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(448) 医療の発達 と 不満

  (448)  医療の発達と不満

人々が農耕生活を始め定住生活をしたのは 約1万年前頃とされる。これに伴って文明が蓄積されてきた。

♣ 生活の中で ‘外傷’はつきものであり、その手当も 同時に行われ始めた ―― 動物でさえ、舐めることで傷を治す;まして戦いがあれば 刀傷・槍傷は避けることが出来ず、経験的に手を加えて治す試みも発達してきた。

♣ しかし、傷とは異なり 病気一般の正体は まだ闇の中だったので“おまじない”で対応するしかなかった。つまり、「傷の手当」と「病気治癒のおまじない」は 一万年前から ごく近代まで医療の中心的課題であったが、科学的な医療は ほとんど進んでいなかった

♣ ところが、19世紀の半ば、医療の内容が飛躍的に進歩の兆しを見せ始めた。まず、化学の産物である“エーテル・クロロホルム”などの麻酔薬が合成されて 外科手術が進歩した。並行して“石炭酸・クレオソート”などの消毒剤が出現、続いて パストゥール(仏)・コッホ(独)らの細菌学の発展で「感染症」という医学の重要部門が実用段階に入って19世紀の終わりを飾った。20世紀初頭には人間の“血液型”が発見され、輸血・輸液の概念も確立され、続いてペニシリンの大発見で病気治療の三つの基本手段 = 麻酔・輸液・抗生剤」が確立された。

♣ このように、20世紀の半ばには、傷も病気も克服され、医療の将来は万能の時代を画すると思われた

♣ ところが、ここまででの治療の流れで ご注意願いたいこと ―― それは「老人への言及」が何一つなかったことである ! だって考えても見よ、その時代まで人々の平均寿命は35~50歳だったのだ ―― 老人は、居たとしても稀、その老人を対象とする“老人延寿”などはハナから医療対象ではなかったのだ。

♣ 今では よく行われる「開腹術」、これを初めて成功させたドイツのザウエルブルッフ教授は のたまわった:――これは私だから出来た 偉大な医療の進歩である;今後とも 胸を開く(開胸術)・頭を開く(開頭術)などは 神のお許し がない限り不可能だろう、と。ところが ご存知のように、神のお許しがなくても、外科も内科も爛漫( らんまん )と発展を遂げてきた。

♣ ここで注目 !! 方法や手技の発達とともに、介護者も医療者も傲慢( ごうまん )になり、 “適応の外にある医療”に足を踏み込み始めた のである ―― 昔の人々は静かにこう考えていた ―― 病気は神(自然治癒力)が治す、人はその手助けをするに過ぎない、と。ところが人々は 技術の進歩を過信し、“寿命が尽きた老人の命でさえ 我らの技術によって治す ―― 神なんていらない”。

♣ その典型が「寿命治療」という 一連の行為である。特に 近年 新顔となったのが「延命胃瘻・延命透析」だ。これらは「虐待処置・技術の乱用」と呼ばれるが、それは「自然治癒力」が消えた終末期老人の命を 愚かにも単なる技術一片で押し戻そうとするからである。

♣ にも拘わらず、高齢老人の介護をする側からは ヒステリックな批判が発せられ始めた ―― つまり”治療はあるが、治癒がない ! ”という非難、“しかも それを“無責任な医療”となじり始めたのだ。

♣ そうだろうか?人を非難するのは楽な仕事だ ―― どんなに医学が発達しても、病気の治療は“適応があってこそ有効”なのであり、適応外の超寿命は“神のみ手”で守るしかないのではないか?自然治癒力が衰えた老人は 人の手による治療に対して若者ほどの反応をしない ―― だから病気は跡を引くのだ。諸外国では この老若の差異をどう考えているか? 相互に“歳は治せないものね”と 非難も弁解もしない

♣ どうすれば 「加齢と医療の相互」が納得できる関係になれるか?それは 次の4点を反芻( はんすう )することではないか?:―― 平均寿命が遺伝子寿命(更年期)の“2倍に増えた幸せ”を 感謝の気持ちで ゆっくり顧みること、 命とは、を流してしっかり生きること、 人は、周りの人々にも役立つ こと、 人は、子孫繁栄のために尽くすこと。 これらの ① ② ③ ④ が 将来的にも出来なくなるほど高齢になったら、変な画策をしないで 天命に従おうではないか?

結論: 現在、医療は必要かつ十分な発達をしていると思う。しかし、医療の“正しい適応を踏み外さないこと”が「幸せと不満の分かれ道」になる。ヒトには種( しゅ )特有の寿命限界 があり、それを通り越すと“自然治癒力”は衰退し、ケアも医療も受け付けない体になる。この理( ことわり )を しっかりと噛みしめ、無い物ねだりの不毛論議を避けたい と思う。

  職員の声

 声1: 医療の発達で 人の寿命はどこまで延びるのか?(係り:寿命分布曲線の最高値平均は “86歳” である;それ以下で死ぬ人は将来86歳に近づく)。

声2: 老後 安心して暮らせる経費は?(係り:60歳から100歳までにかかるお金は約1億円だ ―― 月20万×12ヶ月×40年≒1億円)。

声3: 政府の福祉予算は 年金(60兆)・医療(40兆)・介護(10兆)計 110兆円、対して国庫の税総収入は40兆円、差額 毎年70兆円は借金老人が今 借金し 若者が将来 返済する仕組み だ ―― 健全計画だろうか?(係り年金と老人医療を廃止すれば 福祉費は30兆円以内で収まる ―― 実現可能か?)。

声4: マウス実験で若い血を老いたマウスに輸血すると脳機能の改善を見た、と報告される ―― ヒトに応用できないか?(係り:現在 日本の輸血の7割は老人向けである ―― つまり老人の脳は改善したハズだが、君はどう思う?)。

声5: 若者から血税を搾り取って 意識のない老人の治療をするって 率直に賛同しづらい(係り:それは ‘ドブに金’ ( きん )と呼ばれる)。

声6: ご家族が悩んだ末の胃瘻、‘それで良かった’という声を一度も聞いたことがない

声7: 長生き願望は人の本能、今 それが達成しかけたのだから、長生きを‘不満’と感じない生き方を学ぶべきだ(係り:下記‘声10’で紹介するように、“不老不死”を提供できない医療を不満とする声もある ―― タダ同然の医療への要望は天井知らず に舞い上がるーー 有料なら こうはならない ! )。

声8: 私は‘胃瘻延命’に賛成した時期もあったが、考えてみれば 福祉予算は有限だ ―― 老人が無益な寄生虫生活をするために若者の命を横取りすれば 国は傾く ―― 老人と言えども応分に働いてこそ 正統に生存できる。

声9: 私は世論に従うけれど、老人医療制度は日本の繁栄を著しく妨げている と思う(係り:日本の風俗は、過去(老人)を過剰に礼賛し、将来(若者)の国益を阻害している ―― 延寿に延寿を重ねると その経費の重さゆえに国は傾く ーー 私費の延寿なら欧米に対抗できる)。

声10: 発達したとは言え、いまの医療は「不老不死」の領域に踏み込めずにいて、不満である ! (係り:‘不老不死’は古代中国の‘仙人’に任せなさい;それは医療の“適応の はるか外”にあり、’よこしまな’願いを立てることによって どれほど多くの善人がインチキ詐欺師の犠牲に陥ったことか ! 不老不死の状況下では「親子の情愛も、子孫繁栄の喜び」もない。そこで 私たちは上記の「結論」を読み返し、命の理( ことわり )を しっかりと噛みしめ、無い物ねだりの不毛論議を避けたいと思う)。

  参考 新谷冨士雄・弘子、五つのハテナ?:安全管理 #439、2014. 

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ふじひろパール

Author:ふじひろパール
「ふじ」=新谷冨士雄
「ひろ」=新谷弘子

社会福祉法人 パール
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