(471) ナゼ 老人の数は 増えるのか?

(471) ナゼ 老人の数は増えるのか? 

 私たちは 「老人が増え 子供が減る」 と聞けば、“そこはかとない不安” を感じる。それは ’老人 = 徒食’ ( としょく ) というイメージがあるからだろう。そこで まず、老人がどれだけ多いのか、自分の頭で納得してみよう。

♣ まず 戦後の高齢者人口の推移を見てみよう。65歳 以上の老人人口は 戦直後で300万人(総人口の 4% 強)、以後、‘富士山の登り裾野’のカーブで 11倍 に上昇、現在 3,200万人 (総人口の 25% 1) 、4人 に 1人 の割に増えた。推計によると 2035年 には この数が 4千万人 まで増え、そこで頭打ちとなる。そのころには総人口も 1億人 程度に減っているので老人の割は総人口の 40% ―― ほとんど二人に一人は老人となる。

♣ 私たちは、人口の半分近くが老人だということを少しも気に病まない が、人口の半分が徒食 ( としょく、働かない という将来像を大いに心配する だろう ―― みんなが きちんと飯が食えるのだろうか?
ナゼ老人の数は増えるのか?

‘図-1’ (上) は老人の生い立ちを良く説明するものである 2) 。この図は 一年分 を縦の細い短冊 一本 で示している。スタート点の 昭和22年 ;若老年齢者を 4分割 して 図の左下から、 14歳 以下の年間死亡者数( 約20万人 )、 その上が 15~64歳 の労働人口の死亡( 60万 )、 次は 65~75歳 の初老死亡( 20万 )、後期老人( 5万 )、死亡者総計は 110万人 ;図をこのように読む。

♣ 歴年が右に進むにつれ、① の年少人口の死は みるみる減って 昭和60年 にはゼロに近くなり、平和と医療の影響を見ることができる。 ② と ③ は、それぞれ 10万人 で、時間経過と共に増減が少ない。つまり、平和や医療にあまり影響されない死であり、今後とも安定的にみられる 基礎的な確率死’ ではないだろうか? 

問題は ④ 、これは 75歳 以後の ‘後期老人死亡’ を表しているが、当初は 5万人 程度であったものが、昭和55年 以降 どんどん増え、最後には 16倍80万人 に達している。この激増には どんな理由があるのか?

♣ その前に この図の全体像を観察しよう。戦後の死亡者数は 110万人 (総人口 7千万人 )、直近のそれは 120万人 (総人口 1.2億人 )、数として大きな相違はないが、驚くべきことは 老人の死亡者数の違いである:―― 戦後の老人死亡者率は 人口の 5% 程度、これに対して 直近では 70% 近い ―― つまり、近年では 老人が より深い高齢まで生きて天寿を全うする人が著しく増え て逝ったことが分かる。それは我々の実感でもあり、戦後の社会福祉の勝利を示すものとも言えるだろうーーだって、昔のヒトはその人が天寿に達する前に死んでいた からだ。。

♣ さて ‘老人が増えた’ ということは、過去 80年 前に ‘彼らが 大量に誕生していた’ からでもある。戦前は ‘人生50年’ といわれたが、今は 統計的には少なくとも ‘人生 80~86年’ だ 3) 今 80歳 の老人も 80年 前には赤ちゃんだった のだ。

♣ そこで‘図-2 4) (下)を眺める。死亡数増加は 1980年 から始まっている。その 80年前 の 1900年 頃の出生パターンを観察すると、見事、“産めや増やせよ” の号令が掛かった出生数増加の様子が伺えるではないか ! つまり、その時の乳幼児たちが 途中で死なないで 80年 余の人生を過ごした後、1980年 以後 天寿の定めに従って大量に逝き始めたのである ―― これは単純な 「因果関係」 であって、それ以上の余計な説明は何もいらない。つまり、80年前 の出生グラフが ほぼ平行移動して 現在の老人死亡のグラフになっただけの話であり、それは 医療や福祉政策以前の基本原因である。
ナゼ老人のかずは増えるのか?

♣ では、今後はどうなるか?今後も ’生まれただけは死ぬ’ という 因果関係 は同じだ。‘図-2’ の出生数のパターンをよくご覧あれ。終戦とともに 第一次団塊 ( 270万人 )、続いて第二次団塊 ( 210万人 ) の峰が観察される。これら新生児も 80年後 には天寿を迎えて逝って しまう運命は当然である。こうして、老人の数は 現在の 3千万人 から 4千万人 に まで増え、その後 減衰する。

♣ ちなみに 筆者ら夫婦は、二人で 19人 の兄弟姉妹を持つ戦前派である。今や 若者は子を生まないし、老人も勿論 子を産まないから、以後 人口増加の将来は起こるハズもない。つまり、‘多子化’ は とっくにあきらめ、せめて老人の数だけでも 一時的に豊かであることに夢を託す次第である。

結論: ① 老人の数は現在の 3千万人 から 20年後 の 4千万人 まで増えた後、減衰に転じる。② 戦後、死亡者数は著減したが、近年は ‘死期猶予30年’ 4) の恩恵を終了した超高齢老人が蓄積・増加して きた。③ ナゼ 超高齢老人の数が増えたのか?に対する答えは、80年前 に生まれた赤ちゃんが多数で、病気が少なかったからでも あり、その彼らは 今 天寿を迎え 毎年 逝く準備をしている のが 実情である。

参考: 1) 新谷冨士雄・弘子:「多々老・少子化」が正しい、福祉における安全管理 : #452、2014. 2) 厚労省、平成23年 人口統計。 3) 新谷:日本女性の平均寿命は86歳か?ibido #466, 2014. 4) 新谷:死期猶予30年と介護界。ibido #460, 2014.

職員の声

声1: “多々老・少子化” 1) はもう何十年 も前に計算され 分かり切っていたのだ;それが改めて目の前に来て あわてふためいているのが国の現実だ(係り: 政府も学者も あらかじめ ‘厳しい現実に向かい合うのを避け、今になって初めて騒ぐ’―― これは一種のペテンだよ)。

声2: は薬もなく医療費は高価で 一般国民は医療と無縁で短命 は薬が多量・医療は安い、だから老人は増える一方 !!(係り: 80年前 、 “産めや増やせよ ! ” の号令で ‘子沢山’ の人々が 戦後の高福祉のお蔭で死なず長生きなのだ;欲をいえば これらの老人たちが働いて自立してくれれば ‘言うことナシ ! ’ )。

声3: ナゼ老人が増えたか? って? 一番原因は 図2 を参照: 80年前 に大量の赤ちゃんが生まれ しかも死ぬこと少なく 今 天寿を迎え始めたからだ:学者たちが言う別の原因は 言い訳がましい 「屁」 に過ぎない

声4: 産まれた人は必ず死ぬから 「収支はゼロ」 のハズ; しかし人生 50年 で死んだ時期と 90年 も生きた後 死ぬ現代では、出生数が同じであっても 歩留り ( ぶどまり )は倍近くになり、老人人口が著しく増えるのは当たり前だ; 逆に総人口が減る将来になれば 老人数も減るハズ ―― ただし、これは 喜ぶべきことか?(係り: 戦前は 「年寄りを大切にしましょう、長生きさせましょう」 と言い続けて来たが、今や戦後 70年 介護の発達した現在、同じことを言い続けると 日本がどんなに ひどい運命に陥るか 想像に難くない)。

声5: 2035年、人口の半数が老人となる年、私は もう生きていないが、恐ろしいことだ ! ―― 長寿は喜ばしいが、バランスをとって子供を増やせないものか?係り: バランスを取って子供を増やせば、日本の総人口は 4億人 くらいに膨れ上がる ―― あなたは心にもない嘘を言ってはいけない . . . 日本国の面積で 1億2千万 の人口は、インドネシアの次くらいの人口稠密; 先進国なら 6,000万人 程度が身分相応なのだ ―― 1億2千万 に焦げ付く日本のリーダーたちは狂っているよ)。

声6: 老人過剰という現実を嘆くのではなく、現状を活かしたらどうか ―― つまり 「生涯現役 ! 」 というモットーを社会に広げたい(係り: よく聞かれる 元気で長生き” という願いは、“自分だけの健康と長命” を願う ‘独りよがり’ だ;それによって他人様にも幸せが訪れる、というサービスの心は全く感じられない;他方、もっと大きく言い換えて “長生きで元気 ! ” と言えば ‘人様のお役にも立ちます’ という 老人の社会性が窺われて頼もしい)。

声7: 現在の老人過剰の原因が ‘80年前の出生数が多かった事’ と、近年の‘医療・介護の発展が寄与’と言われれば ナルホドと引き下がるが、人口の半分を占める老人が 「無為徒食 ( むい としょく ) と言う表現を聞くと、 果たしてそれで 持続的な社会が成り立つのか、と不安になる(係り: 人生 50年 時代の昔の願い = ‘丈夫で長生き’ が 現在では みごとに達成された ! . . . ところが人間の願望は果てしない もので、現在の願いは もっと長生きしたい、 ‘不老長寿’ を求める 、に拡大されている ―― つまりこの願いが叶えば 人口の大部分は老人となる勢いである . . . それで社会が成り立って行くだろうか?医療・福祉の発展が 思わぬ 大きな不幸を呼び込まないように工夫する必要があろう)。

声8: 少子だけれど ‘人は生まれ育ち’ 、老人だけれど ‘万寿まで生きている’ ―― 人口は増えず減らず―― それで良い のではないか?行き先、長寿は喜ばれない時代が来るかもよ(係り: 日本国の “身の丈” に合った人口は 6000万人 前後である ―― 現在の識者たちは 1億2千万人 を少しでも割り込むと 大騒ぎをするが、彼らは自分の身近で子を産ませる具体的な努力はしない ―― 概念バカ だよ ! )。

声9: 老人が働ける社会、少なくともボランティアが可能な 「場」 を提供する社会 が必要だと思う; また 80歳 まで医療費が掛からなかったら 「勲章」 を出すくらいのプランも欲しい ―― 私はこれこそ文化勲章よりずっと価値がある と思う(係り: 以前、あなたは 現在の ‘手厚すぎる介護’ High-Cost-Care と呼び、健全な持続性福祉を維持するために Low-Cost-Care 格安延寿5) を提唱された ―― 今回ともども あなたのアイディアを高く評価 したい)。

参考:  5) 新谷: 格安延寿(L.C.C.)の重要性、安全管理 #427, 2013.
プロフィール

ふじひろパール

Author:ふじひろパール
「ふじ」=新谷冨士雄
「ひろ」=新谷弘子

社会福祉法人 パール
安全管理 ふじひろのページ

最新記事
全ての記事一覧
月別アーカイブ
カテゴリ
リンク
QRコード
QR