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(557) 開 け ゴマ !

(557) Open Sesame !  (オープン・セサミ) 

探検小説・アラビアン ナイトの「アリババと40人の盗賊」では、 頭領が “ Open Sesame ! ” (開け ゴマ !)と唱えると、岩山の宝物倉庫の扉が 重々しく開き、盗賊たちは 盗んで収納した宝物を点検し、新しく盗んだ宝物を収納した。

♣ あなたは この物語を読んだことがあるだろう。しかし これは ファンタジー の世界の話である。“ Open Sesame ! ” とは 岩をも動かす力を持つ 「魔法の呪文」 であり、特に ‘起こりそうもない難しい願い’ を叶えて貰う際に唱える呪文である。

Open sesame ! (開け ゴマ ! )

♣ 科学は、万人の追試に耐え、間違いなく 「因果関係」 が認められるとき、初めて 「まっとうな」 判定を下す。もちろん、もし、追試で異存が生じた場合は、主張を撤退せねばならない。医療の世界では、およそ 25年前 から 「確証に基づく医療」 (Evidence-based Medicine) という ’合い言葉’ が流行し、「確証が無い 信念だけの医療」 は行わないように指導されている。

♣ 確証のある医療の典型例は 150年前 から確立された 「 麻酔薬 ・ 輸血 ・ ペニシリン 」 で曙(あけぼの)を迎えた 1) 。それまでの医療は 「 迷信 ・ 呪文 ・ サンタ 」 の塊(かたまり)であり、必ずしも 「確証」 を得た医療ではなかったのだ。 「サンタ」 とは 「使っ ・ 良かっ ・ 効い」 の 「3-タ 」 のことであり、主観の塊(かたまり)を表し、“私に効いたから、他人にも きっと効くに違いない という表現である。 “ Open Sesame ! ” は ‘盗賊の頭領が唱えたのを真似て アリババ も上手に唱えたから効いた’ のであって、呪文を知らなかった 兄のカシムは どんなに頑張っても 岩戸は閉まらず、殺されてしまったのである。“希望が叶いますように” という呪文も、確証はないけれど、十(とう)のうち 一つ でも願い通りになれば、呪文としての 言い逃れはできるかも知れないが。

♣ 一つの例を示すと:―― “ビタミンC は健康維持のために必須” 、とは正しい表現だが、“美肌” に ‘効く’ ほどの大量のビタミンC は副作用のゆえに使えない。ビタミンC の薬用量は 一日 0.5グラム 程度だが、その結晶を舐めてみると 酸っぱくて舌が痺れそう…. 。ビタミンC不足 は 「壊血病」 を起こすが、その有名さに比べ、現実の壊血病にお目にかかることはまずない。ところが テレビ広告には ビタミンCの話が出ない日はナイ !

Open sesame ! (開け ゴマ ! )

♣ さて さて、ヒトは不思議な存在であり、「プラセボ効果」 と呼ばれる不思議な感覚を所有している。「プラセボ」 とは ラテン語 で “私はあなたを喜ばせます” という意味で、日本語に訳せば 「偽薬」(ぎやく)だ。つまり “本当は効くはずもない薬を ‘効く’ と言って飲めば 本当に ‘効く’ こともある… このことを 「プラセボ効果」 言い、信心深い人ほど よく効く。これは 背信行為か?と言えば あながち そうでもない。人間とは なんとなく “権威に頼る習性” があるからだ。これは 鰯 (いわし)  の頭も信心から 、と言い古されている。自己暗示も他人暗示も効果のうち なのである。

♣ 医療や介護の世界でも、科学的な「因果関係」のある行動が求められるけれど、「確証に基づく科学」 はなかなか 期待通りには進まない。なぜなら、上記のように、ヒトでは 「プラセボ効果」 でオブラート が掛かってしまう上に、高齢者介護には 確証を裏付ける ‘多数実験’ が出来にくいからだ。したがって、声の大きい 権威筋 ・ 製薬会社 ・ お役人 の思いつき次第で “ Open Sesame ! ” の呪文がまかり通る ―― つまり “効能書き” 通りにならない場合、好能書きが悪いのではなく、使った人がヘンなのだ と とられる。

♣ たとえば その筋 ご推奨の 「筋トレ」 : これは “筋肉の廃用萎縮” を防ぐ目的があるのであって、筋肉を鍛える為ではない ―― それを勘違いして 頑張り過ぎると 「ルーの 3法則 」 に違反することになり 2)  、かえって筋肉を傷めることになる。 「脳トレ」 も同じくであって、加齢で 天然減少した脳細胞に 過負担な訓練を試みても、若返ることはない。物事は 「ルーの 3法則 」通りに “ちょうど良くすること” が大切なのだ。

♣ ところで、仕事の場面では、“ Open Sesame ! ” と 思わず叫びたくなることもある。お年寄りの 徘徊 ・ 転倒 ・ 骨折 などの とんでもない事態に遭遇すると、‘ああ どうしよう ! ’ と自分を責める気持ちになる ―― “開け ゴマ! ” と唱えて問題解決の道を考える。でも、こんな場合、‘ホウレンソウ! ! ’ と唱えては どうだろうか? ホウレンソウとは “ 報告 ・ 連絡 ・ 相談 ” をつづめた略語であり、自分の知恵と仲間の判断の結晶を求める行為である。これなら 遥かに “科学的な確証” に基づいた対応と言えるのではなかろうか? 1903字   

結論:    私たちは、できるだけ 「確証のある科学」 の結果に従う訓練をしよう。 「確証のない事態」 に直面したら、心いっぱい “ Open Sesame ! ” を念じるけれど、でも実際には 「ホウレンソウ !」 で物事を解決する習慣をつけては どうだろう?

  参考: 1) 新谷: 病(やまい)の順番; 福祉における安全管理、# 556, 2015. 2) 「ルーの 3 法則」 = 筋肉の運動による効果は、 (1) 過剰な負荷は 筋肉を傷め 疲弊させる、 (2) 過小な負荷は 筋肉を廃用萎縮させる、 (3) ちょうど良い負荷が 筋肉を保護・活性にする。

職員の声

声1: 「アリババと40人の盗賊」から「プラセボ効果」へと話を繋げた筋書きは面白かった――困っときの呪文は結構だが、それに頼って自分で努力することを忘れたのでは困るよ(係り: テレビの広告を見ていると、“大食いしても痩せられる飲料”を買う人たちが多いが、彼らは“開けゴマ ! ”以下の信者ではなかろうか?)。

声2: 薬の効果が案外に “プラセボ効果” であることを学んだ(係り: プラセボ効果が欠如する 「小児」 に効く薬であれば 本当に効くのか? と思いきや、それはダメだという … その子のお母さんに “効くと洗脳” しなければ、子供には効かないと言われる ―― それほど 人間のプラセボ効果とは 複雑怪奇なのである ! )。

声3: 困ったときの解決法は “Open Sesame ! ” のような神頼みではなく、同僚 ・ 上司 との情報共有による行動 ( = ホウレンソウ) が大事となる(係り: 外国人は案外に汚い語句で困った気分を逸らす… くそったれ ! とか コンニャローとか …. そのあと ‘相談’ する)。

声4: 科学的な 「確証」 に わざと反発して 信じない人もいるよ(係り: いる いる ! あなたは そんな人に反発しないでニコニコしていればいいでしょう)。

声5: 「痛いの 痛いの 飛んで行け ! 」 や 「病気は気から」 も “呪文” の一種ですか?(係り: 前者は 「子供との仲良し呪文」 であり、「後者は人の心理」 の部分説明である ―― どっちも大事だ)。

声6: 人間は相手に相談して考えを深めることができる唯一の動物だ ; やはり 主観的な呪文だけでなく、客観的な 「ホウレンソウ ! 」 が大切だと思う(係り: まことに 的 を得た答えであ る ! )。

声7: 「嘘も方便」 という言葉もあり、良い意図で良い効果が得られれば正当化される … 医療を否定しても 宗教なら 「瓢箪(ひょうたん)から駒」と言う事実もある(係り: こうなると、経験の深い ‘お爺さん役の技’ となるね)。

声8: 介護の世界では 「確証」 なんて、昔は考え及ばないことだったが、今では 「根拠」 が求められる時代になった(係り: 昔、人のお世話をする介護の世界は 「愛情 ・ 親切 ・献身」 が主体だったが、今では たとえば 「B.M.I. (体格指数) 」 の振る舞いが問題視されるようになった ―― 老人の食事介助で誤嚥させると B.M.I. がみるみる低下し、やがて死に至ることが判明したのだ 2 ) )。

声9: 私は 「ヒヤリハット」 の報告係りであるが、一言 申し添える ―― 困ったり 失敗したりの “ヒヤリハット報告文” で、自分勝手な呪文 を唱えて 解決したなんて思わないで欲しい(係り: 報告書の定形文句は “以後 気をつける” とか、“失敗から学んだ” などと記載されるが、同じ失敗が何度も繰り返されているのが実情だ ―― 適確な 「ホウレンソウ」 とその実行があるのみなのだ)。

参考: 2 ) 新谷: 誤嚥・B.M.I .と ご逝去; 安全管理 # 555, 2015.
プロフィール

ふじひろパール

Author:ふじひろパール
「ふじ」=新谷冨士雄
「ひろ」=新谷弘子

社会福祉法人 パール
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