(450) 認知症の メリット・デメリット

   (450) 認知症 の メリット・デメリット

 まず初めに、認知症って 病気だろうか?それとも病気ではない か? たいていの人は「病気」と思うようだが、でも 「病気」の定義って難しい

♣ たとえば、「けが」は病気だろうか?狭義の「けが」は病気とは違うが、病気でなければ 健康保険が使えない ! では「老化」はどうか?老化に伴う訴えの中から病名を拾えれば、健康保険が使える。病気とは ずいぶんと恣意的 ( しいてき ) である ! この問題を次の4点で考えてみよう。

① 認知症は病気か? :―― 病気と決めるためには、原因~結果の因果関係が必要だ。認知症の実態は年齢依存的であって、85歳で半数の人が、100歳で8割が、110歳で全員の人が認知症になる ―― つまり ”加齢”が主因である。もし 周りへの迷惑がなければ、誰も病気だとは思わない。

♣ 認知症にはが使われるから‘病気だ’と思うだろうが、その薬は初期症状を抑えるだけで、原因治療薬ではない。つまり、認知症は 医療が踏み込みにくい「加齢現象」なのである。他の類似例として「円背 ( えんぱい ) を挙げよう。高度な円背ならば、生活上の不都合は大変なもので、歩く時に前が見えない。その原因は多数の脊椎骨が加齢・変形をするからであるが、それは進行こそすれ 治らない。骨の変形には姿勢・習慣・加齢の原因はあるが、その一つ一つは病気ではない ! どうしても一つの原因を煮詰めるなら 「加齢」 となるだろう。

② 認知症の不都合は何か? :―― 認知症は ふつうの病気と異なり、一度 獲得した知能が 元の木阿弥に戻り、すべてが“他人迷惑”に繋がる状態である。たとえば、徘徊・拒否・不潔など ―― 意志の疎通は障害され、ついには 大脳機能が欠如した 「人の姿の蛙」になってしまう。一昔まえまでは 認知症 ( = 痴呆、老人ボケ )の寿命は短かかった;なぜなら“他人迷惑”を受け止める 社会の寛容性が低かったからである。逆に、現代では 認知症は殊更に長命となり、却ってその長命を支える社会資源の枯渇が問題となっている。

③ 認知症のメリット :―― 人は煩悩 (ぼんのう) の動物である。ところが 認知症では 大脳活動の所産である煩悩 が消え失せる。その様子を19世紀のスコットランドの貧乏詩人 ロバート・バーンズの書いた「モグラへという詩」で表現してみよう。彼は畑を耕していた時、誤って鍬 ( くわ ) でモグラの通り道を壊してしまった。彼はモグラに謝り、次の詩を書いた:――

それでも、おまえは、私と比べれば幸せさ
            おまえが知るのは今のことだけだ 
      ところがどうだ、私は過去をふりかえり
            恐ろしい情景を眺める
      そして、先のことは私にもわからないから
            想像して、怖れるのだ

人間以外の動物は、ひたすら現在の刹那 ( せつな ) のみに生きる。彼らは、過去と将来の認知ができず、自分がいつか必ず死ぬ運命にあることを知らない。人間だけが命の有限さを自覚し、それゆえに人間だけが 「生命の幸せ」 を持つ のだ。

♣ あなたは認知症を不幸せと思うかもしれないが、認知症の本人は“死の不安も悩み”も持たず、「ボケ勝ち」 の優しい笑みを浮かべて日々を過ごす。嘆き焦るあなたと違い、彼らこそ認知症のメリットを十分に享受している人々なのある。

④ 対応に困る :―― 認知症のメリットは 逆に周辺の人のデメリットだ。病気なら治る治療法も開発されようが、「加齢現象」ならば それは たぶんムリ だ。「私の人生を他人ケアのために棒に振るのはイヤだ . .」 と、周りの悩みは それぞれに深い。

♣ 唯一の対応法は?. . . 残念ながら、「人手の塊」 しかない。認知症が稀だった昔なら“座敷牢” に入れられたそうで、水・食事と人の手が不十分な結果、一週間程度で終わった。現代の認知症は、メリット・デメリットの両方をみんなで分かち合う のだ。 

結論: 認知症への対応は大仕事である。でも一つだけ分かったメリットがある:―― それは 本人が「死の不安」を持たず、幸せな人生を送っているという事実である。それが目に見えれば、介護者の苦労はかなり報いられる

参考: Robert Epstein: Brutal Truths About the Aging Brain, Discover 10:48, 2012.

  職員の声

  声1: 認知症の社会的負担は、あまり言われていないが、莫大な社会的なデメリットである(係り:要介護5なら お一人年間500万円を越える社会負担金が何年も続く普通なら その金額で4~5人は暮らせるほどだ)。

声2: お金の補給ができれば、 「死の不安も悩みもない」認知症、これは本人にとって莫大なメリットである;デイサービスで認知症型へ来所される方々は あまり映えて見えないが、私は従来とは少し違う目でお相手できるような気になった。

声3: 中には“私はどうしたらいいの?存在価値があるの?”と不安に悩む認知症の方もある が . . .(係り:周りの人たちが余分な同情をすると ‘初期の認知症’は自己過敏になって悩むが、やがて時と共に笑顔の認知症に移り変わって行く)。

声4: 認知症で煩悩 ( ぼんのう ) が無くなれば 本人は不安を持たずに幸せな日々を送れる 介護者も幸せになれる 我が母の認知症に向き合っても 私は不安なく介護が出来る 認知症の素敵なメリット と言える !

声5: 私の友人は90歳で認知症の母を自宅介護で疲労困憊 ( こんぱい ) だという ―― これはデメリットか?(係り: “愛”にはデメリットなど無い と思われるが . . . )。

声6: 先にボケたほうが得なのか? 悩みはないのか?(係り: 認知症は大脳が蛙脳になった状態 であり、蛙は 隣の蛙の悩みを知らず、損得抜き で暮らしている)。

声7: 私は ロバート・バーンズの「モグラヘ」の詩に共感する ―― 自分が認知症になったことを忘れてしまえば、その人は幸せなのだろう ―― でも他人にとっては迷惑だろうな)。

声8: 認知症はその瞬間を生きている、私の気持ちを見透かしている、人間の本能を感じている(係り:認知症は“大脳機能”の劣化が必須であり、知能は必ず低下する;そのぶん 動物的な勘が前面に出る ーー それはナゼか?認知症の語源は”デメンシア” 、つまり ”知能消失状態” という意味であり、日本の厚労省が、親切にも 東洋的幻想を織り込んで 語感の軟かな ’認知症’ という名称を発案したのだーーこのため 関係者は 認知症という言葉に出会うと みな幻想に酔ったイメージを連想するーー正しい語源に戻って理解すべき であるーー 昔の ’年寄りボケ’ のほうが現実理解に より適している)。

声9: 100歳で認知症の確率が80%なら私は残る20%の正常者のグループに入りたい係り: たとえば聖路加病院の日野原先生103歳は、外来を開くと行列ができる、という ―― あなたを見ていると、そのような オーラ があるように見受けられる)。
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ふじひろパール

Author:ふじひろパール
「ふじ」=新谷冨士雄
「ひろ」=新谷弘子

社会福祉法人 パール
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