(370) お魚って 可哀そう

 (370) お魚って可哀そう 

 先月(10月)には QOL (Quality of Life、生活の)の話をしました1) その趣旨:「QOLは“お年寄りだけのQOL、と狭く考えるのでは不十分であり、介護に携わる人や 全ての人々を見据えてのQOL こそ 意義深い」と言うものでした。 QOLの “Q” は質を示すものですが、(Qantity)と考えることもできました( ‘量’とは寿命’を指します)。

♣ 今日は QOL の “L” (life = 命)の方を見直し てみましょう。命(life)は心身 (心―mind + 身―body) から成る と解釈できます。そこで、QOLを読み直してみると心の質」+「体の質」の合成だ と分かります。つまり、「心も体も良い状態」を問題にします。ここで「“みすず”の世界」へタイム・スリップしましょう2)

♣ 童謡詩の作家 金子みすず さんは、私の父と同年の1903年、山口県 仙崎村 で生まれました。21歳から童謡を書き始め、当時の中央歌壇で活躍していた 西條八十 (さいじょう やそ) に見出され、独特の才能を発揮し、世に知られるようになりました。約600編の作品を残し、残念なことに26歳の若さで亡くなりました。昨年の福島原発事故 (11.3.11) の直後、ラジオでもテレビでも 心にしみる彼女の作品が 静かに読み上げられていた のを思い出しますよね。
                   ~~  ~~
お花が散って 実が落ちて その実が落ちて 花が咲く。そうして 何べん回ったら この木は ご用がすむのかしら? --- 私が選んだこの詩は「木の 本当のご用って何だろう?」を思わせてくれます。 「木」の代わりに」と置き換えてみたり、「お年寄り」を入れてみたりします。   
                ~~ お魚 ~~
海の魚は可哀そう  お米は人に作られる  牛は牧場で飼われてる 鯉もお池で麩 (ふ) を貰う けれども海のお魚は 何にも世話にならないし  いたずら一つしないのに こうして私に食べられる ほんとに魚は可哀そう。 --- 彼女らしく優しく歌われています。でも、魚たちは 自分たちを「可哀そう」と思っているのでしょうか?違いますね;彼らは「思う」ことができる ‘大脳’を持っていません。では、長生きした お年寄りなら どうでしょうか? 
                 ~~ お年寄り ~~
お年寄りって可哀そう だって ‘心の質’があっても‘体の質’が伴わないし 心も体も不自由な方だってある だから お年寄りって可哀そう。 ---- ケアをしていて、あなたは本当に彼らを可哀そうと思いますか?でも、お魚とは違いますよね。60年前、日本に結核が猛威をふるっていたころ、人々は心底から長生きをしたかったです。誰もが「可哀そう」と思うのは、20歳や30歳の若さで 命を召し上げられる場合ではないでしょうか。私なら、このお魚の話を次のように繋いで見たいと考えます。 
                 ~~ 今が 幸せです ~~
心身の質が少なくなろうとも それは長生きした人の定め だし ボケるってこと は その不自由感を 薄めてくれる大事な要素なのだ。 私たちワーカーは お年寄りを尊敬して 心身も大事にして ケアをしているのだから  お年寄りって  今が一番 幸せです ちっとも 可哀そうではありません。 → QOL の "Q" (= 生活の質と量)および QOL の  "L" (= life、心身)については、高齢者だから特に気を使うのではなく、社会全体の "QOL"、とくに「若者たちの QOL 」が向上することこそ、老人の望みではないでしょうか。 

職員の声

声1: 「木のご用」も「魚は可哀そう」も、優しい心の人が歌うと 思わずほほ笑んでしまいます。

声2: 今の時代の若者は「生きる目標を失った迷える子羊ばかり」;しかも自然破壊しながら生きる我々のほうが、お魚より「もっと可哀そう」な気がします。

声3: 60年以上前の戦争中の苦労話を ご利用者から伺うことがあります;でも今が一番幸せよ」という最期の言葉で いつも救われます

声4: 食べるものを大事にし、魚たちをきれいに食べてあげることが人間の使命でしょう(係り:その心の流れで言えば、お年寄りを可哀そうと思うよりも、尊敬して支えてあげること大事ですね)。

声5: 「生命の質」と聞けば、体が不自由なお年寄りは多いです;でも平和な心のお年寄りは 間違いなく「尊敬」できます。

声6: デイ・サービスをご利用の方々は「ここに来るのが幸せ」とおっしゃる;私たち職員は、その言葉を聞くと、疲れを忘れます(係り:お年寄りと私たちのQOLが一致しますね)。

声7: ボケること は、心身の不満感を和らげてくれる大きな要素だと聞けば、なんだか私の方が救われます(係り:お体が不自由に見えても、お年寄りは 案外に気になさらない;これも 程よいボケの功徳でしょう)。

声8: 牛や魚は考える頭脳を持ちません、菜食主義の方々は勝手に「可哀そう」と言いますが、食べていながら それはないでしょう?(係り:みすずさんも それを承知で“私に食べられる”と言っています;ごめんね、という気持ち があったのでしょうか。仏様 は“生きとし生けるもの すべてを哀れに思いなさい”として、菜食主義でした;ただし、2400年も前のことですから、“植物も生きものだ”とはご存知なかったのでしょう)。

 参考: パールの安全管理 1) # 358 : 良きQOLって 誰の QOL? 2) # 27 : 金子みすずの世界。

 
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Author:ふじひろパール
「ふじ」=新谷冨士雄
「ひろ」=新谷弘子

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