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(498) 平均寿命 と 統計応用

(498) 平均寿命 と 統計応用

平均寿命 1) とは よく耳にする言葉だが、皆さん方は たぶん その正確な意味をご存知ないと思う。

♣ 普通の ‘平均値’ の理解なら、学校で 国語試験の平均値は 82点 だった、というような平均値は ‘足して割る算術平均値’ である。平均寿命の計算も その方法で行っても間違いではないが、人の死亡時の年齢分布は 図 左 で見るように、ピークが右寄りの ‘非対称’ であって、算術平均になじむ 対称的な ‘正規分布’ ではない。その特徴は、40歳 ころの若い年齢層で死亡例が増え始め、80歳 に向けて ピーク値 に達し、その後 15年 ほどの短時の内に 急な傾斜でゼロになる。したがって ピーク値 の年齢を死亡時の平均値とみなすのは早合点である。
平均寿命と統計応用

♣ これを補正するために、図 右 のような方法が取られるので、これを説明する。 年齢 ( 横軸 ) と生存数 ( 縦軸 ) の関係で、人口は出生時に100% ( 左上 )である。年齢が進むにつれ、病気や事故などで人口は間引かれて行くから、ゆるい曲線で人口は減っていく ( 図 の ① )。ところが ある年齢を越えると 急に減り始める( 図 の ② ) ―― この場合は病気や事故が原因というよりも 「天寿」 が訪れるからである。最後には人 口ゼロ に落ち着く( 図 の 右下 )。

♣ この考えで行けば、① と ② の面積が等しくなるような年齢が 「平均年齢」 であり、2014年 における日本女性の場合、この年齢は 86歳 と計算された。つまり、もし あなたの母上が 86歳 であったとすると、同年配の人たちのうち 既に半数が死亡、残る半数が生存、という事実が示され、「平均寿命」 という言葉の本来の意義が明瞭となる。

♣ 図 左 を もう一度 見直すと、ヒトの死亡は 40歳 ころまでは少なく、それ以後 ゆっくり増え、60歳 を越えると急峻な角度で上昇してピークに達している。このことは、ヒトの死亡原因が 「 40歳 頃からは ‘感染症 ・ 生活習慣病など’ であり、60歳 頃からは ‘ガン ・ 心 ・ 脳 ’ などの病気が多く、80歳 を越えると‘天寿’」 による事実とよく一致している。

♣ さらに観察すれば、もっと深い病気予防上の意味を探ることができる。‘感染症 ・ 生活習慣病 ’ は若い人たちの命を奪う ――そのことを理解すれば 40歳代 の早期死亡を防ぐことに繋がる。60歳代 の死亡は ‘後期の’ 生活習慣病の現れであり、“ 酒 ・ 煙草 ・ 多食 ・ 肥満 ・ 多忙 ・ 多遊 . . . ” の結果であることが よく知られている。がんらい 生命は 「生まれ ・ 食い ・ 育ち ・増え ・ 逝く 」 のサイクルを繰り返す動物であるから、‘更年期性の天然死‘ と前記の悪習慣の結果とが重なり合って この時期の死亡頻度が増えるのであろう。

♣ さて、人生最後の 90歳 以後の寿命のカーブの特徴は 15年程度 の短い期間で ヒトはアッというまに終わっている。この原因は もちろん外因 ( 事故 ・ 病気など )にもよるが、主に カーブ ・ パターン によって 「内因性の天寿」 によるものと推察される。

♣ どんな動物にも天寿は存在し、ネスミ 3年 ・ 象50年 というようなものだ。ヒトは知恵との相互作用の故に天寿が不明瞭だったが、統計応用である程度の類推は可能となる。図 下 を参照されたい。これは 男女の身長の度数分布の一例であるが 2) 、男女ともに 「正規分布」 を示す。ヒトから得られる計測値の多くは このように “正規分布” をする。そこで算出される “「変動係数」 は 色々の推計に利用される ―― その応用の一つが 教育用の 「偏差値」 である。復習する: ―― 偏差値 50 は平均値と一致、偏差値 60 は 中心から ‘ 1偏差 ( 1σと記す )’ 上方に、偏差値7 0 は ‘2偏差’ 上方にある ―― 君たち、覚えているね)。これを図の面積で言うと、±1σ の 範囲は 68% を、±2σ は 95% を占め、後者は観察内容のほぼ全域の代表値である。
平均寿命と統計応用

♣ 頭記の 「死亡年齢の頻度図」 は ‘正規分布’ を示さなかったが、80歳 代以降のカーブの右半分には正規分布の形跡が認められる。そこで変動係数を、平均寿命 (86歳) の 10% とみなして計算すれば 2)  、女性の死亡年齢範囲は 86±17.2 、実数でいえば 68~103歳 で代表されることになり、これは身の回りの経験と 大変よく一致する。パールの特養でも 108歳 の例外はあるが、女性といえども一番多い長寿の限界は 104歳 であったから、これはヒトの天寿の推定上、非常に興味深いものとなる。 

結論: ヒトの死亡時年齢は正規分布を示さないので、「平均年齢」 とは ‘死亡数と残存生存数’ が等しくなるような操作で算出した年齢のことである。 死亡のパターンには、40歳代 ~ ・ 60歳代~ ・ 80歳代~ の三つ があり、その裏には特徴ある原因疾患が内在している。 女性死亡の頻繁な範囲は 68歳 ~1 03歳 であることが推計された。1951字

参考: 1) 平均寿命 = The average life expectancy, つまり‘人生の後ろ半分’のスタート・ラインの年齢のこと――死んだ人たちの年齢の算数平均値ではない。 2) 新谷冨士雄:「図説・色素希釈法」、p59 基礎統計、南山道、1986.

職員の声

声1: 分かりやすい計算法だった: ―― 女性の平均寿命が 86歳 、変動係数 を 10 % とすれば 寿命 ± 2シグマ は 86 ± 17.2歳 ( 68 ~ 103歳 ) となり、死亡原因も、40歳~、60歳~、80歳~で 歴然と異なる有様がよく分かった。

声2: 年齢別死亡数のグラフと その年齢別に多い死亡原因とがよく相関している統計グラフを見ると、分析ツールの有効性がよく分かり 興味深い(係り: 死亡ピーク頻度が図の右へ 4 / 5 ほどずれていることは当然すぎて 見逃しやすい)。

声3: 40歳~、60歳~、80歳~で 死亡原因が異なるのがよく分かり 私がその年頃になったら気を付けたいと思う(係り: 気を付けるのは “ただ一つだけ” = それは生活習慣病であり、タバコの場合なら 気が付いた その日から工夫すれば それなりに有効である)。

声4: 長生きしたい人は 魔の生活習慣病 を認識すべきだ : しかし天寿まで生きるためには 「良き遺伝子」 に恵まれねばならない(係り: 長生きの 4 大条件 は:―― 親 ・ 生活習慣病 ・ 過剰スポーツ ・ 福祉 3) )。

声5: 若い頃に 酒 ・煙草 ・ 多食糖尿 ・ 遊び過ぎて 早々と 60代 で死ねば 医療 ・ 介護費用 が少なくて 国家は楽になるのか?それとも 60代 では死なず 長期間の 重介護費用 で国が滅びるのか?アメリカは肥満症で困っていると聞くが . . .(係り: 戦前 老人は短命で国は楽、今 老人は長命で国は滅びかけ . . . アメリカ人は 自費 ・ 自立 で生きるから 国は困らない)。

声6: 若い時の QOL と寿命は反比例関係にある?(係り: 楽が先、苦が後ということか――羊の群れには デブ もいないが ヤセ もいないし、寿命も等しく ほぼ 15歳 : ヒトの場合は “みんな違って みんな良い” とも言われる)。

声7: 人間、子を産み終えるまでを遺伝子がその人を守ってくれる . . . 若い時代の生活習慣病が中年の早過ぎる死亡を好んで招く . . ドキリ と する表現だ(係り: 一回だけの人生、太く 短く 好きに やりますワイ . . . 現実には、細く 長く 人様に迷惑をかけてやりますワイ、が大多数 ! )。

声8: 昔は 40歳 で ‘老人’ 、今は WHO が 65歳 でやっと ‘老人’ と呼ぶ ―― しかし 65歳 の人を ‘老人’ と呼べば ムッとする老人 が多い : 「無病」 とは “老人でありながら 病気を卒業した平和な時期” を言う 4)

声9: 自分だけが長生きして 同世代の仲間が死んで行ったら 不安にならないだろうか?(係り: 二千年 も前、初代の ローマ皇帝 ・ アウグストゥス は 40歳 の頃 仲間が皆 逝った ; 80歳 になると その孫たちも逝った、と心の寂しさを書き記している)。

  参考: 3) 新谷冨士雄・弘子、「長生きの秘訣」、福祉における安全管理 # 428, 2013. 4)  新谷、「出世魚と人生――その2」、ibido #505, 2015.
プロフィール

ふじひろパール

Author:ふじひろパール
「ふじ」=新谷冨士雄
「ひろ」=新谷弘子

社会福祉法人 パール
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