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(569) 福 祉 元 年 は 1973 年

 (569) 福 祉 元 年 は 1973 年

  私が子供のころ、日本のお金 「 2円 」 が アメリカの 「 1 ドル 」 に相当する、と聞き、何が違うのだろう?と不思議に思った記憶がある。

♣ 戦争が終わったあと、日本の 「 360円 」 が 「 1 ドル 」 だと知って、その意味がやっと分かり、ビックリしたのを思い出す ―― 昔 2円 で買えたものが 360円 出さなければ買えない状況 … つまり、円 はボロクソに安くなっていたのだった。振り返ってみると、時代の変遷とは怖いものだ。今日は 1973年 の 1 ドル が 360円 だった、「古き 良き 福祉元年」 の話を振りかえる。

福祉元年は1973年

♣ 日本は戦後 経済発展が順調に進み、1970年 (昭和45年)、人口の高齢化率も 7 % を突破して 世界先進国の仲間入りをは果たした。時の 総理 ・ 池田隼人は 「所得倍増 ! 」 の掛け声のもと 経済政策に励み、日本国民の懐をおおいに潤おした。その後の 総理 ・ 田中角栄は 1973年、時あたかも 日本は 第二次ベービーブームの熱気に湧きかえており、「好景気」 を背景に、社会福祉の充実に 方向転換をした。福祉元年の目玉は : ―― 寝たきり老人の保護、 高齢者医療の無料化、 年金の受取額の増額、家族医療費の7割 国庫負担 など、従来では ありえなかった大英断であり、国民は心の底から “日本繁栄の証” を感じ取る 福祉元年 を迎えた。

♣ “好事魔多し” の格言通り、その前年 1972年 には 小説 「恍惚 (こうこつ)の人」 (有吉佐和子 著) が発表された。その筋書きは : ―― ある老人が痴呆になって嫁をいびり回すのだが、嫁は舅(しゅうと)に 一生懸命に尽くして通すという 涙ぐましいストーリであり、当時の日本人は この小説によって “痴呆のむごい実態” を初めて知ったのである。ちなみに、アルツハイマー という名前は 20世紀 初頭に老人性痴呆を発見したドイツ人医師の名前であり、半世紀のあいだ 無名であったが、1970年代 になって名誉挽回した故事がある。

1973年は福祉元年

1973年 は、政策上の 福祉元年 であるだけでなく、振り返ってみると、現在の福祉の混乱の出発点にもなっているように思える。 図1 は 日本の 「初婚年齢の推移」 を示す ―― 1970年 まで女性の多くは 24歳 未満の初婚が多数であったが、その年以後 毎年 ぐいぐい 「晩婚化 してきた」。なぜだろう? その理由は複合的であろうが、1973年 の福祉元年と晩婚化の流れが一致するのは 単に 偶然なのだろうか?つまり、国が豊かになり 老人の生活が安定化して、人々の心に余裕が出てきて 結婚年齢も遅れ始め、ついに現在の 30歳 を越える晩婚に至ったのだろうか?因果関係がどうであれ、女性の出産年限は 生理学的な理由で 35歳 ほど で終わってしまう … もう これ以上 遅らせることは出来ない。

1973年は福祉元年

♣ 続いて 図2 を見て欲しい … こちらは 「合計特殊出生率」 (合特率)の経過を示す ―― この数値は “一人の女性が生涯 何人の子の母親になるか” を統計的に示すものであって、“ 2.2 ” という数字があれば、その社会の人口は増えもせず 減りもしない安定状態となる。この曲線を左上から右下へたどると: ―― 戦前は “合特率 = 5 ”、つまり 一人の女性は 平均 5人 の子を産んでいた。 終戦とともに “合特率” はガクンと 2.2 に落ち、その理由は説明するまでもないだろう。

♣ だが それも 1973年 の福祉元年とともに 再びガクンと低い値に落ち込み、社会は少子化の道を辿り始めたのである。なぜか? 図 1 の晩婚化で分かるように、初婚女性が 30歳 であれば 挙児の期間は 5~6年 の間に限られ、その期間内での挙児は 限られてしまう ―― つまり晩婚時代の 「合特率」 は必然的に低下するのである。

♣ 田中元総理は ご自分の政策 「福祉元年」 によって、将来の 「晩婚化 ・ 多々老少子化」 の局面が訪れることをどれほど予想なさったのだろうか? 彼は 「バラマキ大臣」 とも揶揄され、「福祉は “依存” だ、“自立” を求めぬ」 の元祖となるが、50年後 に発生した ‘依存の混乱’ は予想しなかっただろうか?私たちは 1973年 の福祉元年を有難く思うが、その反面 尻拭いをしなければならない立場になったのである。

♣ 彼は 良くも悪く老人の社会問題を取り上げたが、「多々老問題」 は平和の道を選択した 戦後の世界諸国の通る 一般的な傾向でもある ―― つまり 生まれてしまった人の数を 政策で変更することはできず、最期まで大事に守らなければならない。これに 対して これから産まれて来る 「少子の問題」 なら まだ 「政策介入の余地」 がある。ただし、日本では 「貧乏人の子沢山」 は過去の話であって、今の日本人は 「貧乏を克服、子は少なく」 のムードが蔓延しており、従来の格言通りの政策では 片付かない。
福祉元年は1973年
♣ 人の心は勝手過ぎる … お年寄りに長生きして欲しいけれど 多々老は困る ; 子供は産みたくないが 少子化も困る。格言は、“禍福 (かふく)は あざなえる縄のごとし” と教えるけれど、1973年 の福祉元年のもたらした “禍福” は 有難くもあり 複雑でもあり“、我々は 今 その調整の山場に差し掛かっているのである。2085字 

要旨:  1973年 は 福祉元年」 と呼ばれ、老人福祉が出発した年である; 数々の幸せがもたらされた反面、晩婚 ・ 多々老少子化の社会問題が噴出した。 我々は 福祉元年 の趣旨を理解しつつ、多々老 ・ 少子の新しい問題に取り組む腹をくくるべきであろう。

職員の声
 
声1: 1973年 は田中角栄 ・ 元首相 の発案になる 「福祉元年」 だ; 近視的には “大発展” 、遠視的には “大混乱” となる 福祉高揚 の初年度を記念すべき年度になった(係り: 大発展の初年度 1973年 では 女性の平均年齢は 「76歳」 、大発展を遂げた 2007年 で 「86歳」 と、 “10年 も長生き” になった ―― 他方、大混乱の近年では 平均年齢は 86歳 で停止、介護予算は 3兆円 → 10兆円 と国民負担は ‘うなぎ登り’ ... 高齢者は サービスを どんなにしても ’満足’という言葉を忘れておられるのが現実だ)。

声2: 福祉元年の 1973年 、その年から 「晩婚化」 がスタートした事実から、「福祉」 イクオル 「晩婚」 の因果関係を否定できないと思う(係り: 類似の現象が 2000年の介護保険でも発生した ... つまり 「老後の保障」 に安心して、若者さえ結婚の”えり好み”が強まり、安易な晩婚・未婚に走るようになった。そして 若きも老いも ”子育ての労苦を避け、楽(らく)を保障する政策” に溺れ,、多々老 → 晩婚 → 少子 のサイクルが成立した 1) )。

声3: 晩婚化は近年の現象かと思っていたが、図 1 をみると 40年 前から始まっていた ! (係り: データを読み込むことは大事だね)。

声4: 福祉の大盤振る舞いは 1973年 に始まったが、長期ビジョンの無い 「その場しのぎ」 だったので、40年 後の現在は ツケ が回って息切れしている(係り: “経済の大発展” も “ 寿命の延長 30年 ” も 歴史始まって以来の大事件だったから、先行きの大混乱などは眼中になかったのだろう)。

声5: 「多々老 ・ 少子化」 は予測できたハズ ―― だって、「国の発展 → 死亡率の低下 → 人口増加 → 多産は不要 → 女性の社会進出 → 晩婚化 → 少子化」 の流れは 因果関係が歴然 としているよ(係り: これは 全世界的な現象であるが、日本で特に著しい)。

声6: 高齢者支援 と 人口留保 を両立させることは難しい(係り: 人は更年期を過ぎれば下り坂になり、いずれ消えて行くのが運命だ … 支援すれば、死が先延ばしになり 当然の事ながら 老人人口は増える ... 介護保険で老人人口は、昔 4 % 、今 7倍 の 26 % 、先行き 46 % まで増え、お目出度い限りであるが、もし 隣の国が攻めて来たら ’若者不足 ! ’で 万事休す、だ)。

声7: 今後、ベイビーブームが訪れてくれば 日本は豊かになるか?(係り: 今の赤ちゃん誕生は 一年 に 100万人 、昔のブーム時は 一年 に 270万人 … まったく夢のまた夢 ! )。

声8: 合計特殊出生率 を 2.2 以上に保つことが国の安定に欠かせない(係り: 理事長夫妻は 兄弟姉妹の合算 が 17人 だ … ここでも、夢よ 今一度 ! )。
福祉元年は 1973年
声9: “何かを得る” とは “何かを失う” と言うことと同じだ ―― 高齢者福祉 が充実すれば 幼少者の福祉 は当然 劣化する(係り: この現象を 「トレードオフ」 と呼び、「取り引き 、妥協」 あるいは 「二律背反」 などと翻訳される… 欧米は 「寝たきり老人ナシ」 を選んだが、日本は 「寝たきり老人アリ」 を選んだ 2 ) ―― 老人と子供の両方を選ぶことはできないし、もし両方を選べば 国が崩壊するよね)。

参考: 1 ) 新谷: 「なぜ少子化?」 ;福祉の安全管理 # 522, 2015.  2 ) 新谷:「和魂和才は続けられるの?」; 福祉の安全管理 # 566、2016.
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ふじひろパール

Author:ふじひろパール
「ふじ」=新谷冨士雄
「ひろ」=新谷弘子

社会福祉法人 パール
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