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(474) 年金 の 生い立ち と 現在

(474) 年 金 の 生 い 立 ち と 現 在

先の大戦終了の年、イギリスは 「揺りかごから墓場まで」 を合言葉にして、混乱した戦後の社会の立て直しを図った。

♣ 私は当時 中学一年生で 噂 ( うわさ ) 程度しか分からなかったが、習い始めた英語で “Pension ” という文字が気になって辞書で調べたら 「年金」 と書いてあったのを思い出す。「年」 の 「金」 とはどんな意味かが分からず、使い方をやっと覚えた日本語の辞書には出ていなかった。イギリスは年金の大切さを強調していたが、私は 「政府の支給金」 かなと ぼんやり想像した。

♣ でも、政府が税金を召し上げるのではでなくて、お金を国民に支給する? そんなことは あり得ないことだったので、遠い国のイギリスを羨ましく思ったのを覚えている。当時は 「人生50年、軍人25年」 という時代だったから、人が歳をとったら どんな暮らしができるか、まるで私の頭の中にはなかった。

♣ 考えてみれば、江戸時代の人々が定年で退職したあと、収入がなくなって どんな生活をしていたのだろうか?いや、定年とか退職などの言葉はその頃にはなく、平均年齢の 40歳 以下で死ぬまで人々は働いていた のだった。

♣ 日本で最も古い年金は、軍人への恩給として明治時代に始まり、その後、船員・学校職員 などに広がったと言われる。基本は 「恩給」 であって、福祉行政の発達した現在の年金とは意味が異なり、恩賜的な要素が強かった。

♣ その後、 年金は職種ごとに 部分的に広がったが、社会保障の骨格である 「国民皆保険・皆年金」 が達成されたのは やっと 50年前 の 1963年(昭和38年) のことである 1) 。その頃の日本人口は 約 9千万人 (今は1.3億 )で、65歳 以上の老人の割合は 5% (今は 25% )、つまり今と比べて 半世紀前の日本は 年金の不要な 若い国 だ った。当時の平均寿命は 男 65歳 、女 70歳 で、終戦時よりも 10歳 ほど長命になった。

♣ 国民年金の支給開始年齢は 65歳 、当時の男性の平均寿命は 65歳 、つまり平均的な男性は年金を貰う歳に 寿命が終わっていた。換言すれば、その頃の老人の生活は 「年金がなくても生きられた」 のである。

♣ なぜかって、親子の同居率が高かったからである(80% 以上)。親と家族は同居するのが当たり前であり、老人の面倒は家族が看るから、老人の社会問題はなかった。問題のある老人は 養老院、戦後は生活保護法の養老施設の対象とされてきた。

♣ たまたま 年金の萌芽 1963年 からバブル崩壊の 1990年 の 30年間 は 日本の経済は過熱の時代であり、人々は 「一億総中流の夢」 に酔い、併発する社会諸問題は経済発展の勢いによって覆い隠されていた 。たとえば、その 30年間 に国民の平均寿命は 男女とも 15年 も延び、その結果、老人の数は 500万人 から 3倍 の 1,500万人 に膨れ上がった。この時期に 「恍惚の人」 という痴呆老人の家庭問題が報告されたが、まだ少数の事として社会問題にはならなかった。

♣ 1990年 は経済過熱 ( バブル ) 崩壊の年である。これ以後、年金制度は 従来の本人 積立型」 から 「賦課 ( ふか )」 へと移行した。積立型は積み立てた本人が貰う年金だったが、賦課型は 「年金支払いを若者からの税金で足して支払う」 形式で、このお陰で 年金は国民全部に行き渡る制度となったが、たちまち財政困難に陥った。バブルの崩壊後、税収は減り、受益者の老人は さらに増加、年金基金の運用も 社会保険庁の不祥事などで うまく行かず、以後 現在に至るまで年金の赤字体質は不動のものとなっている。

♣ 片や国民の年金受給者は年毎に増大し、戦後の年齢 55歳 から今年の 86歳 まで 30歳 以上も 受給年齢層は拡大した。長生きは皆の願望だから 大変おめでたいことであるが、長生きを支える財政は大変厳しい。その厳しいさなかの 2000年 には 「介護保険」 が実施された。介護保険の目的は 「老人の自立と尊厳の確立」 にある。国としては 完全に正しい方向での福祉行政であって、皆が協力的であるものの、財政の困難は増すばかり だ。

♣ 現時点の福祉予算の概算は、年金 60兆円 ・ 医療40兆円 ・ 介護20兆円 、計120兆円 であり、これに対する国家税収は 45兆円 しかない ! 後は借金 ! 元気で長生きの老後を楽しむために発達してきた 「年金」 、その生い立ちは まだ 20年 にも満たない 若い制度なのだが、福祉を受ける国民は 「全然 足らない、不足だ ! 」 と不満をもらす。

♣ 日本では仁徳天皇の ‘民の竈 ( かまど ) ’ で始まった福祉の恩恵は平成の御代に受け継がれてきたし、 “人 一人の命は地球よりも重い” とおっしゃったのは ‘ダッカ事件’ の福田赳夫元総理だったが、国民の一人一人を 王様や女王様のように大切に扱うこと が どこまで可能なのだろうか? 私は やっぱり 「身の丈に合った福祉」 を語り合うことこそ 今の時代の要請ではないかと感じている。

結論 : 年金制度を維持するための必須条件二つは: ―― ① 福祉と言えども 「働かざる者 食うべからず」 の基本原則を再認識すべきである; ② 何事も欲張りすぎず、質素を旨としたい。だって、今の贅沢を維持するならば、老人一人が徒食で長生きするためには 「数千万円」 レベルの国庫補助が必要で、それは納税者にかぶさる税金だからである 2)

参考: 1) 中村秀一 : この半世紀の高齢化のインパクト、こくほ随想 ( ブロッグ ) 、社会保障出版社、2014. 4月。 2) 65歳 から 100歳 になるまでの 35年 の概算経費: 「要介護 2 = 月 20万円 として」 : 20万×12ヶ月×35年 = 8,400万円

職員の声

声1: 自分の寿命は分からないから、貯金の目標も分からない ―― 貯金は多すぎても少なすぎてもトラブルの元; 私が年金を貰えるのには時間がかかるが、たぶん年金だけでは不足だろうから、一生働かなくては !! (係り: 年寄りの数は増える一方、しかも 年寄りは 働かないし、どうすれば良いと思う?)。

声2: 若い時に働かず、年を取って ‘年金要求’ などは 以ての外だ ! 係り: 福祉とは ナマケモノの命も 働く人と同じように尊い という大原則がある ―― 尊厳と呼ばれている)。

声3: 「働かざる者 食うべからず」 の考えに賛成、そのためには老人が働ける社会を創らねばならぬ(係り: 要介護2 を越える認知症老人を働かせる とすれば、指導・監視のために人手が二人以上必要となり、コスト問題に引っかかる ―― そこが老人福祉の問題点である ! 何としよう?―― 解答は 自然淘汰を待つしかないのではないか?)。

声4: 「質素な生活」 と 「働かざる者 食うべからず」 を両立させねばならない ―― さりとて 「無為徒食の老人一人」 を養うために 数千万円の予算を何とか工面する必要がある(係り: 一人の年寄りの生活を看るために 二人以上の納税者を要する現実に 目をつむるべきだろうか?)。

声5: 老後の不安は深刻である ―― 健康に注意し、医療・介護の予防を心がけるべき だ(係り: ピンピンコロリ なら余分な予算なしに逝けるから それは可能だ、しかし、どんなに予防しようとも、女性は平均して 13年間 の “介護予算” を浪費した後でなければ逝くことができない現実があり 3) 、お一人あたり、予防の有無に拘らず 約3000万円 の経費が掛かる)。

声6: 税収だけで賄えないほど多くの年金や介護予算を組む 政治家の気が知れない(係り: 自分が選挙で当選するためには 老人の安楽を保障せねばならない ―― その額は、年間 年金60兆円 ・ 医療40兆円 ・ 介護20兆円 、これに対する税収は 45兆円 ―― どうにもナラン実態 ! )。

声7: 老人の理想は 「働かずして サービス有り 長生き有りだろうが、それに対するに 「質素で幸せな老後」 という謳い文句では 全然 矛盾するではないか?(係り: 戦前の老人は人口 20人 に付き 1人 だったし、老人とは せいぜい 65歳 ―― ところが 高福祉の今の老人は 人口2人 で 1人 に増え、その上 おん歳 90歳 ! 老人の理想を支える納税者の力量が追いつかない。戦前のヨーロッパの解決法は 「植民地からの富の収奪」 で賄ったが、今はそれも不可能)。

声8: 現状でさえ赤字で苦しむ国家予算なのに、もし 「揺りかごから墓場まで」 の高福祉を実行したら 国民負担は耐え切れない ―― その上 予算にたかるい役人・議員が後を断たず、腹立たしいことだ(係り: それを実行したイギリスは ―― 植民地を失った今、路頭に迷っている ―― 日本は植民地を持たないから 彼らの解決法の真似はできない)。

声9: 自然淘汰を認めない現代人類の不自然な問題、それが 「年金」 だと思う; 老人にとっての 「年金」 とは、イザという時の保険程度で済めば理想的だが、ふだんの生活を維持するのに年金に依存するとは 「保険の道理」 に合わない のではないか?(係り:保険」 とは元来 「偶然的に発生する事柄によって生じる経済上の不安に対処するためのもの」 である ―― しかるに 介護保険とか年金保険というものは 「必ず訪れる運命に対応する貯金」 であり、それは 「保険ではなく 政策 or 税」 で賄う性質のものであろう。 大声で言いたくはないが、年寄りは 有益な生命進化とは無縁で、淘汰されて行くのが 自然な流れであり、その淘汰を防ぐための 「年金」 なら、それは 「福祉の誤用」 ではないだろうか?)。

参考: 3) 新谷:健康寿命とは? 福祉における安全管理 #467, 2014.
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ふじひろパール

Author:ふじひろパール
「ふじ」=新谷冨士雄
「ひろ」=新谷弘子

社会福祉法人 パール
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