(558) 中核症状 ・ 周辺症状 の おさらい

 (558) 中核症状 ・ 周辺症状 の おさらい 

認知症の定義は 「いったん獲得した知的能力を 加齢とともに失うこと」 である。その原因が明瞭な場合は、医療の対象になるが、大部分は 「年寄りボケ」 のように 原因が不明であり、ひたすら 介護の手に委ねられる。

♣ (1)アルツハイマー認知症。 詳しい原因が分からないまま ボケてくる状態であり、認知症全体の 約6割 を占め、85歳 人口の約半数 を占める ―― “アルツハイマー” は ドイツ人 医師の名前だ。

♣ (2)脳血管性認知症。 ―― これは脳出血や脳梗塞の後 症状が出るもので 全体の 3割弱 ほどある。

♣ (3)その他。ーー レビー小体型 ・ 側頭-前頭葉型 (ピック型) もあるが、専門的になるので、混乱を避けるために ‘その他’ に分類してよいだろう。生きているヒトの脳は 「解剖」 できないから、あまり細かく分類しても 臨床的な意味は薄い。疾患は 進行性で、病気の総期間は最大で 約15年 である。

♣ 皆さんが 一番 戸惑うのは 「症状の種類の多さ」 であろう… 覚えきれない。それらを理解するためには 「分類のコツ」 がある。以前に 「竹輪の上に 虫食いキャベツ」 で解説したが、ヒトの脳は 「キャベツ」 大 の 大脳 と、その下にある 「竹輪」 の形の 自律神経脳 より成る。

♣ 認知症では 「大脳細胞の脱落」 が基本であり、その症状として、「人間らしさ」 が失われる。他方、自律神経脳は犯されることなく、むしろ 大脳の抑制効果を逃れて その症状は 自由奔放に現れ、人を困らせる。ここでは 混乱を避けるために、「三症状」 だけを覚えて欲しい: ―― (中核症状のA B )、(周辺症状のC )。
中核症状・周辺症状のおさらい

♣ 中核症状は、どの認知症にも必ずある。認知症では 大脳の細胞が脱落するため、大脳本来の機能が低下する。図 には 中核症状の概要 「7項目」 が記載されているが、上段の 2項目 「 記憶障害 ・ 見当識障害 」 が最重要である。

A の記憶障害の特徴は 「1分前 のことが分からない」 ことだ。普通の人は 「朝ご飯に何を食べたかを忘れる」 が、認知症では 「食べたこと自身」 を覚えていない。「忘れる」 とは、一度 頭の中に入った後 「忘れる」 のであるが、認知症では 忘れるのではなく、「頭の中に入った形跡がない」 のだ。天真爛漫で、知らない事の悩みも罪悪感も何もない。その実例は いっぱいある(略)。

♣ 次の B は見当識(けんとうしき)の障害だ。見当とは 「大体の方向・方角…」、‘見当をつける’ などと言う。認知症の場合、「 時 ・ 所 ・ 人 ( トキ ・ トコロ ・ ヒト )と覚えよう。

♣ 「」 は、高度に “抽象的な要素” であり、「赤ちゃん や 認知症の人」 は 理解することができない。「 昨日 ・ 今日 ・ 明日 」の区別ができないし、「春夏秋冬」 の区別もつかない。つまり、「将来」 の意味 が分からないから 「長生き」 の意味も分からず、「死の不安」 も理解しない。

♣ 「」 とは、今 自分がいる場所の事であり、ここが何処か 病院か 駅か、それとも自宅かが言えない。仮に 家に帰っても 自宅かどうか分からないから、自宅に居ても 家に帰りたい、と言い 徘徊する(例)。

♣ 「」 とは、夫婦・子・兄弟姉妹の人間関係が分からない… 付き添ってきた夫を ‘弟です’ と言って紹介する(例)。

♣ 以上、「時・所・人」 に関する質問をするだけで 認知症かどうか、その重症度 が おおよそ推定できる。これら三つの見当識障害を理解すれば 「中核症状」 の 95 % は 正しく診断される。これらの他、五つの要素 が表に書いてあるが (失認・失語・失行・判断力・実行機能) 、 何なら これらはスキップしても構わない … 「一分前の記憶障害 と 見当識障害 (時・所・人) 」 の二つを 是非 覚えて欲しい

♣ 三つ目の C は 周辺症状だ 。ヒトの 「自律神経脳」 ( = チクワ) の働きは 「体温・呼吸・循環 を守ることの他に、攻撃・守備 などの 自己防衛本能 がある。普段は 「理知的な大脳」の力で 表に出ないように ‘抑制’ が効いているが、認知症では 大脳が 「虫食いキャベツ」 状態のため、虫食いの間をくぐり抜けて 表にでてくる (妄想・不穏・興奮・徘徊・暴力など) 。

♣ つまり大脳の ‘抑制’ が不不十分なために、本能の種類ほど多様な症状が現れてくる。その上、周辺症状は 周りの人を 一番 困らせる症状 であるが 認知症診断に必須ではなく、だから症状を いちいち覚えておく必要はない だろう。上記の五つだけを覚えておけば 十分である。

♣ あなたが 介護にあたって出合わす ご利用者の症状を 「中核か? 周辺か?」 に分けて認識すると 認知症が分かりやすくなるだろう。症状の持続は、中核症状は “停滞 もしくは 進行” するだけ ―― これに対して 周辺症状は 服薬 ・ 介護 でコントロール可能である。

♣ 以上、おさらいをした。一度にたくさん覚えると たくさん忘れるから、(A)(B)(C)の三つだけで認知症を理解してみて下さい。1957字。

  要約:  ① 認知症の 原因 ・ 結果 ・ 対応 について ’おさらい’ をした。 ② 原因は 「大脳細胞の加齢性の脱落」 であり、その結果 ’人間らしさ’ が消えて行く。対応は ’理解ある介護’であろう。 ③ 介護にあたって必要な知識は、中核症状は進行性であるから 優しく見守ること ・ 周辺症状は ”医療と介護” によって 和らげることができる、という事実である。④ 命は 親・子・孫・ひ孫と壮大な 認知症の循環をして行くーー私らは 避けることのできない その現場の ’立会人’ なのである。

参考:  1) 新谷: 竹輪の上に 虫食いキャベツ ; 安全管理 # 521, 2015.

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