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(402) 花のいのちは みじかくて

 (402) 花のいのちは みじかくて

 天才作家・林芙美子 (はやし ふみこ ) の小説(放浪記・浮雲)を読まなかった人でも、このタイトルの一節を聞く人は 少なくありません。

♣ 彼女は 貧しい環境の中で才能を発揮し、心臓弁膜症の持病を持ちながらも 驚異的な 豊作の作家生活をし、昭和26年、47歳の短い生涯を閉じました。「花の命は短くて 苦しき ことのみ多かりき」という句は 林芙美子が色紙などに好んで書いた短詩です。女性を花にたとえ楽しい時期は短くて、苦しい日々が 多かった自らの半生を謳いました。

平均寿命が50歳の あの時代、女性が どんなに華やかであっても、運命の力には勝てませんでした。日本の過去、幼児が感染するリウマチ性心臓弁膜症は頻度が高く、女性では 妊娠・出産で体力を使う30歳代で倒れ亡くなるというパターンが頻繁でした。林芙美子も この流れの犠牲者だったのかもしれません。でも、弁膜症は昭和50年頃に 医学の成果で ほぼ根絶されました。彼女も あと25年遅く生まれていたならなー、と悔やまれます。

♣ でも心配ご無用 ! やがて経済バブルが訪れ、栄養と生活条件の整った昭和60年(1985年)頃には、日本女性の平均寿命は 世界一にのし上がり、バブルの頃には テレビや雑誌で 次のようなフレーズが はやりました:-「花の命は 長くして、楽しき ことも増えにけり」。この短歌は 頭記のタイトルをもじったものであり、華やかな日本女性の進出ぶりが伺えます。

♣ その上 長寿の鼻息が荒い2000年には 介護保険 が導入されました。ご存知、パールの特養の入所者の90%が女性ですが、長生きの権化 (ごんげ) である女性たちが さらなる長寿を目指して 施設で介護を受けておられます。林芙美子も ブッタマゲの時代ですね。

♣ ところが、この 1~2年、長い花の命の揺れ戻し が来たようです。最近、パールのご利用者の家族にインフォームド・コンセントをする時、新しい覚悟が必要になりました。なにせ、ご高齢に重ねてのご高齢 ! その高齢の「身体的特徴」として どなたにも「廃用萎縮」が訪れます—— 体は小さくなり 体格指数(B.M.I.)は12 に近づき 1) 、天寿も終わりを見せ、ご自分の過去を忘れ ます。ご家族に説明すると、多くのご家族は ご本人と共に闘って来た 数々の病魔・不幸な過去を語られます。それを聞くと、私は“ご本人の長寿も タダで達成された享楽だけではなかったのだなー”としみじみ感じます。そうです;ほんの十年前までは「丈夫で長生き」が合言葉の日々でしたが、今は「長生き」を求めつつも、「長生きに疲れた」人々に接する場合が増えて来ました。私は思わず 林芙美子の短歌を思い出し、こんなふうに もじってしまいます:——「花の命は 長すぎて、楽しき事も 忘れけり」。

♣ 高齢者の健康は 今は 効率よく守られる時代ですが、やはり「寄る年波」には 身体が保たれても 心が叶いません。私は、先回の安全管理でも述べましたように 今、天寿600歳 が噂される中 2) 、身体の長命だけを追う時代ではない、「人の道」をも 思い巡らさねばならないと思っています。

♣ 考えてみれば身体の遺伝子は 私たちを「50歳の更年期」まで 無事に守ってくれました。だから、更年期以後は 余裕をもってゆっくり過ごしたい;不相応な延寿を追い求めるだけが人生ではない。私たちは 今日まで 元気に生きて来られたのだ、という 社会にたいするお礼を念じて生きるべきではないでしょうか。つまり 私の新しい合言葉は:五十路 (いそじ) 越え、感謝の言葉は 幾重にも !

参考 パールの安全管理 1) # 34 : 天寿の最期は B.M.I. ≒ 12. 2) # 401 : ついに 600歳か?

職員の声

声1: 女性を「花」にたとえ、その命の感性が 時代と共に 著しく変わったこと、つまり{命短く辛い → 命長く楽しい → 命長すぎ 昔を忘れた}——はて?今が一番幸せと言えるのだろうか?(係り:幸せなハズでしょう?)。

声2: 現代は「高齢の上に高齢を重ねた時代」です;そうして得たモノは「忘却廃用萎縮」 ! ;これは何たる皮肉だろう?(係り:栄養不足 と 栄養過剰 の中間に腹八分」という賢さ があります;林芙美子は「命の不足」を歌いましたが、もし「過剰」の時代に住んだら 意見も変わるでしょうね)。

声3: 「花の命」という文字の後 (うしろ) に繋がる言葉が 時代と共に変わる有様を理解しました;私は50歳を越え 仕事のある日々がこれ幸せ で、世間様に感謝です。

声4: 私の知人では60歳に手が届かず散った方が沢山あります(係り:動物学の博士に聞くと、動物の寿命は体重と密接な関係を示す数式で表わされ、ヒトの寿命は「羊類」とほぼ同じ26歳のハズ だとのこと;しかるに 戦後、ヒトは50歳を乗り越え、いまや100歳 ! 人間はもはや動物に非ず? . . . . 凄い時代だ ! )。

声5: 私は思います:今は 介護をするも されるも 疲れ果てています、「スーパー延寿時代」をどう生きるべきでしょうか?(係り:ひところ「胃瘻や点滴」など 日本独自の延命が大流行でしたが 最近、明治維新の「五箇条のご誓文(せいもん) 」:「旧来の陋習 (ろうしゅう) を破り、天地 (あめつち) の公道に基づくべし」が見直され3, 4) 、日本人も目が醒める思い です)。

声6: 私の年齢も 江戸時代の平均寿命50歳を大幅に越え、感謝 感謝で介護に従事しています(係り:まさに、“五十路 (いそじ) 越え、感謝の言葉は幾重にも ! ”ですね;これからの介護分野のモットー人への要求」ではなく「人への有難う」になる ような気がします)。

声7: 人が 動物寿命の26歳なら 人の役目は 子孫繁栄でOK、人間寿命の50歳なら 人の役目は 文明継承でOK、では介護寿命の100歳なら どんな役目でOKとなるでしょうか? 係り: あるドクター、百歳を越えて 外来診療を続けておられます-- 行列 ができる程の大人気です-- 社会貢献をなさるお姿には 人の役目の定年がありません)。

声8: 林芙美子の時代は「生き延びる」が至上命令、今は「ベルトコンベアで長生き」;ヤワな現代の人に 「QOL」 や 「尊厳死」 の深い意味 が分かるだろうか?(係り:憲法に守られた命が生き甲斐あった と思えるように、介護保険の意味ある活用 に努めたいですね)。
 
パールの安全管理 3) # 378) : 胃瘻:20の私見を紹介、その II。 4) #395 : 格安延寿 L.C.L.とは?
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ふじひろパール

Author:ふじひろパール
「ふじ」=新谷冨士雄
「ひろ」=新谷弘子

社会福祉法人 パール
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