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(485) 酸素 の 常識

  (485)  酸素 の 常識

 体育や医療・介護で酸素の重要性は ご存知の通りであるが、皆さん方は 今ひとつ 常識を増やしては いかがか?

♣ 我々は大気 (空気) に包まれて生きていることをだれも知っているし、空気の内 20% は酸素であることを当たり前の事と思っている (残る 80% は窒素)。だが、その酸素は 46億年 前の地球の始まりの時には存在しなかった。実際 地球の周りの天体には 気体の酸素はどこにも見当たらない !

♣ 地球の始まりに酸素が無かったら 生物はどうして生きていたのか?とあなたは尋ねる。その生物は今でもあなたの傍に生きていて、「嫌気性菌」 と呼ばれる ―― 多くのの病原菌やお酒を作る酵母などであり、これらは酸素のない環境でよく育つ。このうち 「ストロマトライト」 という植物は非常にたくましく繁殖した。彼らは 大気中の 95% もあった 炭酸ガスと水 から植物体をこしらえ、不必要になった老廃物を 「酸素ガス」 として排出した。この現象は今でも植物すべてで行われている。でご覧のように、地球の大気に酸素が加わり始めたのは約 28億年 前、その酸素が徐々に貯まって大気の約 20% に達し、それを吸って元気に活動できようになった脊椎動物は 5億年 前に地球に現れた新参者に過ぎない。
酸素の常識

♣ 植物は炭酸ガスを主食として摂取し 酸素を老廃物として排出するが、我々はその逆をする ―― つまり、我々は植物の排泄物である酸素のお陰で命を得ているが、植物は我々の呼吸で排泄する炭酸ガスを摂取して生育するのだ――我々と植物は相補い合って生存しているのだ。今 酸素は空中の 20% も溜まったのに、 95% もあった炭酸ガスは 0.04% に減ってしまった ―― 植物が炭酸ガズを摂取し石炭や石油にして地中に埋めてしまったからだ。我々は石油・石炭を掘り起こし、空中の酸素と結合させ(燃焼)、炭酸ガスを空中に排出しながらエネルギーを貰っている。その炭酸ガスは また植物に利用されている。それほどに 酸素と炭酸ガスは密接な出納 ( すいとう ) 関係にある。もちろん人の呼吸は、体内栄養の燃焼結果であるから、モロにこの関係の中で理解しなければならない。

♣ 人間は絶えず酸素を必要としているが、どの程度 「息こらえ」 ができるだろう?海女( あま )は海の中を数分以上潜って貝をとっているのが、その辺が最長時間ではないか。人は酸素を休まず吸いこみ、体内で栄養物を酸化してエネルギーを獲得し、老廃物として炭酸ガスを出す(体内燃焼)。酸素の補給が途絶えたら 人は酸欠で窒息死する。酸素がそんなに大事なものなら、いっそのこと 100% の酸素の中で生きたらすごく良いのではないか?

♣ それを実際に行った事例がある。1967年 、アメリカの月探査機 ロケット・アポロ1号 は機内に宇宙飛行士の呼吸用に 100% の酸素を積み込んだ。そのロケットは発射前に大爆発を起こして、粉々に散った。また東大病院では、脳卒中の患者さん を100% 酸素の部屋に案内して麻痺した筋肉がよく動くための訓練を観察していたが、こちらも大爆発を起こして関係者は全員焼死した。つまり濃厚な酸素は大変 危険なのである。

1960年 代には、「酸素テント」 というものが一時流行した ―― これはベットの上半分を透明なビニールテントで覆い、その中に酸素を放出して呼吸を楽にしようとする治療法である。しかし空中の酸素濃度と患者さんの体内酸素の関係が測定出来ず、高い経費の割に効果も不明なため、やがて廃れてしまった。1970年 代、未熟新生児の呼吸ケアのために高濃度の酸素を用いられたが、副作用として神経障害が多発し、これも中止された。

♣ ところが、1974年 には日本の誇りである “大発明” がなされた !! その年、日本光電の 青柳卓雄博士 は 生体の酸素濃度を容易に測定できる 「パルス・オキシメタ」 を発明、その臨床的有用性に世界はタマゲタ のである。ちょうど心電計が臨床に応用され始めた 1950年 時代の興奮と同じように、パルス・オキシメタは世界中に受け入れられて広がった。これにより恩恵を受けたのは 「麻酔・手術関係、呼吸器・循環器科の医療」 さらに幅広い 在宅酸素療法 の患者さん方である。

♣ その要点を抜粋すると:―― ① 天然の空中酸素は 大気全体の 20% であるから、病気による ‘低酸素状態’ を補う酸素も、天然状態の 20% より少々濃ければ良い のであって、30% を越える高濃度では酸素中毒の欠点が現れる;② 高濃度酸素は肺組織で酸素中毒を発生させ → 肺細胞障害 → 無気肺 → 肺炎に至る; ③ 酸素欠乏を修正して 不用意に脳を楽にすれば呼吸数が減り、体内に炭酸ガスが蓄積、アシドーシス(酸血症)を招き、病状悪化に至る; ④ さらに高濃度の酸素は火災を招く。 

結論: 酸素のお陰で人は生命のエネルギーを得ているが、その不足は窒息へ、その過剰は中毒へ繋がる。私たちは 大気のうち 20% の酸素濃度の中で暮らしており、臨時に酸欠療法を利用するときは、せいぜい 30% ~40% (空中酸素濃度の 2倍 弱)の酸素を目標とすべきである。それは 鼻カニューレ酸素で 毎分 1~5 リットル 以内で達成され、オキシメタ表示で 90% 前後に調節することが望ましい。

職員の声

声1: 植物の酸素あっての動物なのか、と感慨深い ―― 無から発生した植物を食糧として食べている人間、その上 呼吸の酸素さえも植物に依存しているのか?(係り: 我々は植物に感謝しなければ、ね)。

声2: 酸素が爆発するものだという危険の認識が不足だった理由は何だろう?(係り: 正しく言えば、酸素は爆発しない、単に可燃物を酸化燃焼させるだけだ; しかし酸素濃度が高い場合、その燃焼速度が急激なので、たとえば赤熱した鉄釘を 100% 酸素にさらすと、爆発的に燃え上がる ―― 爆発するのは酸素ではなく 釘のほうだ)。

声3: 私は お年寄りにナゼ酸素吸入が必要なのか を考えたことがなかった; 酸素が濃厚になると ロケットや部屋が爆発するなんて知らなかった。

声4: 人間は地上に酸素が 20% も溜まった大気の中で生まれ育ったのだ ―― 肺は 20% 酸素に適応してきた のであり、それを越える高濃度の酸素療法を試みても 「酸素中毒」 の危険が発生するだけで、治療効果は期待薄だ、と知った。

声5: パルス・オキシメタが日本の発明・製品であることを知り、誇りに思う(係り: 世界中、数 測り知れないほどの多くの人の命を救ってきた)。

声6: 呼吸困難のお年寄りを見れば 酸素をタップリあげたいと思うが、酸素を濃くすると かえって危険であることを学んだ。

声7: だから 水中ダイビングで使う酸素も普通の圧搾空気 であり(酸素 20% 、窒素 80% )、中毒の危険が防止されているのか(係り: 水中使用の場合、高圧空気であれば ‘ケイソン病’ の対策も必要となる)。

声8: 「医療から逃げないケアマネ」 という本を読み、過剰酸素の吸入に無関心であってはいけない ことを学んだ。

声9: 酸素に限らず、物事には 「ちょうど良い」 というレベル がある ―― 酸素だから沢山あげても良いだろう、と思ってはいけない(係り: ナゼか酸素だけは、家庭療法に入ると ‘多いほど良い’ に化けてしまう ―― 食事も運動も 「少なくてはダメ、多すぎてはもっとダメ ! ちょうど良い所を探せ」 という “ルーの法則” がある)。
 
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ふじひろパール

Author:ふじひろパール
「ふじ」=新谷冨士雄
「ひろ」=新谷弘子

社会福祉法人 パール
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