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(42) エホバ・ペグ と あなた

 (42) エホバ ペグ と あなた                                    
 エホバとは「エホバの証人」というキリスト教の一宗派です。ふだんは知られることも少ない宗派ですが、こと医療になると、問題が起こります。特に、交通事故や緊急のお産の手術で輸血の場合、初心者の天地は、ひっくり返ります。

♣ それは、エホバが教義として輸血を許さない宗派だからなのです。もし医師が、言われるまま輸血をせずにエホバの信者を死なすと、刑事事件に問われます。輸血を敢行して命を取り留めると、助かった患者は仲間から村八分にされるので、医師を起訴、最高裁ではその医師を有罪にするとの判例が出来ています。ある病院は、これへの対応として「輸血拒否の方は当院の診療をご遠慮ください」と張り紙を出したら医師法違反でやられてしまいました。八方塞がりです。パールは輸血をする場所ではありませんが、もし、あなたがこんな場面に出会ったら、どうしますか?

♣ 次に「ペグ」の話をしましょう*。ペグとは「胃瘻」(いろう) = 「経皮内視鏡的胃吻合術(Percutaneous Endoscopic Gastrostomy)です。元来は外傷などで「一時的」に喉と食道をバイパスする目的で工夫された「開腹手術」でした。ところが 1980年ころ、内視鏡の発達とともに、胃と腹壁を繋ぐ手技が、外来で簡単にできるようになり、欧米で高齢者の延命に利用され、爆発的人気を得ました。しかし、すぐ反省の波で人気は収まってしまいました;ペグは「人の生と死の境目を不明瞭にする手技」だからです。

♣ しかし、この手技が日本に紹介されると、「食べない老人の延命」に用いられ、人気は持続的になりました。お年寄りは、口や喉を使わずに栄養が取れるのですから楽ですが、口から食事を取れないほど 病気が進行したお年寄りは、意思の疎通ができない状態、つまり高度の「寝たきり」であることが多いのです。パールの特養では、今、3人ほどペグの方がおられ、一番長い方は3年2ヶ月です。3人とも要介護5で、会話は成り立っていません。欧米では、この状態を「呼吸する屍(しかばね)」(breathing cadaver)と言うそうです。

♣ パールは、施設としてペグを奨めもせず、反対もせず、ご家族の判断にまかせます。一つだけ知っておいてください:ぺグの造設は簡単ですが、一日2~3回の栄養補給係りは「家族 または 看護師」しか担当してはいけないのです(介護職員は法的に不可)。もし ご家族がその任にあたられるのなら、それは重労働です。また、介護施設での看護師は、自由に夜勤をするほど潤沢ではありません。加えて、長期にわたる看護延命には、褥創や低酸素症などと、悩みも付きまといます。体格指数(BMI)から観察すると、胃瘻は病気の進行を抑えませんし、誤嚥性肺炎は必発です。

♣ そこでお尋ねします:あなたの祖父母・父母・血縁の方がペグを必要とされた場合、あなたの意見はどうでしょうか? 血液透析の場合と似た状況がありますね。エホバは「人為生命」を禁じ、逆に「ペグ」は「人為生命」を求めます。いずれも、看護延命、または介護延命の手技です。人の命の終わりを、ご家族の一念と恣意(しい)で、こんなに変えてよいものか、私は、生き方の不思議に感嘆せずにはいられません。* 安全管理 (17)「胃瘻と尊厳生」を参照。

職員の声

声1: 私が担当するご家族でペグをしている方が2名おられます;ご家族は「何もせずに死なせる訳にはいかない」とおっしゃいますが、想像以上に大変です。

声2: 私の祖父はペグを設置しました;その頃、私は無知でドクターにおまかせでした。

声3: 私は自分の「延命」を希望していましたが、特養に配属され、ペグの実態を知るにつれ、「延命」を取り消しました。

声4: ペグは素敵な一次しのぎの治療法ですが、原因療法ではありません;世の中では「本人の意思を尊重する」と言いながら、実は「自分の判断を押しつける」ことがあります。

声5: もう社会は この人を必要としていないけれど、問題の判断者が「私」であり、かつ、その人が「私の親だから」ペグをして下さい、というエゴが多いです(係り:ペグの平均延命は1.2年、経費は約900万円です)。
プロフィール

ふじひろパール

Author:ふじひろパール
「ふじ」=新谷冨士雄
「ひろ」=新谷弘子

社会福祉法人 パール
安全管理 ふじひろのページ

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