(481) ピンピンコロリ の 現実

(481) ピンピンコロリ の 現実 

がんらい体質的に長命な日本人、このところ 介護保険の活躍により ビックリするほど寿命が延びて来た

♣ 特別養護老人ホームでお年寄りを観察すると、ご利用者が亡くなる気配を トント 感じない ―― つまり介護が必要で ご不自由な体でありながらも ご長命なのである。この実態に慣れている職員たちは熱心な介護活動を続けているが、一般の国民の声は やや白けていて、こんな調子だ:―― 時々テレビで 「介護施設」 に入居している同年代の人を見ると、自分の将来の姿を見せられる様な気がして 「く ら~い気持ち」 になる. . . 先行き、私自身も介護を受ける身なのだと思うと、世話をしてくれる筈の家族が不憫だ ―― 願わくは 「ピンコロ」 で誰の厄介にもならずに目出度く生涯を終えたい と、普段から念じている 1)

♣ 人の意見を聞く機会があれば、ほぼ誰もがピンコロを切望 し、だらだらと長い病弱な老後生活を毛嫌いする気持ち で一致する。では ここで そもそもの始りから検討してみよう。日本では毎年 約100万人 が生まれ 100万人 が死んで行くが、主な死因別の頻度を 「図」 に示した。この図の中で、人気度の高い 「ピンコロ」 は何処にあるか? よく眺めて欲しい : ピンコロで死ねる可能性がある領域は心疾患・不慮の事故・自殺」 しかない ! そこでピンコロを解説する。
ピンピンコロリ の 現実

♣ ピンコロを医学的に言えば 「突然死」 である -― 突然とは 「瞬時 ~ 1時間 ~ 1日 ~ 1週間」 程度のバラツキがある用語であり、時間の短さを問題にするよりも 周辺の対応力の “慌ただしさ” で判定されることが多い。突然死の頻度は およそ全死亡の 5% 程度と推定されるが、高齢者では非常に少ない。その主な疾患は:――

♣ 循環器疾患: 〇 急性心筋梗塞 ―― これが諸外国ともに主力、ただし初回発作の場合は救命できることが多く、発作が度重なると頓死する。50歳 ~ 70歳 の男性に頻発、しかし パールでは 16年間 でゼロ ! 〇 弁膜狭窄症 ―― ふだんは元気だが頓死の危険がある。 〇 心筋症 ―― 多くは元気、しかし運動中の急死は人目を引く . . . 高円宮 ( たかまどのみや ) の場合は日本中にショックが走った。 〇 大動脈破裂 ―― 心臓に繋がる大動脈、これが動脈硬化を起こし 動脈瘤になり、無自覚のうちに突然破裂、この場合は 言葉通りの瞬間死 となる。パールでは 16年間 に 2例 の破裂があったが、本人は痛くも痒くもなかった ; だが 周辺は大恐慌 で とても “理想的な死” とは言えなかった。 〇 重症不整脈 ―― 心室細動 ・ 無収縮 などが発生、近年は ICD (植込み型除細動器)の普及により助かる例が増えた。

脳疾患 脳外傷でない限り急死はない ―― 脳出血例の 元総理・佐藤栄作氏 は出血後 1週間 で亡くなった。近年 圧倒的に増えた脳梗塞の場合、初回発作の急死は稀で、筋麻痺・認知症の合併で 10年 ~ 20年 の老衰経過をみることが多い。

入浴中死 : これが案外に増え、年間 2万例 を越す。くつろいで入浴中に 不整脈・失神 → 発見時には溺死 という流れで、熟年男性がほとんどである ~ 油断ならない。

♣ その他 : 名前が恐ろしいが 「ポックリ病」 ―― これは 30歳前後 の男性が夜中に突然死するもの;子供の急性呼吸停止;喘息発作で死ぬ例など。

♣ 慢性病で突然死 : 施設のみならず病院でさえ、朝 訪室してみると死亡を発見という例は まま ある。原因は 不整脈 ・ 窒息 ・ 血液疾患 などが想定されるが、その原因特定は難渋する。

♣ 以上とは逆に、 ピンコロになれない状態 を列記すると : ガン ・ 認知症 ・ 脳卒中 ・ 骨折 ・ 肺疾患 などがあり、超高齢者に限って言えばほとんど ピンコロは不可能 とも言える。高齢者は 「 老衰 ・ 天寿死 ・ 平穏死 」 でこの世を去るのが通例であり、じわりじわり逝くので 「ジワコロ」 とか、「ネンコロ」 などとも呼ばれる。

♣ よく報告される 「一人暮らしの孤立死」 、これはピンコロかどうか判定できない。死亡推定が 1日 から 1週間前後 までの場合は、考えようによって ピンコロと同じショック が 仲間には走る。これは ’ガン死’ の場合でも言えることであり、多くの肺ガン死は数年の経過が普通だが、中には 元気であったのに 肺ガンの発見から 1週間後 に死亡という例 もあり、後者は ガンでありながら ピンコロと言えるかも知れない。

結論:  ① 一般の 死亡例のうち ピンコロ死に繋がる疾患は、圧倒的に “循環器疾患” である。しかし多くの循環器の患者は 70歳台 以下で亡くなってしまうので、介護施設での超高齢ピンコロ死は稀である。② 老後の 長期にわたる 寝たきり生活を垣間見ると、自分の場合は ピンコロ死を望む、と言う人は少なくないが、それは 狙ってなれるものではなく 、時の運 なのであり、あなたが もし老人であれば、ピンコロのチャンスはまず無い と言える。③ 人の逝き様は、想像するほど哀れでは決してない 2) ―― 佛様はうまく按配されており、寄る年波の 「認知症」 によって不安と恐怖は取り除かれている のである。④ 特養の16年間の臨床で、「私しゃ 逝きたくない ! 」と言う声は ただの一度でさえ聞くことはなかった ! 

  参考: 1) 新谷冨士雄・弘子: PPK は望ましいのか?、福祉における 安全管理 #72, 2009. 2)  新谷:長生き と ピンコロ談義、ibido #425, 2013.

  職員の声

 声1: 私の母はピンコロを切望しているが、同時に 病院通いにも 熱心だ(係り: “人間、これ、矛盾するもの” のサンプルだし、微笑ましい)。

声2: 本当にピンコロを望むのなら 70歳以下の若い時分に望むべし、老齢でそれを望むのは 「宝くじ当選願望」 と同じで、もし当たっても死ぬ訳だから 全くつまらない(係り: 70歳代 のご婦人は まだお化粧に未練がある、まして普通 逝くことなんか 眼中にはない)。

声3: 私は女性の平均年齢の 86歳 まで生きたい、そこまで生きると もう 「じわコロ」 しかないのか? 長生きの上 ピンコロというのはないのか?(係り: すごく 稀だが ある ! パール 16年間 で 80歳代 の大動脈破裂が 2例 . . . 本人はピンコロで苦しみはないが、周りの迷惑は大変なもの)。

声4: ご家族は口を揃えて こうおっしゃる . . .“ どんなに惨めな姿であっても 親は長がー く 生きていて欲しい ; しかし 自分の場合は ピンコロで さっさと 楽に死にたい” ―― それって 自分勝手過ぎないか? (係り: 君のお子さんも 君の長がー い 「じわコロ人生」 を希望するかも よ ―― このことは 日本の伝統 らしいぞ ! )。

声5: ピンコロを希望する人の心得は、① 心臓病などの生活習慣病になるよう乱れた生活を心がける; ② 医療とのご縁を断つ; ③ 早々と認知症になる(係り: その際 不衛生にすると結核などの長患いになるよ ! )。

声6: ピンコロは ‘準備なしの死’ だから他人迷惑だ、他方 「安楽死」 なら万全の準備ができているし、ヒトは自分の死を選ぶ権利もあるハズ(係り: 安楽死は医師の処方箋による 「殺人」 であるから、医師を殺人犯としない旨の法律が必要となる)。

声7: 私の短い経験ながら、逝去で一番 大事なものは 「本人」 ではなく、「家族の覚悟」 であることを しみじみと感じている(係り: 日本は治療方針も ご逝去パターンも 本人より家族の発言通りになるので、世界的に有名だーーその家族は、上記の 声4 のように、ピンコロ大反対だ ! )。

声8: 認知症は将来のことが分からないのか? 係り: もし分かれば、その人は認知症ではない ! )。

声9: 死の恐怖から人を救うために 神様は認知症を作ったのかも知れない(係り: 動物一般は、子を産まなくなったら逝く宿命が当たり前である; ヒトの遺伝子の有効期間は 50歳用 であって、神様はその保証期間を過ぎた人の運命には関心を持たれず、死に様は本人任せのようだね)。
プロフィール

ふじひろパール

Author:ふじひろパール
「ふじ」=新谷冨士雄
「ひろ」=新谷弘子

社会福祉法人 パール
安全管理 ふじひろのページ

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