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(489) 体格指数 (BMI ) ≒ 12 は「天寿の指標」

(489) 体格指数 (BM I)≒ 12 は 「天寿の指標」

パールでは すでに 2010年 、体格指数 Body Mass Index、以後 BM I と略記) が 高齢者の栄養管理面で非常に役立つ指数であることを発表した1)

♣ 元来、BM I は肥満度を表す良い指標 2) として 昔のブローカ指数にとって代った経緯があり、近年では全世界的に BM I が採用されている指数でもある。BM I の利用上の特徴は、人の肥満度が高まるにつれ 死亡リスクも高まる ことが明瞭になる点であろう。

図1 で示されるように、BM I が 20 ~ 25 の間にあれば死亡率は最低 であり、それを越えるにつれ死亡率が著しく増大する有様が観察される。ところが、従来 低いBM I単に 「痩せ」 の指標とされるだけで、それ以上の意義は見逃されていたが、パールでの成績は BM I ≒ 12 の所見が 「命の終わりの指標 となることを明らかにした。

図2 をご覧あれ 2) 。これは漫画であるが、船が難破して孤島で一人だけ助かると、人は饑餓に襲われ ハゲタカ の餌にされるのは遠からざる将来であろう。つまり、人は肥満による病気で命を失うだけでなく、栄養不足によっても寿命が縮まるのは歴然である。そこで筆者たちは、BM I の知見が パールの特養入所ご利用者の栄養管理に役立つかどうかを検討した。必要なことは ① 入所時に必ず身長を測る こと、② 毎月一回 入浴時の体重を測定するプロトコールを厳守すること; この 2点 だけである。
体格指数(BMI) ≒ 12は 「天寿の指標」
♣ 別頁に添付した 図3 で 10年 を越す経過の成績を見てみよう。症例 A 94歳 女性、元来 肥満で右麻痺の婦人、オヤツ過食の習慣があり、その矯正によって 5年 後に安定したBM I が達成できた。今だに肥満域にあるが、BM I は揺らぎながらもほぼ水平である(アルブミン 3.1g/dl) ―― 食生活も 今だに安定な例である。

症例 B90歳 女性、認知症があるものの 「謡い」 が得意で、10年間 の最後まで BM I 22 の正常レベルを維持し、愛想よく安定した生活を送られた。BM I の揺らぎは ±1 程度で 栄養管理は楽に行えた(アルブミン 3.3g/dl) 。

症例 C94歳 の女性、認知症+COPD、入所時からヤセが目立ち 食が細かったが 意外にもBM I の安定性は抜群で 「優」 の目で観察することができた(アルブミン 3.2g/dl)。彼女の最期は 誤嚥性肺炎 の発症を機に、低いBM I 16 から一挙に 12台 に低下し、衰弱死された。

まとめ : 高齢者のBM I が もし長期にわたって ± 1 程度のバラつきで水平に経過すれば、BM I のレベルに関係なく 高齢者は 「当分 死なない
体格指数(BMI)≒ 12 は「天寿の指標」
図4 は 死亡された 代表的な 3例 を示す。症例 H 95歳 女性、認知症。最初の 6年間 は やや肥満のまま 水平 ・ 安定 に経過、以後 誤嚥’ を 4回 経験 され、その都度 入院、その都度 BM I は低下 (毎年 2.5 BM I の割合)、いったん誤嚥に遭遇すると、栄養の保持は食事介助によっても回復出来ず、5年 の経過の後、BM I ≒ 12 に達したあと亡くなった(アルブミン 誤嚥中 2.9g/dl)。

症例 I 90歳 男性、認知症+左骨頭骨折、車椅子自走もでき、当初からの栄養欠乏も 2年 ほどで かなり回復(BM I 14 → 16 )、そこで 誤嚥 ・ 入院 ・ 一時的な回復(アルブミン 3.9g/dl)、しかしその後 1年余 の経過で亡くなった。体重の低下は毎年 2.5 BM I 、亡くなったのはBM I ≒ 12 に低下した時であった。

症例 J99歳 女性、認知症+左骨頭骨折。安定した経過で 2年 を過ごされたが、いきなり 4 0℃ の発熱を機にBM I が下がり始め(アルブミン 2.7g/dl)、死亡予想の BM I ≒ 12 に達したころ ご家族の希望で胃瘻をつけたが、1年 の経過で亡くなった . . . BM I は最低値 11 にまで低下した。

まとめ: 高齢の死亡例であっても、臨床像が安定な期間の BM I は ほぼ水平であるが、いったん誤嚥が始まると BM I は 毎年 2~3 の割合で低下し、BM I ≒ 12 まで落ち込むと 生命が終わった。この所見は他の多数の死亡例でも確認され、BM I ≒12 は 「天寿の指標」 となることが確かめられた。安定期のBM I レベルが高ければ BM I 12 に落ちるまでの期間は 当然 長く (数年) 、低ければ 当然 短かかった (1~2年)。 アルブミン値はいずれの例でも低かった。

結論: ① BM I は、臨床像が安定していれば 意外に水平な経過を示し当分 死なない )、そのバラツキは ± 1 程度である。② BM I のレベルは 「肥満 ・ 正常 ・ 痩せ」 の 3群 に分けられるが、いずれの場合でも 水平 ・ 安定 である限り 栄養上のトラブルは無く、アルブミン値との相関は見られなかった。③ 超高齢者に付きものの 「誤嚥」 に遭遇 すると、BM I は毎年 2~3 の割合で低下し、BM I ≒ 12 まで落ちると ほぼ死亡に至った。誤嚥の発症から死亡までの期間は、安定期のBM I レベルが高いほど、当然に長くなることが観察された。

  参考: 1) 新谷冨士雄・弘子、体格指数(BM I )から見る生と死の狭間: 老人ケア研究、33: 13 ~ 23、2010. 2) BM I
の求め方: BM I = 体重kg ÷ 身長メートル : 痩せ <18.5, 正常 18.5 ~25, 肥満 > 25。 3) Lieberson, DE: How long can a person survive without food? Scientific American, 3: 104, 2005.


職員の声:

声1: 肥満度(BM I) を 「高・中・低」 と 3群 に分けて観察する時 (図3) 、何年にも亙って水平・ 安定なパターンであれば、どの群も「当分死なない と結論: しかし いったん 「誤嚥」 すると、 { BM Iの減少~回復~再度の誤嚥 } という悪循環の繰り返えしでBM I ≒ 12 に落ち込んで死亡 ―― BM I の経過図から予後の軽重が想定できる と知った(係り: 死に近い、90歳代 の老人であっても、「安定した生命維持」 と 「避けられない死への進展」が BM I の図から読み分けられる)。

声2: 誤嚥で入院すると 痩せて帰所するが、それはナゼか?係り: 病院の治療は点滴中心であるから BM I 低下は避けられない ―― たいていの点滴は 5% ブドウ糖を基礎としており 一本 500cc あたり普通 125 キロカロリー、痩せを防ぐためにはとうてい不足である)。

声3: 私の在宅症例も、誤嚥で入院 ~ いっきに痩せてしまった : ご家族は点滴があるから平気、とおっしゃっていた(係り: 点滴は浸透圧の関係から カロリー補給には向いていない . . . 主に 安定した水分 ・ 薬物投与を目的としている)。

声4: 退院後の誤嚥再発を防ぐための栄養指導が重要だと感じた(係り: 失った体重を素早く回復させようとするとムリが重なり 誤嚥を誘う . . . 体重の回復は “ゆっくりと” を中心にした指導で進めるべきだ)。

声5: 嚥下機能の低下が誤嚥を介してBM I ≒ 12 の天寿に至る . . . なるほど BM I ≒ 12 になって胃瘻をつけることの無意味さが理解できた(係り: 栄養は体の中に押し込めば良い、というものではない;天寿を過ぎた体に栄養を補給しても吸収効果は限られる)。

声6: 症例 H さんを見ると、せっかく やや肥満気味のBM I が 5回 の誤嚥ごとに急な角度で落ち込み、BM I ≒ 12で 逝去された経過を非常に興味深く観察出来た ―― BM I ≒ 12 は まさに 「天寿の指標」 だと思う。

声7: 症例 H. I. J.の比較で、いったん誤嚥が発生すると、BM I のレベルが高い人は 致死レベル 12 に達するまでに長い時間 (ここでは 5年 )を稼ぎ、レベルの低い人は短い期間 (ここでは 2年 )で死に至っている . . . つまり老人は太り気味のほうが長生き出来るのか? 係り: その通りだ。図3 の症例 C さんは 逆に 低い BM I レベル 16 で誤嚥、1年 の経過で亡くなっている)。

声8: BM I のレベルが高い人は誤嚥によっても BM I ≒ 12 に低下するまでの時間が稼げる ―― つまり、「体重は 命の貯金である」 と言えないか? . . . 逆に BM I の低い人の栄養指導には注意が必要だ(係り: なるほど ! 中年までの肥満は心筋梗塞や膵臓ガンなどのメタボ病の誘因となるが、90歳代 になれば 「体重こそ命の貯金」 ですな ! )。

声9: BM I ≒ 12 以下になると死ぬ理由は何? また BM I ≒ 14 ~ 15 のイエローゾーンの場合はどう対処するのか?(係り: BM I ≒ 12 以下になると死ぬ理由は多数あると思われる . . . それは高度の羸痩(るいそう)であり、また 100歳 を越えるとやがて人は死ぬという経験則と同じだろう。 BM I が 14 近辺の人は生命エネルギー枯渇の状態であり、誤嚥一発でアウトになる可能性がある ―― ちなみにBM I ≒ 17 はモデル美女の必須条件として有名である)。
プロフィール

ふじひろパール

Author:ふじひろパール
「ふじ」=新谷冨士雄
「ひろ」=新谷弘子

社会福祉法人 パール
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