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(562) 正常って 何?

   (562) 正 常 って 何 ?

今日の論議のために 「正常の定義」 を述べれば: ―― 変わったところや悪いところがなく普通であること ; 正しい状態であるさま (大辞林) 。これの反対語は 「異常」 だ。

♣ 私たちの精神状態は 「正常」 だよね。私たちは 介護の情報提供書で戸惑うことの多い 「正常・異常」 の判断をしっかり行いたい ―― そのために、今日は 「図」 を中心に 「正常とは何か」 を視覚的に理解してもらいたいと思う。

♣ 下の 図 1 は 外来患者 男女 500人 の 「身長分布」 を調べたものである。「緩やかな釣鐘 (つりがね) 型」 をしており、「正規分布」 である。正規分布を確認すれば、それは 「正常・異常」 の判断をすることが許され、最頻値 ± 標準偏差 の範囲を 「正常」 と呼ぶ。この場合、最頻値に線を引くと、男166cm, 女154cm で、二つの曲線は一部重なっているが、 両者は有意な 「違い」 がある。
正常って 何?

♣ 下の 図 2 は 日本の 「年収額」 の分布を示す。上の図と違って、著しく左に偏っているため、代表的な 「年収額」 を言い表しにくい。この場合は、やむを得ず、(1) ピーク年収 250万円 、 (2) 中央年収 438万円(調査人員数の真ん中の人の年収)、 (3) 平均年収 549万円 (グラフの棒の面積の重心の年収) のように 複雑な代表値しか言えなくなる。
正常って 何?

♣ 下の 図 3血清アルブミン(命の素) の 男女・年齢別 の分布である。命の素は 当然のことながら 男では 20歳 → 79歳 に向かって 直線的に低下するが、女では男より低いけれど5 5歳 で男に追いつき、以後 加齢とともに 仲良く低下する。要介護年齢の人なら 80 ~ 90歳 が多く、「残っている命 = 命の素 アルブミン」 は 更に少なくなって行き、この図に示す赤線の正常値よりも 当然 かなり 低い値になる。 だから 超高齢者のアルブミンを検査して、「低い 低い !」 と大騒ぎするのは、 全く馬鹿げているのである。
正常って 何?

♣ 下の 図 4 は コレステロールの実測値を年齢別に散布した図である。真ん中の実線 (青) はその平均値の動向を示す。平均値は年齢とともに少しは上がるが、全体の激しいバラツキに比べれば、コレステロールの正常値なんて定めることはできない。肉食の西洋では 500 ~ 600mg の異常者がいるが、日本人は 穏やかだから、製薬会社の宣伝に乗っての服薬はムダである。
正常って 何?
血圧の正常値 図 5 は歴史的な変遷が激しい。一頃は 160 / 95 を越えなければ薬は不要とされていたが、学会が開かれる度に 低い値に改定され、今や 120 / 80 が至適 (してき) 血圧とされる始末。低い血圧のほうが血管事故は少ない、という判断だろうが、それは 「お粥(かゆ)をすすって 長生きを志す若者」 のようなもので、健全とは言えない。ちなみにある降圧薬を、市場で当てたら、一千億円越え の売薬ビジネス が成り立つのである。

正常って 何?

♣ 以上に述べたように、人間が決めたものなら、「正常値」 なんてものは怪しい… それは 「便宜的なもの」 であって、性 ・ 年齢 を無視した 「ムリヤリ正常値だったり、しこたま「儲けと打算」 のかたまりだったりする。

♣ 介護情報書には 様々な数値が書いてあるが、たとえば 「アルブミンが 3.2 g /dl」 であっても、30歳 なら病気、95歳 なら正常なのである。相談相手によって、柔軟に頭を働かせて判断して欲しい。 

要約: 一口に 「正常」 「異常」 と言うが、その判断は データ次第で 著しく異なる。五つの例を図示して 注意すべき要点を述べた。 相談内容によって、柔軟に頭を働かせる必要がある。

職員の声

声1: 正常・異常 と言うが、‘平均値と正常’ を混同するのは正しくない … 何事も 「鵜呑み」 するのは良くない係り: 正規分布 をする数値の場合、平均値 ± 標準偏差 の範囲を 数学的根拠で “正常” と呼ぶことがあるが、そうでない変量について (例: コレステロール)、特にヒトが恣意的(しいてき)に作成した範囲 (例: 高血圧の定義)は正常とは呼ばない)。

声2: 正常値が 「老人と若者」 の間で大きく異なることを学んだ(係り: 老人の顔の皺(しわ)や皮膚の ‘たるみ’ の違いは 目で見て分かるけれど、つい ‘言葉上手な手口’ には 引っかけられる . . . . 正常な 60歳 と 20歳 の人なのに、60歳 が 20歳 の肌に憧れて 高価な 化粧 ・ 医薬品 に身をやつすのは “愚かなこと” なのだ)。

声3: 現象を一つの数で捉える 「正常値」 は、全体像を観て判断し直す姿勢が必要だろう(係り: Yes ! 昔、成人とは 満20歳 以上だったが、今年から 18歳以上 と改められ、この数値は 国や時代によって異なる … サイバー時代の現在ではあるものの、数値のみで ‘事の本質を問う’ 姿勢は批判されている)。

声4: データの性質 ―― 特に 「年間所得額」 の図をみると、 正常・異常 の区別なんて言えないことが分かる … 有るのは 収入の多寡のみだ(係り: 健康状態の判定も同じこと、30歳 の健康と 90歳 の健康を 数値だけで比べたら 大きな間違いが起こる)。

声5: 血圧の正常値は 人間ドック などで定められていないのか?(係り: ドックの血圧値は、典型的なサイバー数値である; 降圧療法で、目標血圧を 120 / 80 の 「至適領域」 に求めれば、業者は儲かるが、国民は 低い血圧の不活性な人生を過ごすことになるだろう ―― 血圧に限らず、業者が決めた正常値は様々な要因で変更される)。

声6: 人の血管の硬さは 30歳 と 90歳 では全く違う … それを一定の血圧数値で把握しようとするのはムリだ ! 各 年代ごとの正常値を周知させて欲しい(係り: 正常の数値設定表は 上限年齢を 70歳代 で終わらせており、近年 要望の高い 90歳代 ~ 100歳代 の一覧表などは まだ 存在していない ―― その理由は 大数検査が難しいこと、個体差が激しいから、とされる)。

声7: “正常・異常” と同類で 「常識・非常識」 がある… 「非常識が正常」 のことだって あるよ(係り: たとえば 親切・正直・勤勉 など)。

声8: 健康診断は数値だけの世界であり、生活習慣の有様や 服薬過剰は あまり重視されず、どこまで指導力があるのか?(係り: ドックの成績はあながち無視されるべきではないが、無症状の大欠陥を発見するチャンスにはなる … 人間、多様性の塊だから、日常生活への助言は可能であるが、お互い様 指導・強制 は困難だろう)。

声9: 一定範囲に分布する情報を 「正常・異常」 と分類すれば、必ずグレーゾーンが発生する ―― それは 医療で 「治療の要・不要」 の境目となり、人(医師)が 性・年齢・過去歴など を加味して 判定すべきではないか?(係り: 人類を 「正常値」 に導くことは “望ましいこと”なのだろうか? ここで、「正常」って何だろう? 痩せた人・太った人、血の濃い人・薄い人 . . . . 人類の多様性を理解しながら助言する手腕は ‘熟練した指導者’ でも得難い能力だと思われている)。
プロフィール

ふじひろパール

Author:ふじひろパール
「ふじ」=新谷冨士雄
「ひろ」=新谷弘子

社会福祉法人 パール
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