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(493) 良質で 効率的な 介護

   (493) 良質 で 効率的な 介護

 行動方針を決める政府や行政上の文章で しばしば 「 良質効率的な 介護という文言 (もんごん) を見かける 1)

♣ 私は その意図 (いと) がよく分からず 戸惑いを感じる。何をもって “良質” と言うのだろう? “良質な介護” と言われると 「ハテ、何だろう?笑顔?手厚さ?スキル?. . . 」 など あれこれ考える。 “効率的な介護” を求められれば 「より多くの処置を短時間でさばく? 一日三回でなく一回の介護で片付ける?」 などと あらぬ事を考える。

♣ 聞いてすぐ その意図が分からない文言に出会ったときには、その文言の反対語に入れ替えてみよう ―― そうすることで大抵の場合は意図が鮮明になる ―― そこから 元の文言の意味を逆に推定することが容易になる。

♣ 例を挙げると: ―― 良質な介護の反対語は ‘悪質な介護’ つまり ‘手抜きした介護’ か? 悪質な介護と言われても、すぐには分からないが、‘手抜き介護’ なら 言わんとすることが分かる。その上 「手抜き」 には 「 軽 ・ 中 ・ 重 」 などがあって、具体性を帯びた表現となり、 “良質な介護” の真意は 「手抜きしない介護」 の事なのだ 、と 頭の中にスットと入る。

♣ 行政者が求める 「良質な介護」 とは それだけではなかろう . . . イヤ、もっと多くの内容: 「十分な教育 ・ 行き届いた経験 ・ それでいて廉価なサービスなど」 の介護を求めるのだろう。しかし、と私は考える . . . ずっと上の立場の人が、これらの 努力の結晶ともいうべき 高度の内容を、上からの目線で 「良質」 という曖昧な文言下の立場の人に 気安く ‘訓示’ して、より良い結果が得られるだろうか? 私の経験を紹介すると; ある高級官僚が知人の入院患者のお見舞いに 病院を訪れた。そこで集めたナース一同に こう訓示を垂れた ―― あの方は私の大事な方だ . . . 「疎漏 (そろう) の無いように努めて欲しい」と。若いナースたちは 後ろの方で 「ソロー」 って何? と不思議がる。その意味を教えられ、憤然とする ―― 「私たちは どなたに対しても “ソロー” な姿勢を取っていません」 と。反発されるような言葉は慎むべきなのだ
良質で効率的な介護
♣ 一般に 「努力による品質」 とその 「対価 または報酬」 は “交換条件” (トレードオフ、trade-off) の関係にある。 「メリット と デメリット」 は 天秤 (てんびん) にかけて判定する必要があるのと同じである。無茶な “精神論” を鼓舞するような訓示は トレードオフ の筋道から逸脱している . . . そんな訓示を持ち出すと むしろ 反発心 が生まれるだろう。

♣ 「効率」 の例も同様に分析すれば 「手抜きしない介護」 が要求されているのだ。サービス活動の場合、「労力と成果の因果関係」 は計測困難だから 決められた時間に決められた介護が終了すれば、100% の効率と言って良いのだろうか?現場の心は 効率 という数字で測ることは困難なのだ。 たとえば、“愛の効率” なんて存在するだろうか? つまり、「介護の効率」 という言葉は現場に “なじまない. . . というか、国はもっと物事を深く洞察 した上での発言をして欲しい気がする。

♣ 老人への処遇は万全に行うべきであるが、学者 2 ) によっては 老人至上主義を 極端に 述べる: ―― 「地域のあらゆる人的 ・ 物的資源を総動員して、地域ぐるみで高齢者を支えるのが介護の最重点課題である」と。そうかも知れないが、福祉は老人福祉だけではない。まず第一に、現在の社会を守っている現役の納税者を過大な税負担で苦しめるべきではない。 第二に、明日の健全な社会を受け継ぐ子供たちの福祉こそが優先するのではないか。余裕を見つけて 三番目に老人福祉に取り掛かるのが筋であろう。老人だけしか目にはいらない 視野狭窄 にならないで欲しい、目を広げて欲しい . . . そうしなければ明日の社会は崩壊してしまう。

♣ 一般に、政策には 「トレードオフ」 というものがあり、「サービスを安くし、その質を高め、アクセスを向上させる」 、こんな結構づくめのすべてを ’同時に達成’ することは不可能である。また サービスする側の効率が良くても、利用者の 「満足」 をどう評価するのかが大きい問題でもある。“要求の多い利用者” の満足を得るのは ひどく骨が折れるのだ。 このことを、“良質で効率的な行政で実行して欲しい” 、と問い返せば 分かって頂けるのではないだろうか? 

結論:  ① 良質な介護とは、教育・経験・心情など 複合的な要素のこもった介護であるが、その実行を精神論で訓示する必要はない。 ② 効率的な介護とは、主に 手抜きしない介護を 時間的に能率良くこなすこと、と心得れば良いようだ。 ③ 現場の介護需要は底知れず深く、それを限られた予算・人手でこなすためには、トレードオフ (交換条件、 または 優先順序) という考えを 時間で調整した介護以外の良い方法はないと思われる。 

参考: 1) 中村秀一:「2015年の高齢者介護」は達成されたか、こくほ随想、# 11, 2015. 2) 山崎 泰彦、地域包括ケアの推進と高齢者医療・国保制度改革:こくほ随想、#11, 2012.

 職員の声

声1: “良質で効率的な介護” と聞けば、ドキッとする ―― こう言う セリフ は現場を理解しないで 「採算」 の事ばかりを考える商人の言葉 . . . 不信感がつのる(係り: ‘介護’ の代わりに別な言葉で入れ替え てみよう ―― 医療 ・ 看護 ・ 政治 ・ 行政 ・ 教育 などに入れ替えても 意味が不明となり、器具 ・ 銀行 などなら意味が通じる ―― つまり ‘効率的な介護’ と発言した人は 介護 = 数字’ とみなしているのだ)。

声2: サ-ビスは目に 「見えない」 ものだから 「質」 のイメージが湧きにくいし、効率を重視すると 心のこもった介護が ‘二の次’ になってしまう(係り: 現場を知らない人は ‘質だの効率だの’ と言って 介護を ‘数字’ とみなし、軽率な言葉遣いで介護者の気持ちを傷つける)。

声3: 良質なケアとは 「その人に合わせたケア、満足して頂けるようなケア」 ではないか . . . マスコミの得意な ‘手厚いケア’ と勘違いしないで欲しい . . . 全援助をすると残存機能が消えてしまうのだ(係り: オンブにダッコ、乳母車、はいけない ―― それが案外に理解されていない)。

声4: もし手を抜かないケアを 所定時間内で実行出来れば素晴らしいことだ ―― でも時間がもっとあれば、思うことは多い(係り: 介護スケジュールは時間との競争である、この現実 ! )。

声5: 介護に 好きなだけのコストをかける訳にはいかないから、サービスを実務的にするためには “トレードオフ = 優先順位” の原則に従い 健康保持のために必須なものから 順次 片付けて行く ―― そのプロセスは ‘手抜きではなく効率的’ であるように 十分 教育されている。

声6: 軽度の ‘生活支援’ へのケア内容は個人差が大きくて 満足度も人による差が大きい係り: 重度のケアなら ケアの内容は決まってくるが、軽症の場合のケアは ‘人使い’ が荒く、お気に召して頂くのも その人次第だ)。

声7: テキストに出ていた説明の絵のように、天秤(バランス)一方に メリッ ト・ 他方にデメリット ―― つまり介護は ‘やりすぎて本人の能力を失わせてはいけない’ 、 逆に ‘やり残してしまう’ のも介護の品質が落ちる ―― 私たちは 常に リスク と リターン を按配 するように教育されている。

声8: ① 良質な介護を、などの精神論の訓示はムダである ―― ‘介護’ は 好きでなければ できない; ② 効率的な介護を、と注文されても、介護される側の満足を慮ることも配慮せねばならない; ③ サービスは トレードオフ」 の原則が大切で、理想項目を 並べ立てるだけで 現場を知らない人の訓示は役に立たない

プロフィール

ふじひろパール

Author:ふじひろパール
「ふじ」=新谷冨士雄
「ひろ」=新谷弘子

社会福祉法人 パール
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