(563) 認知症を 早く 見つける ? 

(563) 認知症を 早く 見つける ?

この表題で、いきなり 三つ の 「鍵」 が出てきた … そこで 三つ の鍵の きちんとした定義を確認しておこう ―― 「認知症の どのステージを?」 ; 次に 「早く、とはどれ程 早く?」 ; そして 「見つけるって、認知症の どの部分を?」 。

♣ まず、 の ‘どのステージを?“ から始めよう。くどいようだが、そこをはっきりさせないままの論議が世の中には多すぎる。だって、今でこそ 「認知症 」と “症” が付いているから まるで “病気” だと診断されているが、10年 まえまで “痴呆(ちほう) という名称だったし、それは 病気ではなく、“年寄りボケ” の事であった。“年寄り” を病気と言えるか? … もしそうなら、“若者” も病気と言うべき言葉となり、“ボケ” だって ‘寝ぼけ’ というように 誰にだってみられる生理現象ではないか?病気に軽重 (けいちょう) があるのは当然だが、「ボケ」では それが 甚だしいだけだ。
認知症を早く見つける

♣ つまり 当たり障りのない ソフトな名付けを求めるあまりに、元来 病気でない状態年寄りボケ に 可愛い名称認知症という’病名’が付けられてしまった 1 ) 。いったん ボケを 病気として間違い認識されてしまえば、それに対応する治療や治癒が あたかも 存在するかの如く 錯覚され、人々は その 「幻」 (まぼろし) を追いかけているのではないか、と私は思う。たとえば、白髪 (しらが)や 顔の皺 (しわ)は 老人で増えるけれど、それは病気ではない ‘年齢現象’ だから、美容上の希望なら別として、将来とも 病気としての “治療や治癒” を期待することはムリではないか。

♣ ここで ‘年寄りって何?’ を問いたい。 二千年前 のローマでは 40歳 を 「老齢」 (セネックス) と呼び、それが後世に受け継がれている。日本でも 40歳 は 「老眼や白内障」 の走りであり 、「介護保険費」 の課税年齢となる。もちろん 「白髪 ・ 顔の皺」 も 古今東西 40歳 を潮に 老人らしくなる (初老)。近年の生化学分析では、ベータ ・ アミロイド という物質が人の脳細胞の中に 溜まり始め、それが認知症の原因となる、と言う説が強いが、それの溜まり始めの年齢が 40歳頃 である。

♣ つまり 問題 「認知症のどのステージ? の答えは 40歳」 であり、人間 誰しも その年齢で 全員 認知症の候補者となる。しかし、認知症 ( = 年寄りボケ) の症状が目立つのは 65歳 ころであり、85歳 で人口の半数が ・ 100歳で 8割が ・110歳 で全員が ボケてしまう 2) 。だから認知症がいつ始まるか は その人次第であって、決められない . . . 禿 (はげ) が何歳から始まるか、を問うようなものだ。

♣ さて次の ②、どれほど早く診断できるか?は 前項によって 一番早くて 「40歳」 と言えるが、遺伝性痴呆を除くと、現実には 「症状が出たとこ勝負」 である … つまり統計的に 65歳 を過ぎれば、いつなっても おかしくない … 遅くても 90歳 や 100歳 なら おおいに あり得る。ナゼ 早期診断が困難なのか?と言えば、「痴呆は頭蓋骨の中の現象」 であり、かつ 脳の病理解剖は生存中には出来ないから である。また、仮に可能であっても、その主原因たる “加齢 ≒ 認知症” を防ぐことは、生命現象と矛盾する故、不可能 ・ 無意味 である。世の中には 「早期発見 ・ 早期治療」 という モットー があるけれど、“加齢” をわざわざ発見する必要はないのではないか? 

♣ そこで 問題 「早く発見できないのか?」 の答えは、技術の進展次第で可能となるだろうが、「早く発見すれば 早く不幸が来るだけ である」 … なぜなら ” 年寄りボケ” も その人の寿命の内 だからだ。認知症の自然経過はおよそ 15年 程度、半年やそこら 早く診断できて 何のメリット があろうか?ただし、周りの人たちが見つけやすい ‘周辺症状’ は 服薬でコントロールする利点はある 3 )

♣ 最後の問題 ③、 「認知症の どの部分を見つけるのか?」 は 「老化の生理と病理」 を見分けること」だから 困難を極める。とくに 他の病気と異なり、“ 老化 ~ 精神 ~尊厳 ” に関わる鑑別をするのだから、誰しも慎重になる。次の順で要点をみたらどうだろうか:――  (A ) : 私情を挟まないで観察する ―― 肉親 ・ 知人 の場合は困難だ。 (B) :「中核症状」 のない認知症あり得ない 3 ) ;そこで ‘直近の記憶 と 見当識 ( 時・所・人 )の喪失’ を 認知症の 「決め手」 とする。 (C) :「周辺症状」 は ‘人泣かせ’ だが、あわてず見つめよ。 (D) :「早期発見」 が唱えられているが、認知症の自然経過は 約15年 であり、パーキンソン病 と似ている … あわてるな。

♣ 皆さんがた、ここで考えて欲しい ――上記のように、もし 認知症が 「病気」 であるなら早期発見が望ましいだろうが、「加齢や老化」 が主原因 (使い古し) である以上、そんなものを早く発見して どうするのか? 私たちは 子孫確保年齢 50歳 の更年期を 100歳 近くまで倍増して 馬齢 (ばれい)を食み(はみ)、その結果、身体の各臓器の機能を極限まで使い尽くすに至った . . . これを もって もう すなおに 瞑 (めい)すべきでは ないか?

要約:  認知症を 早く 見つける方法を 三つ 述べたが、認知症は 上品な病気なんかではなく、単なる 「年寄りボケ」 に過ぎないゆえ、あわてず あきらめず 受け止めて欲しい。 認知症の 「中核症状」 は、悔しいことながら、元に戻ることはない; しかし 「周辺症状」 は対応可能である。 私たちは 近年 ‘長生き’ を 当たり前 としてきたが、「命」 にも終わりのあることを しみじみと知る。

   参考 1 ) 新谷:英語にない介護の表現; 安全管理 # 559, 2016.   2 ) Epstein, Robert: Brutal Truths About the Aging Brain, Discover 10: 76, 2012. 3 ) 新谷:「中核症状」「周辺症状」の おさらい;安全管理 # 558, 2016. 

   職員の声

 職員の声

声1: わが父は 物忘れが進んだけれど “まだ認知症ではない” と診断され、しかし治療薬(アリセプト)を処方された ―― 家族としては 心配でならない(係り: ご同情申し上げるが、アリセプト処方の保険病名は ‘認知症’ 以外には無い … ‘軽度認知障害’ だったのかも知れない)。

声2: 認知症と聞けば 「上品な病気」 と誤解されるが、実際は 「年寄りボケ ! 」 のことである(係り: “年寄りボケ” という言葉は 「差別用語」 に近く、使いたくない ―― 2004年 までは 正式名を 「老人性痴呆」 (ちほう) と呼ばれていた)。

声3: 認知症が 「治る ~ または進行を止める」 ことができるのなら、早期発見 ・ 早期治療 の意味があるだろう(係り: 認知症は “加齢” とほぼ同義な状態であり、“加齢の発見” は簡単だが、“加齢の治療” とは 「論理のエラ-」 ではないか)。

声4: 認知症は “老齢現象” の一つであると理解すれば なにもかも すんなり受け止められる(係り: 65歳 よりも ずっと若い認知症ならば、初めて ‘騒ぐ’ に値するのだろう)。

声5: 認知症の “サポーター活動” では 「早期発見 ・ 早期治療」 が合言葉になっているけど . . . (係り: それは “人権の保護” のことと思われる ; メディカルな治療なら無意味だ)。

声6: 中核症状の治療法がある訳でもない認知症であれば、少しでも ‘遅く’ 宣言するのが賢明、と私なら考える(係り: Yes, 認知症 = 老人性痴呆 = 大脳細胞の脱落 であるのを 早期発見 ・ 早期治療 しても どうにもならない)。

声7: 早期治療ができないにしても、せめて 「安心して徘徊できる世間」 にしたいものだ(係り: 徘徊は 認知症の ‘周辺症状’ である … これは治療できる ―― あなたは徘徊者の捜索隊に参加したことがあるか? 周りの人から見ると 「滑稽さ」 を感じるようだが、隊員も お巡りさんも 一日に 何例も飛び跳ねてお世話する苦労を重ねている)。

声8: ケアの対応が必要になった時点で 認知症だと診断するのが タイムリー なのではないか?(係り: 100% 正しい意見だ)。

声9: 95歳 で 初めて 認知症と診断され 薬を処方されて何が “幸せ” なのだろうか?(係り: 先月 96歳 の老女が ヘリコプター救急 を要請した例が報告された (2016.1.24) … パールでは 救急車出動を 連続 20回 要請した 91歳 の男性例を経験している ―― (救急車は 一回 4万5千円 、ヘリコプターなら 200万円 程度の出費だという)―― 老人の “幸せ” を他人が詮索するのは なかなか難しいことである . . . 賑やかに終わる 命の灯も また 素晴らしき かな ! )。
プロフィール

ふじひろパール

Author:ふじひろパール
「ふじ」=新谷冨士雄
「ひろ」=新谷弘子

社会福祉法人 パール
安全管理 ふじひろのページ

最新記事
全ての記事一覧
月別アーカイブ
カテゴリ
リンク
QRコード
QR