」が普及し、鉛を金に作り変える「錬金術」(れんきんじゅつ)などが ほんの150年まえまで研究されました。リンゴが枝を離れて地面に落ちる、でもナゼ?と考えたアイザック・ニュートンは、旦那芸としての自然哲学を応用して、「重力と質量の数学」をラテン語で発表し、現在の惑星探査科学にも繋がる偉業を成し遂げました。ちなみに、ニュートンと、日本の俳諧の祖である芭蕉は 同じ1644年生まれですが、片や科学的な「重力と質量」、片や文学的な「わび・さび」にいたる成績の違いを示し、どちらも天才でありながら、後世への影響力はずいぶん違いますね。

♣ 科学が旦那衆の「趣味」から「実用」になった 初めての事件が、ベンジャミン・フランクリンの「雨雲の中に凧(たこ)を上げる実験」でした(1752年)。これによって、旦那衆の趣味であった「雷は電気放電である」という発見が、教会の塔の上の「避雷針」という実用に発展し、アッと言う間に 欧米が科学的事実を日常生活に応用する技を磨き始め、旦那衆の趣味が実用的な産業革命の幕開けに繋がりました。

♣ 話を元に戻します。漢方は「証」(しょう)という手法で病に迫ります。ところが この方法は個別的であって、関係当事者に効くかもしれませんが、病の原因治療ではありません。また、中国方薬の粋とされる「犀の角・古代人の化石骨」などは なぜ病気に効くのか 想像できますか?(= 希少で高価だから)。チベット地方で採取される冬虫花草(とうちゅうかそう)は ナゼ珍重されるのでしょうか?(= 珍しいから)。その効能は科学では説明しきれません。こんな話題が日本の漢方の足を引きます。

♣ ところが、難病などの場合、「溺れる者 ワラ」ですね、漢方がしばしば出番となります。これに対して、洋方は「因果関係」という手法で問題を解きます。簡単に言えば、洋方は「二重盲検法」で有効であれば「効いた」と判定します(“サンタ”と“プラセボ”の項を参照)。他方、漢方は二重盲検法が不可能です;なぜなら漢方薬は幾種類かの成分混合薬であり、そのうちの一つを取り出して調べることに向いていないからです。明治のお役人が西南戦争の傷の処理法で納得したように、洋法は人の心を科学的に、個別的に納得させます。これに対し、漢方は人をふんわり包んで治してくれます。

♣ 閑話休題;私は子供の頃、転んで手に擦り傷を負い、泣きました。それを見た私の祖母は「親のつば 親のつば」と唱えながら 指に自分のつばを付け、私の傷をさすりました。私はビックリして祖母の顔を見つめました。傷はすぐ治ったと記憶しています。

♣ さて結論:パールでは漢方薬を使いません。幼児、または認知症に対して薬の正当性などは 問わないほうがよいからです。もし使うとすれば、それは「使って欲しい」というご家族の強い要望がある場合のみです。人の心って、今風に言えば「アナログ」*なのでしょうね;「ディジタル」*ではないのです。そこで提案:良いとこ取りして、医療も介護も「ディジタル」(洋)を基にし、場合によって「アナログ」(漢方)も考慮するのが賢明でしょうか。お金の配分・配慮も忘れないでね。  *「アナログ」は「絵や柱時計の文字盤」、連続量が表わせます;これに対して「デジタル」は「数字時計」(デジトゥスは指のことで、 有るか(1)、 無いか(0) を表わします)。

職員の声

声1: 私は「漢方」=「中国の薬」と思い、何の疑いも持っていませんでした(係り: もしそうなら、日本の保険が使えません。保険が使えることは、薬の普及にたいへん役立ちます)。

声2: 漢方を使っている認知症の方は多いです;本当に効いているのですか?(係り: 漢方はがんらい、せんじ薬です;30年ほどまえ、保険に採用されて以来、「粉薬」になり、この故に「効果」はますます分かりにくくなりました。

声3: 「洋薬・和薬」ともに、「効く」と思って飲めば「効く」のでしょう (係り: 薬には値段があります;値段の分だけ効けばOKといえます;ところが、昨今の老人医療では値段がゼロ、つまり効かなくてモトモトとなる仕組みです)。

声4: 江戸時代、親の病気を治すために、高価な「朝鮮ニンジン」を買い求め、自分は「身売り」して支払った、という親孝行な話を思い出しました(係り: 効いた、という話はありませんでした)。

声5: 本当に効かない薬なら、買い手がなくなるのでは?(係り: 美容・育毛・壮健のたぐいは「使っタ、良かっタ、効いタ」の世界です(サンタの世界);上手なテレビ広告はあなたを魔法の世界に連れて行ってくれます)。

声6: 漢方はプラセボなのですか?(係り: 漢方は独特の「香り・舌触り」などにより、プラセボではありません。「証」が合えばピッタリ効くでしょう。医師・患者の呼吸が合うのが望ましいです。

声7:洋薬は氏(うじ)正しく、漢方は主観的裁量薬ですか?(係り:2度もノーベル賞を貰ったライナス・ポーリング。彼はビタミンC大フアンで、諸病に効くと宣伝しました。しかし使用量は毎日20~30グラム(100mg錠なら100~200錠です)、たとえ正しくても実行は困難です。しかも2010年になって、その効能さえ疑われ始めました。洋薬も漢方も目がはなせませんね)。
プロフィール

ふじひろパール

Author:ふじひろパール
「ふじ」=新谷冨士雄
「ひろ」=新谷弘子

社会福祉法人 パール
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