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(492) 不 老 長 寿

(492) 不 老 長 寿

パールでは 毎週 火曜の研修会議で “リベラル・アーツ” ( 一般教養 ) の講義がなされる。話題は介護にまつわる 一般教養 が話され、範囲は介護に関する 文科 ・ 理科 のどの分野にも及び、出席職員は研修記録を提出する。

♣ ある時の職員の記録が私の心に残った。それは:―― 介護の目的 は、お年寄りが お元気で末永くお過ごしになることです: 医療は、たった数十年で大きな躍進を遂げて来ましたが、「ヒトの不老不死」 の分野にだけは 踏み込めず にいます . . . 私は 医療がそれに 取り掛かって下さることを切に希望します、と結んであった。そこで 私は まず 「不老不死」 よりも 実現が近そうな 「不老長寿」 について考えてみた。

♣ 現在、死の原因は次の四つ にまとめられる:―― (a):病気 (b:)飢餓( きが ) (c):捕食(戦争) (d):事故。さて、老人問題であるからには、 (a):病気 以外の原因は 解決したものと見られ、(a)だけが問題となる。

♣ そこで (a): 病気の内容を日本人で頻度順に分析 してみると:―― ① ガン心臓病脳卒中 ④ 誤嚥性肺炎、⑤ ヘイフリックの限界 、となる。不老長寿を願うほどの老人だから、① ② ③ は解決済み、難関は ④ と ⑤ であろう。④ の誤嚥性肺炎は ‘老衰’ の別名であり、近年 TV 新聞で見る超長寿の発表死 因は たいてこれである。

♣ そこで、未解決の ⑤ ヘイフリック限界 について説明しよう。レオナルド ・ ヘイフリック は解剖学者の名前、先日のテレビ会見では ご高齢ながら まだお元気で体操をしておられた。彼は人体の細胞が 一生のあいだ 分裂できる回数が 50回程度 であることを観察し、その回数は 遺伝子の末端に位置する テロメア ) が 調節をしていることを突き止めた。テロメアは遺伝子情報を保護する役目をする。人体にある 数十兆 の細胞は、絶えず分裂活動をすることで人間の生命を維持しているが、細胞が分裂する際、テロメア も 分裂一回 ごとに 短くなってしまう。細胞分裂が 50回 程度に達するとテロメアは消耗され、細胞分裂は終わってしまう ―― この “50回” を ヘイフリック限界 という
不老長寿

♣ 一回分裂後の細胞寿命が平均 2年 の場合、ヒトのヘイフリック限界はおよそ 100歳 に相当し、これが その人の寿命となる。ナゼ 50回 でお仕舞になるのかは未解決の問題である。ただし、ヒトの体内に存在する 「 ( みき )細胞、生殖細胞、ガン細胞」 の 3つ に付属するテロメアは短くならない。つまり、長寿希望なら 全身のテロメアの構造を長命型の 「ガン細胞」 に改良すれば長命となる。

♣ しかし全身にある 60兆個 もの細胞を 一個 ずつ改良するのには 時間が掛かる。仮に 一秒に100個 ずつ改良するとしても、全身細胞の改良にはおよそ 1万年以上 掛かり、その達成は期待できない。つまり、ヒトが大人になったあと遺伝子改良することは不可能なのだ。

♣ もし確実に遺伝子改良したいのなら、ヒトがたった 一個 の受精卵であって、母親の体内にいる時なら、一回 の改良操作で完了する。あなたが たった 一個 の受精卵であったその昔、ご両親の同意を得て その卵を顕微鏡の下に置き、どんな魔法を掛ければ改良できるのだろうか?もし失敗して 奇形児 が産まれたら、その責任は誰が取るのだろうか? 第一、まだ あなたがゼロ歳 の時に 200歳 まで生きたいと思うだろうか?

♣ さて、仮に 万事うまく行き、あなたが 100歳 になった時を考えよう。それほどの科学万能の長寿時代になったのだから、あなたの先輩には 130歳 のご両親が、その上には 160歳 の祖父母夫妻が、さらにその上の 190歳 の曽祖父母夫妻がご健在であっても不思議ではない。あなたは 御自分の介護を子や孫にしてもらうつもりだろうが、その前に まず あなたが率先してご先祖の介護をキチンとなさるのが正しい順番 ではないか?

老人とは想定外に “利己的” であって、「自分の介護は若者がしてくれて当然だが、まさか 年取った自分が苦労して 先祖の介護をするなんて ! 」 と身勝手に思うものだ。でも、そうしなければ、190歳 になった曽祖父母の介護を誰が受け持つのか? つまり長生き人生を希望する者は、まず ご自分よりも年配者の介護を率先してなさるのが だ。そして、 その実績が正しく見えてくれば、世の中は 「不老長寿」 の医療を推進する機運に包まれて行くことだろう。もし、50歳 の更年期を過ぎたあと、徒食の長い老年期 だけを求め、社会貢献に無関心な 「不老長寿」 の願いならば、将来の出口はない だろう。

結論: ① 長命の遺伝子改良は、ヒトが 単一細胞 の受精卵期なら 原理的に可能だろうが、闇雲に これを行うと奇形児の危険が大である。② もし それが実現し 誰もが 200歳 の時代になれば、老人は 100歳 になっても 3代 上のご先祖たちの介護に励まねばならないだろう。③ 要するに、そもそも ( らく )して長命達成という願い は “命の基本概念から外れる” と知るべきである。

職員の声
 
声1: 「ヘイフリックの限界」を初めて知った . . . 老人は100歳の長寿になると 親の世話を あと 100年 する必要があるってことに驚いた 係り: 不老長寿の世の中なら それ以外の方法があるだろうか?)。

声2:お元気で長生きしてください」 という挨拶は ‘まやかし’ だったのでしょうか?(係り: 英語でも “ Long live the King ! ” と言うし、まさか ‘病気で早死にしなさい’ という挨拶はないよ)。

声3: 人生 50年 の時代からみれば、現在は不老長寿の時代と言える ―― にも関わらず 老人は納税者に頼って出来もしない願いを立てる(係り: 人の願いは昔から ‘底なし’ なのだ . . . いちいち咎め立てしてもムダ ! )。

声4: 私はあれこれ加工されることのない 定められた 自分の運命を生きたい、それも社会貢献の一つ だと思う(係り: ヘイフリックの限界 が訪れたら、細胞寿命が尽きた訳で、それを 「天寿」 として受け入れるのは幸福な生き方である)。

声5: 老老介護が多い現在なのに、200歳 を 100歳 が介護するともなれば さぞ辛かろう . . . でも楽(らく)して長生きするなんて そもそも 身勝手すぎるしな(係り: 介護保険の目的は 「尊厳と自立」 と謳 (うた)っている; 「 して貰って当たり前」 の介護ではない)。

声6: 「不老長寿」 は老人の強欲 であり、若者たちは尊敬しない(係り: 無為徒食で社会貢献をしない長命は 残念ながら、イソップのキリギリスに例えられる)。

声7: 社会貢献に無関心な不老長寿なら、先行きの出口はあるハズはない係り: 360歳 まで長生きした ‘武内宿禰’ は本当に 大和朝廷 に貢献できたのだろうか?不思議に思う)。

声8: 「不老長寿」 は歴史的に ‘権力者のはかない願い’ だったが、今や ‘庶民老人の願い’ に成り下がった . . . みんなが ‘ベニクラゲ’ のように 細胞再生 して ウヨウヨ ただよって どうするつもりか?(係り: 年寄りが逝かなければ、(地球資源的に) 赤ちゃんが不必要と同じ意味だ; 若夫婦も子無しで同意するのか?)。

声9: 長命達成は “科学の問題” と言うが、とんでもない ! もし老人が逝かなかったら 莫大な福祉予算を捻出する “社会問題” となる(係り: 現行の ‘長寿胃瘻’ は手術代 20万円 ・ 維持費は年間 500万円 、国家負担は 2兆円 、これの二の舞になること必至 ―― 浅はかな結論を急いではならない)。

   参考 新谷冨士雄・弘子、福祉における安全管理  # 477: 人間の長寿願望、2015.

 
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ふじひろパール

Author:ふじひろパール
「ふじ」=新谷冨士雄
「ひろ」=新谷弘子

社会福祉法人 パール
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