FC2ブログ

(554) 「寝たきり老人」 を 無くす ?

   (554) 「寝 た き り 老 人」 を 無 く す ?

「寝たきり老人を無くす」 って、言葉 そのもの意味からみれば、日本では 太古の昔から言い古された 願い であり、現在においても 何ら反対する意見はあるまい。しかし介護保険時代の今、「寝たきり」 の意味を キチン と 理解する必要があるだろう。

♣ 昔の 「寝たきり」 は 老人が慢性病のために 寝床生活を余儀なくされた状態であった。ところが 介護保険の現代、「寝たきり」 の意味が拡大解釈され、要介護 4 ( 屋内の生活は何らかの介助を要し、日中もベット上での生活が主体であるが、座位を保てる… つまり車椅子の生活 = chair - ridden )、並びに 要介護 5 ( 一日中ベットの上で過ごし、排泄・食事・着替え において介助を要する… つまり 寝床の生活 = bed - ridden )が対象とされている。

♣ しかし 介護の知識と技術が進歩した今、ベット生活の人であっても、できるだけ座位を保ち 仲間の中でテレビを見たり 話したりすることが推奨されていて、要介護 4 と 5 の境目が判然 (はんぜん) としなくなった。したがって 要介護 4 , 5 の両方を 「無くす」 という仕事は大変なことである。

♣ さて、では 日本は ナゼ 「寝たきり大国」 になったのか? 幾つかの原因が述べられているが:―― 
「寝たきり老人」を無くす?
長期入院 : ―― 「 オンブに抱っこ ・ 乳母車」 を好む国民性 : 西洋では 「虫垂炎」 の入院は 「1日」 、お産は 「2日」 、骨折 なら すぐ リハ を始める。日本では 「40年 にも及ぶ 入院生活 」 は稀ならず報告され、パールでも お一人 16年 の入所滞在がある。

② 三大延命処置 : 「胃瘻・人工呼吸・透析」 が挙げられている。これらは日本の伝統 … 欧米では まず有り得ない現象だ。

③ 延命虐待 : 一般に延命処置が好まれるお国柄であるが、実態は 「延命虐待」 も少なくない。

④ 食事介助 : これは国民性の相違が主体であろう ―― 私たちがスエーデン視察時に聞いた話 ―― 「職員たちは枕元にパンとスープを置きます… ご自分で食べられなくなったら その時が その方の終わりです」、と。 日本では そんな事は絶対できない。

: 欧米は 「椅子の生活」 であって、それができなくなれば 「人間ではない」 という風潮 ; 他方 日本は 「畳の生活」 であって、床に平たく寝ていても 気にならない ; などなど。

♣ 寝たきりを支える 高度な制度も無縁ではない。日本の 医療・介護の水準 は世界一を誇る。しかし 政治・行政 の 近視眼・無節操ぶり による長期展望の欠如が目立ち、基本的な問題… すなわち 認知症対策に使われる国家予算があまりに膨大で、“自意識 さえ消失した 末期認知症 に、そこまでして ヒト・モノ・カネ を注ぎ込むのが 正しい礼儀なのか” という議論もある。

♣ また “誰を救い、どんな状態をあきらめるのか、それとも、みんな一緒に滅ぶのか”、などの不安への回答はない。政治家は 多数派になった老人に おもねなければ 次回の選挙で落選となるだろう… だから 老人迎合 も ある程度はやむを得まいが、後述の 「進化の目」で 社会の行く末を正しく見つめ 行動して欲しいと思う。

♣ また ‘寝たきり万歳の社会’ は幸せだろうか? 日本の平均寿命は世界一長いが、それは「依存{病気}寿命」が世界一長いからでもある。延命胃瘻の数も 30万 を越え世界一であるが、それは 保健適応 であるからできるのであって、もし 欧州のように 実費の年間 500万円 ~ 900万円 を自己負担するのなら、この 残酷な処置 は存在し得ないであろう。介護にせよ 医療にせよ、無料 ~ 1割負担 という制度は 健全な利用の場合に有効であるが、猫も杓子も 大多数が群がってしまえば 制度は死んでしまう

♣ 北欧では 「寝たきり老人はいない」 と報告される。つまり、要介護 4 、5 に該当する老人が 「いない」 ということだ。私たちが 施設の運営 および 介護保険の認定会議に携わる経験からすると、日本では ‘そんな事 有り得ない ! ’ の一言だ。だって、老衰で他界する場合に、要介護 3 から いきなり 鬼籍 に飛んで行く のであるか?

♣ そうではあるまい。要介護 4, 5 は 介護保険予算のおよそ半分を消費するので、これに相当する重症老人を 彼らは 意図的に ‘作らない’ だけだ。欧州では 「延命胃瘻」 はなし、透析は60歳 定年 ―― 以後の透析は 自己負担 のみ; あるいは 人間の ‘尊厳維持’ のために 食事介助もなし… だから 要介護 4 、5 の発生が抑制されている、などの 「社会的合意」 があってこそ 寝たきり老人ゼロが可能なのであろう。

♣ 生命の歴史を紐解いてみれば、子孫繁栄の道に沿った変化や行動は 「進化」 と 、そうでないものは 「退化」 と呼ばれる 。生命というものは、 「適者生存」 の厳格な試練 の下で今日に至ったのだから、子孫繁栄に寄与することのない 老人の過剰保護 は “人類退化の前兆である” と言っても過言ではなかろう。一般動物では 決して見られない現象なのだ。

♣ 「理」 (ことわり)と 「情」 (なさけ)はバランスが取れたとき、最高の結果が得られる。その意味で、西欧のほうが 「理」 に叶っている。きつい選択にはなるが、夏目漱石の言葉を最期にして 稿を終えよう――: “知に働けば角が立つ; 情に棹(さお)させば流される ; 意地を通せば窮屈だ ; とかく人の世は住みにくい”。2020字  

結論:  ① 北欧諸国で 「寝たきり」 がいないのは、要介護 4, 5 の老人を 意図的に作らない 「理」 (ことわり)があるからであり、それを 意図的に活かす日本の考えのほうに 「情」 (なさけ)がある。 生命の歴史をみれば、子孫繁栄の道に沿わない行動は 「退化の道 」である。 この事を踏まえれば、老人の過剰保護 には 一定の ’歯止め’ があって しかるべきであろう。

  参考: 1 ) 新谷:身体との習性の異常進化:福祉における安全管理 # 508、2015. 2) 新谷:ソロモン大王の介護、ibido # 3, 2010.

職員の声

声1: 北欧では 「枕元にパンとスープを置くだけで 食事介助 をしない …」 、にはビックリだ(係り: 彼の地への視察報告者は たいてい 「欧米には “寝たきり老人” がいない ! 」 と皮相な報告 をするのが常だ ―― その理由が、人間の尊厳を傷つける “食事介助” をせず、要介護 4、5 を意図的に設けないでいるからだ、と 分析的な報告 をしていない)。

声2: 高齢者の殆どは 「早く死にたい; 長く生きて迷惑を掛けたくない」 と言っているのに、介護者は 真反対に 「長生きさせたい」 と願う ―― どっちが本当なのか?(係り: 「死にたい」 と言う人は 大抵 自分で食べられる; 食事介助を受けている人は それさえ言えないほど衰えている)。

声3: 日本は皆保健制度であり、「おんぶに抱っこ ・ 乳母車」 の過剰サービスが当たり前なのだ(係り: ところが 前・総理大臣 の A.T.氏 は 本音 を漏らしていた : 「働きもせず “食っちゃー寝” の “ぐーたら者” の介護費を 何で私たちが払わねばならないのだ?」、と)。

声4: テレビで … 私は、あるライオンの口に、食べた動物の骨が刺さっていたため、食物がとれず、瀕死になっていたのを見た… テレビを撮った人間が 刺さっていた骨を除去してあげたから 生き返ったが、これは人間の間違いだ ! そのライオンは ハイエナ の餌になるべき運命だったのだ(係り: 私もそのテレビを見た; 同意見である)。

声5: 世界一流の日本医学水準が 「寝たきり」 を推進している、と聞けば… 情けないなーの一言(係り: 要介護 4 ・ 5 を削除すれば、明日から 「寝たきり」 がいなくなるが、日本社会は その ‘踏ん切り’ がつかない)。

声6: 日本では想像を絶する 「延命法」 が生きているが、世界はそれを 高く評価しているだろうか?(係り: ソロモン大王は 死に行く時、 裸の乙女達が 自分たちの体温をお移し申し上げたが 2 ) 、お金があったからこそ それが可能 だったのだろう… 日本だって 予算がなきゃ 延命はできない)。

声7: 老人介護には 一定の “歯止め” が必要、とは ‘重い言葉’ である(係り: 政治家の ‘老人迎合’ は 借金頼み だから、その尻拭い役をする若者たちは 活力がない)。

声8: 胃瘻などで延命を控えることは 「殺人」 に等しいと思う; 暴動が起こるかもよ(係り: 延命胃瘻を避けるべき理由は二つ : ① 介護保険の目標は 「尊厳と自立」 の確保であって、それから遠ざかる虐待行為は ‘目標違反’ である ; ② その違反達成のための莫大な経費による社会の疲弊を防ぐため… 欧米は ① ② の理由で延命虐待を禁じている。家族が胃瘻虐待を ’自費で’ やるのなら 取り締まれない)。

声9: 私は介護で働いて 1年 になるが、感じることは、重症介護老人を “意図的につくらない 欧州方式” が魅力的だ ―― 無理な延命をせずに看取るのが 人としての本筋ではないだろうか?(係り: ひと昔まえとは違い、今は システムとして 「寝たきり」 のケアに 幾兆円 もの血税を注ぎ込んでいる; それは 戦前の 「 戦艦 や 爆撃機 」 の予算を はるかに越えており、“社会の活力” を阻む最大の要因である ―― このままでは 日本社会は進化の道から外れ、下手すると 自然淘汰されてしまうかも知れない)。

 
プロフィール

ふじひろパール

Author:ふじひろパール
「ふじ」=新谷冨士雄
「ひろ」=新谷弘子

社会福祉法人 パール
安全管理 ふじひろのページ

最新記事
全ての記事一覧
月別アーカイブ
カテゴリ
リンク
QRコード
QR