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(568) ホ ッ チ ャ レ

(568) ホ ッ チ ャ レ

“僕たちは 可哀そうで 淋しい高齢者たちなのだ” と嘆く老人が増えたそうだ ―― その典型が 近年の ‘有閑老人たち’ 1 ) である。私は、高齢って そんなものなのかな? と不思議に思う。そこで、少し昔の歴史を振り返って見よう。

♣ 500年前 の シェイクスピア に言わせると、「リア王」 は “人生の残り少ない高齢老人” として描かれているが、彼の年齢は わずか 47歳 だった。400年前 の 織田信長 は 若くして 桶狭間の戦い で天下を取ったが、本能寺の変 で逝ったのは まだ4 9歳 の時であった。戦前の日本軍人は 「人生 50年 、軍人は 半額 = 25年 で華 (はな)と散る」 を心得ていた。つまり歴史はこう告げる : 人間の寿命は 50歳 で十分だ !!

♣ 実際、日本人の平均寿命は 江戸時代末期で 35歳 、明治で43歳 、昭和も 終戦までは 人生 50年 だった。50歳 と言えば更年期、つまり 男女とも次世代の子孫を確保し、「第一の人生の華」 を完結する年齢である。以後の年月は、ただ 生存しているだけであって (食っちゃ 寝)、 「命の進化」 とはまったく ご縁が切れてしまう。もし その時期に ”知的な目的” を持つことができる人であれば、そこに 「第二の人生の華」 が咲くのであろう。

♣ どんな生命でも、子孫が確保されたところで世代は バトンタッチ される … 人間も そのサイクルの上の生き物に過ぎなかった。それから わずか 70年 、今や ‘特養パール’ では 105歳 の女性が日々を 安全に過ごしておられる。まったく 寿命に関する限り、人類は 「子を産まない老後のサイクル」 のほうが 「子を産む若いサイクル」よりも長くなってしまった !! それは 人類の「熱望達成の証 (あかし)」 なのか?それとも いずれ消えゆく 「あだ花」 なのか?

ホッチャレ

♣ 話を動物の命に切り替えてみよう。日本の お正月 には 「鮭」 が欠かせない。その鮭は 川の上流で生まれ、川を下って海で 3 ~ 4年 を過ごし、まるまる太って 「自分が生まれた川」 の上流にさかのぼり、そこで 産卵、その直後に 生涯を閉じるぴんコロ、と呼ばれる)… つまり 鮭には 「老後」 の時期は存在しない ! 死んだ遺体は 「ホッチャレ」 と呼ばれ、熊や川の生態系の栄養になる。つまり、親鮭は 子孫に遺伝子を伝えたら、「ホッチャレ」 だけのお役目になるのである。

♣ ヒト以外の動物は すべて 繁殖が終わったら、そこで親の命も終わりとなる (死ぬか、捕食されるか) ―― ヒトに似た猿の チンパンジー でさえ そうなのだ 2 ) 。つまり、遺伝子は 子孫確保 まで 親の体を保護するが、保護はそこで 終わりとなる。 ところが、ヒトの場合は、 “子孫確保の更年期” を過ぎても 命は続き、更年期の二倍も生き延びる。まるで近年のヒトの寿命は 「自然の摂理から逸脱してしまった」 かのようだ。

♣ では、繁殖の後、二倍 も長生きするヒトは 何処が 特殊なのだろう? 「遺伝子」 の点では 何も特殊な ‘仕掛け’ はない … 更年期を境にして、鮭と同じように、身体は 「ホッチャレ」 になり、50年 かけて 体は “じわり じわり” 死んで行く ( = じわコロ 3 ) 。ところが、ヒトは「知能」 を特別に働かせ、「衣・食・住」の環境を改変することで、遺伝子設計 (50歳) をはるかに越えて 100歳 以上にまで生き延びることに 成功した !! つまり、近年 延びた寿命は 「天然の寿命ではナイ ! 」 、それは 「知恵の寿命」 であり、だから 知恵のあり方次第で 寿命も変わってくる。。

♣ 有史以来、ヒトの ”更年期” は 50歳 止まり で少しも変わっていない ; だけど介護保険の現代では、更年期をはるかに越えた 「古希(70歳) や 傘寿(88歳) 」 の人でさえ、自分の事を 「老人」 と思わなくなった ! つまり、近代人の特徴は 「体は ホッチャレ」 になったのに、不遜にも、頭は それを否定する。このように、ヒトの老後の特徴とは 「遺伝子寿命 」と 「知恵の寿命」の区別が おろそかになったことだ。

♣ 老人は遺伝子設定の二倍も長く生きるのだから、遺伝子保証は期限切れだし、当然のことながらに「体」は 病気勝ちとなり、感染症 ・ ガン ・ 認知症 などで ジワリ ジワリ と逝く( = じわコロ) 。他方、若者は、手のかかる ’じわコロ’ 老人の生きざま を見て 嫌気がさし、自分たちは いさぎよく ピンピンコロリ と逝きたい(ぴんコロ)と願うけれど、その願いは むなしく、やっぱり若者も長生きしたあげくに じわコロ で逝く --人間て、同じ穴のムジナなんだ。

♣ 今時の老人は 皆 体は 100歳 のホッチャレであり、気分は 一人暮らしや孤独死の淋しさと同居、自分のことを 「哀れで 可哀そうな人」 などと甘えている。それは 勘違いではないか? 言葉は 昔通りの 「老人」 だが、今時の老人は 昔の二倍も長い 「ホッチャレ」 の 最終点 まで生きられる恩典に浴している。どこが違うかって、 「50歳 と 100歳」 では 「自然」 と 「入れ知恵」 ほど違う人生だ ! こんな 二倍もの差があれば、見る夢までも違ってくる のであろうか?

♣ そうは言っても 終りが近づけば 辛いことだろう。解決策? それは 「並みコロ」 ではなかろうか? つまり、まだ知恵の寿命に余裕があるうちに 人並みに逝く、それが 「並みコロ」 である。仮に 「魔法」 を求めて法外な長生きをしたとしても、遺伝子はそれをサポートできない … なぜって そこには 予定通りに 「認知症」 という ”運命神” が待っているからだ。

♣ 並外れた ‘延命’ などの横着は 悩みを長くするだけだ。親のこと、または 自分のことを 「淋しい ・ 可哀そう」 なんて言わず、「ホッチャレの身の運命」 を すなおに 受け入れること、それが 清く 望ましい人生なのではないだろうか?1987字  

要約:  昔も今も、生命の基本は 「子孫に命を伝えること」 がすべて ; そこで 「命は一段落」 する。 更年期を過ぎても 生き永らえるのは ヒトの 知恵の特権 ; ただし 遺伝子は 更年期までの 「体」 を保証するだけであり、その後の人生は 本人責任だ。 ヒトは、時 満ちたら、「並みコロ」 も “また良し” としたいものである。

参考: 1) 新谷: 老 後 破 産 ; 福祉の安全管理 #515, 2015. 2) 松沢哲郎: 想像するちから、学士会報 No.913, 2015.  3) 新谷: 命のサイクル; 福祉の安全管理  #564、2016. ―― 見えず 聞こえず 味わからず、歯は無く 骨折れ 腰曲がる。  
   
     職員の声

声1: 私はアラスカの現場で 鮭のホッチャレを見た経験がある; 定年後だから 私の体はホッチャレなのだろうが パールに勤務、地域活動の貢献で頑張っている(係り: あっぱれなことだ; 鮭の一生のように 自然の摂理が滑らかに流れていて 美しいと思う)。

声2: ホッチャレという言葉を私は初めて聞いた; 私がホッチャレになったら死ぬのみか?(係り: 鮭だって ‘第二の役割’ があるのだ、あなたも ’第二の人生’ を活用して欲しい)。

声3: 遺伝子は更年期までの身体を保護するが、それ以後の ホッチャレ の身体は ‘自己責任’ で守らねばならない(係り: よく観察してみよう … 動物界で ホッチャレの体を守る遺伝子なんて存在しない、自分で守る以外の方法はない)。

声4: なるほど、ホッチャレ以前と以後の人生は違うことに気付かされた ―― 私は ホッチャレの歳になっているが、改めて自分を見つめ直し、鮭に負けず 意義ある人生を過ごしたい(係り: 歳をとって 受け身で楽(らく)な老後の人生 … もし それだけなら まったく 鮭に劣っちゃうね)。

声5: 私は 鮭のように 目的達成後 すぐ ‘ぴんコロ’ とは行かないが、せめて 他人迷惑の じわじわ長患いをせず、‘並みコロ’ で逝きたいと思う(係り: 厚労省によると、日本女性の平均寿命は 86歳 で世界最長、しかし寿命の終わりの 13年間 は 他人の手をとる 「病気寿命」 だとのこと4 ) ; お互い様 健康に気を配りましょう)。

声6: 長生きしても、頭はクリアで体は寝たきり、または、頭は認知症なのに 体は元気 ―― 長寿になっても なかなかうまく行かない老人が多い(係り: 人は 更年期のあと 2倍 も長く生きる … その生き方が ‘下手(へた)’ なのだろうか、それとも 2倍 もの長生きを ‘もてあます’ のか、考えちゃうね ―― 昔は ‘並みコロ’ だったよ...‘じわコロ’ の余裕なんか なかった ! )。

声7: 魚は産卵後には価値が無くなり ホッチャレと言われるのか? 私は体が衰えても それを自覚しながら大事に生きて行きたい(係り: 鮭の場合は ホッチャレとして立派な “存在価値” があったように、我々人間も ‘老後の他人依存’ を当然とせず、ホッチャレに負けない社会貢献をしたいものである)。

声8: 人間、社会貢献は必要なことだが、その前に 子孫繁栄 の道を歩むことが もっと大事だ(係り: 鮭はホッチャレになる前に ‘産卵’ を済ませたよね … 子孫繁栄 の道は 老人保護 よりも 遥かに重要な 生命の原理なのである)。

   参考:  4 ) 新谷: 依存寿命; 福祉の安全管理 # 552、2015.
プロフィール

ふじひろパール

Author:ふじひろパール
「ふじ」=新谷冨士雄
「ひろ」=新谷弘子

社会福祉法人 パール
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