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(549) 飲み終わるまで 待ってあげよう

   (549) 飲 み 終 わ る ま で 待って あ げ よう   
   
高齢者の姿、と聞けば、あなたは何を連想するだろうか? 外見的には 「白髪? 顔の皺? それとも猫背?」 。

♣ 天然動物の遺伝子寿命は 「繁殖行為終了」 と共に訪れ、ヒトの場合は約 50歳 前後であったが、最近は それを 2倍 に延長しており、近年の老人問題は この ’法外な延長 ’に潜んでいる。今日の話題は 「誤嚥と食事介助」 であるから、まずは 「嚥下(えんげ)と誤嚥」 からスタートしよう。

♣ 嚥下とは “食物や水分” を飲込むことである。私らは ふだん ‘嚥下’ なんて難しい言葉をお目に掛かることは まずない。せいぜい “お餅による窒息” くらいしか聞いたこともない。だから 嚥下障害に出くわすと、どこが どう故障しているのかが 納得できず、食事介助の ‘コツ’ を教えられても 自分事 と理解することが難しい。

♣ さて、嚥下に関係する喉の 神経は 8種類 ・ 筋肉の種類は 13 もあるという。いずれも目に見える代物ではないから、これらの組織が ‘老化する’ と聞いても現実味を帯びた理解ができない。そこで、目にみえる “筋肉の老化” を見てみると: ―― お年寄りは 多かれ少なかれ 「猫背」 である ―― ナゼか?

♣ 一番 説得性のある答えは 「加齢による筋肉の力は 伸筋 (しんきん) のほうが 屈筋 (くっきん) より早く衰える という事実だ。肘や膝を ’延す力’ は ’曲げる力’ よりも早く衰える。背骨の前後に張り付いている筋肉も同じことで ‘背を延す力’ は早く衰えるから 猫背 に陥る。どの筋肉も歳とともに ポンコツ となるのだ ―― 悔しいことだが当たり前の現実だ !

♣ ここで 分かり切った 「嚥下」 について、あなたが自分の喉で行っている 「飲み込みの儀式」 を 時間経過に従って再現してみよう ―― 図 ①~⑥ を参照 !  食べるときには まず口を閉じる… 口を閉じないで 自分の唾を飲込めるだろうか? … 同時に上下の奥歯を 無意識に噛みしめる … そうしないと顎の固定ができず、ゆらゆらして飲込みにくい ―― 奥歯の無いお年寄りは ここで一歩 損をする。 次に 「ノドチンコ」 のある軟口蓋が上にまくれ返って口と鼻の通路を塞ぎ、食物が鼻の方向に行かず 下に向かう。

飲み終わるまで 待ってあげよう

そこで舌が勢いよく上顎に向かって押し上がり、口腔内の圧力を 一瞬 にして高める。舌や喉の奥のほうが こんなに活躍しているなんて 考えたこともないだろう? その結果、食塊は喉下のほうに押しやられる … 外から喉に手を添えると、それにつれ 喉仏(のどぼとけ)が上下に動くのを触れられる。 反射的に食道が開き、食物は 「喉頭蓋」 (こうとうがい) に触れ、それを押し下げる。

喉頭蓋はいつもは開いて 空気が 鼻 ・ 口 から 肺 に送られているが、食物が触れると それは反射的に気道を塞ぎ、食物を食道のほうへ導く。この閉鎖反射のタイミングは、元気な若者でも 時々遅れることがあり、食物は一部 気道に流れ込む ~~ その結果、激しくムセ込み、 間違って気道に入った食物を吐き出す。老人では神経反射が鈍くなるので、ムセ込みのチャンスは増える傾向があり、それは重大な 「誤嚥」 に繋がる。 食道に運ばれた食物は 蠕動(ぜんどう)によって 胃にたどり着く。

♣ ① から ⑥ までの時間経過は 各ステップが 1 / 10秒 のずれ で 反射的に行われ、この間、息は止まっているが、それを全部済ませると、 「ハー」と息を吐く ! ーー これを実感して頂きたい … ちょうど ビール を飲み干したあと 私どもは 「ハー」 と 無意識に 息をつくが、覚えていたか? 今、唾をゴクリと飲込んで 自分自身を観察して欲しい。 「ハー」 と息を吐いたでしょう? ここが大事だ !

♣ … 食事介助で この 「ハー」 の音をを聞けば、相手は ‘飲込みを完了した’ のである ! これよりも前に 次の食事を押し込んだら、間違いなく 「誤嚥」 を誘発するのだ !! 元気な若者で ① ~ ⑦ は 約1秒 かかるが、食事介助を要する老人の場合は 3 ~ 5 ~ 7秒 も掛かる。食事介助者の心得として、このタイミングのコツを覚え、飲み終わるまで キチンと待ってあげよう 1 )

♣ 老人は 「猫背 、よろよろ アヒル歩き 」 をするが、老人の喉にも よろよろ嚥下 の特徴が現れる。つまり、 の ‘奥歯を噛み締めない’ 、 の ‘喉頭蓋の反射が遅れる’ 、 の 「ハー」 と息を吐くタイミングの遅れる、である。その根本原因は 更年期の寿命 (50歳) が 100歳 まで引き延ばされた 無理な ポンコツ老化 に他ならず、本人の責任ではない。

♣ 将来 人間の寿命はますます延びるかも知れないが、ポンコツ老化の年齢は 五千年前 の エジプト時代 と少しも変わっていない。パールの 「職員の声」 で いみじくも 聞こえた言葉 = 「高齢者の誤嚥は “これ以上 もう食べる力がありません” という老人からの ’訴え’ を告げるメッセージであろう」 が耳に残る。2 )

♣ 参考ながら、北欧では 「食事介助」 をしない ; なぜなら それは “人間の尊厳を傷つける行為” だから 3 ) 、という。1986字  

要約:   食物が口から入って飲み込み完了までの時間経過を 「 7 段階」 に分けて概観した。 「 7 段階目」 終了の 「ハー ! 」 という呼吸音が聞かれた時が ‘嚥下(えんげ)の完了を表す兆候’ であり、次の食事介助を続けてよい合図でもある。 嚥下完了「ハー」の前の食事投与は 「誤嚥」 を誘発する可能性が高い。 

参考:  1 ) 新谷: 食べられぬなら 無理せず: 安全管理、 #40, 2015.。 2 ) 新谷: 「誤嚥」・B.M.I. とご逝去 ( = 荻布); ibido # 555, 2015 。  3 )  食介 = to feed は、餌をあげる、という意味だから。新谷: 「寝 た き り 老 人」 を 無 く す ? ; ibido #554 , 2015.

職員の声

声1: 上記の 七段階 の嚥下状況を理解しないで 食事介助 をしてはいけない ! (係り: 七つ と言わず、せめて ①: 奥歯の噛みしめ、⑤: 喉頭蓋の反射の遅れ、⑦: 嚥下終了の 「ハー ! 」という合図; “この三つ” だけを忘れないように)。

声2: ビールを飲み込み終わった時に 思わず 「ハー ! 」 と息を吐く … 僕も自分がそれをしているのに、このことを聞くまで 気付かなかった(係り: 奥歯を噛みしめた後 飲み終わるまで 息を止めているんだものね、当たり前の現象だよね)。

声3: 人間、進化の段階で 「ハー ! 」 と息を吐く習慣 を獲得したのだろうが、年寄りになっても これを覚えているのだから 不思議なことだ(係り: 二千年前 の 秦の始皇帝も 、五千年前の ラムセス 2 世 も、キチンとこれをやったハズ)。

声4: 歳をとれば、猫背になるし 嚥下機能も衰え、食事時間が 30分 を越えるようになると 本人も介助者も 疲れ果てて 誤嚥 に近づく(係り: 「ハー ! 」 という 飲み込み完了の合図が出なくなったら ヤバイよ ! )。

声5: 時間に追われて 食介を急ぐあまり 「ハー ! 」 の確認をせずに食事を続ければ、誤嚥を誘発だ ! (係り: みんなで気を付け合うように心掛けよう ! )。

声6: デイサービス でもしきりに ムセる方 があり、以後 飲み込みが完了したと思っても、一呼吸 おいてから、食介を続けたいと思う(係り: この方の 体重 を測って、B.M.I. が落ちているかどうか 確認するのが安全だ… 下記の‘声8’を参照)。

声7: 嚥下には多くの筋肉が関与している … 訓練をすれば 上手に ならないか?(係り: アヒル歩き の老人に訓練を施せば、転倒の機会 が増えるだけ … 90歳 の認知症 に 嚥下の訓練が どれほど実用的かな?)。

声8 (特養主任): 誤嚥の予防は困難を極め、正直、私はその効果を疑う ―― 「 誤嚥は天命 ・ 天寿 である」 というのは真実だ、と思う(係り: ヨーロッパで 「食事介助」 をしないのは、「食介誤嚥は 天寿の時期を早めるだけ」 と知っているからだろう ―― 誤嚥をすれば B.M.I.( 体格指数) が みるみるうちに低下し、B.M.I.= 12 に達すれば他界する)。

声9( 厨房主任): 息をしながら嚥下はできず、天を向いたままの嚥下も困難だ ―― 机上の勉強も大事だが、自分自身で 「食べづらい姿勢」 で嚥下を試みてみると 食介の問題点 が浮き彫りになる ! (係り: 現場主任の意見は 本当に 傾聴に値する)。

参考:  新谷: 誤嚥 ・ B.M.I と ご逝去 ; 福祉における安全管理 # 555 , 2015.
プロフィール

ふじひろパール

Author:ふじひろパール
「ふじ」=新谷冨士雄
「ひろ」=新谷弘子

社会福祉法人 パール
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