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(449) 旗幟 (きし )を 鮮明にせよ

   ( 449) 旗幟 ( きし ) を鮮明にせよ。

 今日は難しい文字からの出発だ。

♣ 旗 は 普通通りの “風にはためくハタ”、源平合戦で 横に長くたなびく赤(平家)・白(源氏)の旗をイメージして欲しい。幟 は“のぼり”のことで、敵味方の判断を容易にするために、文字を書いた縦長の布地を、長辺と上辺の二カ所で旗竿に結びつけた“のぼり”( = 幟 )である。戦国時代の合戦に よく用いられたが、現代でも‘大相撲・歌舞伎・選挙運動’などで活かされている。

♣ さて、ここで「旗幟」 きし を述べる理由は「旗 幟 鮮 明」 ( きしせんめい ) という四字熟語を学んで欲しいからだ。これには裏話がある。2001.10.5、日本記者クラブでの講演で、そのひと月前の 同時多発テロ事件に関する日本の対米支援についてアーミテージ国務副長官が「ショー・ザ・フラッグ」 (Show the flag ! ) と発言した。

♣ まだテロ事件の全容が定かでない頃であり、日本人記者たち は 事情について「あれも これも考えられる. . . 」と他人事のように賑やかだったので、アーミテージが一喝したのだ ―― ワシの味方か、敵の味方か?答えてくれ ! それが Show the flag ! だったのだ。これに対して日本人記者たちはキョトンとして迷った ―― “旗を見せろだって?僕ら 旗なんて持ってない ! ”。この混乱を救ったのが柳井俊二駐米大使であった ―― 旗幟( きし )を鮮明にせよ、という日本語だった。ところが「キシって何のことだい? 」と記者たちはふたたびキョトン ! つまり、自分の意見を述べずにガヤガヤ、“キシ”と聞いても意味が分からずガヤガヤ、全くお粗末な取材だったのだ。

♣ さて、長い前置きになったが、言いたいことは二つ: 旗幟鮮明という四字熟語がある、という基礎知識を持つこと、 普段、意見を聞かれたとき 旗幟鮮明な意見を述べられることの二点である。我々は老人福祉の世界に住んでいる。だからボンヤリと仕事に従事するだけでなく“介護保険の目的は何か、老人の延寿に関する洞察”などを旗幟鮮明に答えられねばならない。 三つの例を示そう:―― 

例1: 元気で長生き」という標語は 一般会話では何の問題もないように見える。だが、介護のプロなら 一歩踏み込んだ現実を頭に描くべきである。つまり、統計によると、平均的な女性は 健康寿命を73年続けた後 病気寿命を13年間 勤め上げないと逝くことが出来ない。能天気に“日本女性は世界一の長寿なのだ”と浅はかに威張ってはならない ―― だって現実の病気寿命は13年間の長きに及び、日本の長寿運動の掛け声は 主に“自分の寿命を病気寿命で延ばす こと”に過ぎないのである ―― それを世界に誇れると思うか?「長生きしたいけれど、病気はイヤ ! 」という意見は素人の意見なら微笑み返して良いが、プロのあなたなら旗幟鮮明であるべきだ =>「私は認知症になった後でも 長生きしたい」が正しい ―― だって 長生きと認知症は「コインの裏表」 なのだから 1)

例2: 公文書でよく見かける次のフレーズをあなたはどう解釈するか?:=「患者本位の医療サービスの質の向上が喫緊の要望である」。言わんとする意味は想像できるが、私なら“患者本位”って、病院の待ち時間ゼロ?一人に1時間の診療時間?最新・最高の治療を無料で?などを考えて 思わず頭をかしげる。欧米ではそれが実行されているらしいが、旗幟鮮明に合わせ料金も しっかりと高い。また“質の向上”って過剰診療のこと?寄ってたかってのサービス?ビューティサロンじゃあるまいし、今 日本の医療で一番 問題なのは 世界がビックリするほどの老人の受診過剰であり、ペイ・ゴー 2) の精神は全く考慮されていない。ご利用者本位って何なのか、公文書は旗幟を鮮明にするべきである。無い物ねだり を公文書にしないで欲しい

例3:自己責任による介護予防」。これに関しては 当たり前過ぎで、全く嘘がない。でも嘘がないこと、イクオル問題なし、とはいかない。人は60歳から100歳までの40年を生き抜くために 約1億円 かかるが 3) その金額は20歳から60歳までの40年間で貯蓄する。介護ナシでもこれだけ掛かるが、介護アリなれば 天井知らずだ。それほどに ’働かずに生存することは 金食い虫’なのである。誰が そのお金を受け持つの?

結論: 旗幟 ( き し) を鮮明にするためには、コスト論理をわきまえて 意見を述べて頂きたい。現実からほど遠い絵空事を‘さえずる’のは 介護者の取るべき正しい姿勢ではない。よく耳にする「二股膏薬」の意見は慎みたいと思う。

  参考 1) 新谷冨士雄・弘子、認知症の増大に歯止め?:安全管理 #442, 2014. 2) ペイゴー:安全管理 #107, 2011. 3) 延寿の業(ごう)を正す. 安全管理 #438, 2014.

職員の声

 声1: 恥ずかしながら私は“旗幟鮮明 ( きしせんめい )初めて知ったが、日本人はこれが苦手、でも新聞記者なら知っておくべきだったかな?と思う。

声2: 語彙 ( ごい ) の少ない20代の若者たち ―― ヤバイ ! の一言で会話を済ませる ! ―― Show the flag ! を聞き、‘勉強もしておかねば 恥ずかしい’と感じた。

声3: 介護保険が破綻( はたん )しかけている ―― 60歳から100歳になるまで お一人1億円かかり、その額を 20歳から60歳までの間に貯蓄する必要がある? ―― 1億円÷40年=250万円、つまり私は一年に250万円を貯蓄するのか?係り:福祉給付を権利と思うなら、貯蓄は義務であろう ―― もし そんな貯蓄が不可能というのなら 他人様の財布を狙うほかはない ―― 今の老人たちは 君の所得税に福祉依存して生きている)。

声4: 旗幟鮮明を打ち出すのは良いが 他人と衝突するのではないか?(係り:衝突は問題なし;二股膏薬が問題なのだ)。

声5: 戦場にあっては、旗幟を鮮明にしなければ自分の命が危ない;介護にあっては人の生き方に賛同する姿勢がcommunicationで伝わらなければならない。

声6: 旗幟鮮明のためには 普段からの勉強 が必要だ;政治・社会・科学などにも気分を向けておく(係り:これこそ パールの 品質会議の“リベラル・アーツ”(一般教養)の趣旨に沿うものである)。

声7: 福祉の業務は 他の業種に比べ 「何のために行なうか?」を絶えず問う必要 がある(係り: “可哀想で見ちゃいられない”から行なうのが 福祉の出発点だろうが、「長生き が 果たして幸せに繋がっているのか? 」を時々問うてみよう)。

声8: 旗幟鮮明は結構だが、他者の考えにも理解を示す度量( どりょう )を持つ、そんな人になりたい。

声9: 私の旗幟は「多老少子化を憂える」である:―― 人々が長生きをして更年期以後の人口は増えるばかり;彼らは子を一人も産むわけでもない . . . 毎年 “多老” の結果となる ―― そのくせ、文句だけは結構おっしゃる ―― 若い女性は もう十年早く子を産み始めたらどうか? ―― 今 平均初産年齢は30歳 ! → 昔は、「 ‘ねえや’は十五で嫁に行き 」で子を産んだものだ、今の30歳の初産は狂っている、と。 . . . 爺さま婆さまは 働きもせず長命で、福祉のタダ飯を食べて、その上 ご自分の事は棚に上げ “多老少子現象”に不満を投げかけている . . . それで問題が解決するハズはない . . . いったい年寄りの長生き は“”なのか それとも“”なのか 現状では 迷うばかりだ
プロフィール

ふじひろパール

Author:ふじひろパール
「ふじ」=新谷冨士雄
「ひろ」=新谷弘子

社会福祉法人 パール
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