FC2ブログ

(579) 屈 折 年 齢 と 福 祉

(579) 屈 折 年 齢 と 福 祉 

皆さん方は 「屈折年齢」 なんて聞いたことがないだろう。今日のお話のあと、たぶん 「なるほど ! 」 と思われるに違いない。

♣ まず、日本の過去の 「人口ピラミッド」 を “10年おき” に記録した有様を観察しよう (図 1 )。① {1945年、終戦の年}: 男 20歳代 の部分が削り取られている … 戦争の影響は歴然だが、基本的には 「典型的な三角形のピラミッド」 である: 以後、10年 おきに観察すると、欠損した男の部分は上方へ移動し、70年後 には 消えてしまった。
屈折年齢と福祉

♣ ② {1955年} : 第一次の “団塊児” がピラミッドの基礎部に参加した: それを 10年 おきに追跡すると、どんどん上方に移動する。30年後 の 1985年 には、第二次の “団塊児” がピラミッドの底に加わった。

♣ ③ {2005年}: 介護保険がスタートして 5年目 だ … 第一次・ 二次の “団塊グループ” がピラミッドの中腹を占め、国の生産性は最大化した。しかし、ピラミッドの上部は ① に比べて6倍 も太くなり、ピラミッドの底は 1/2 に減り、いわゆる 「多々老・ 少子パターン」 が鮮明となった。

♣ ④ 図・ 2010年 ピラミッドは ほぼ現在の状態を表している: 注目の 第一点 = ピラミッドの形は、三角形から だんだんと形が崩れ、“提灯型” に変わり、ピラミッドの面積は初期の 約 2倍 に増えたこと(人口が 2倍 ); 第二点 は ピラミッドの頂点である 100歳 年齢 の人は “目に見えて増えてはいないこと” (平均寿命は著しく上がったが、最大年齢は あまり変わっていない)。
屈折年齢と福祉

♣ 最後の 第三点 は 一番大事な所見 であるが、―― 老年 (65歳) の始まる点から 100歳 に向かって ほぼ 「直線的に人口が減っている」 のに気付くであろう。 図 2 は、その有様を詳しく見るために、ピラミッドの左半分 (男性部分) を切り取って右に 90度 傾けた図 を示す。0歳 から 70歳 までは、社会状況によって 人口の凹凸 が見られるが、70歳 を越えた頃 以降は、 凹凸もほとんどなく、100歳 に向かって 直線的に低下している ―― つまり、人々は それぞれの寿命を迎えて ピラミッドの図から 徐々に消えて行ったことを反映している1 )

屈折年齢

♣ このように、人口が年齢とともに 直線的に減衰 してゼロに向かう部分 にヒントを得て、諸外国の人口ピラミッドの代表的特徴を検討したものが 図 3 である 2 ) 。これら 七つの図 は、ピラミッドの頂点 (およそ 100歳) から下方に向かう直線部分の長さの順によって並べてある (左上の 日本 ... → イタリア ...→ 右下のアフリカ)。その直線部分は、頂上から そこに進んだあと、折れ曲がって下方に繋がっている。その折れ曲がった部位bend) が どの年齢に相当するかに注目して欲しい( = 屈折年齢 と名付ける)。

♣ 日本とスエーデンは、ピラミッド全体のパターンは異なるが、屈折年齢 は 70歳 近辺である点は類似である。同じような目で他の国のピラミッドを観察すると、屈折年齢は アメリカ = 60歳、 イタリア = 50歳 … であり、アフリカの屈折年齢は 0歳 だ(各国の屈折年齢は図の下方の数字で表した)。

♣ 屈折年齢の差は何を意味している のであろうか? たとえば、日本の場合、0歳 から 70歳 までの人口は、時代の影響を受けて 凹凸があるけれど、70歳 を越えると、毎年 3 % 強の人が世を去っている (70歳 人口を 100 % とすれば 30年間 で 0 % になる率)。同じく、イタリアでは 50歳 以後 毎年 2% ずつが、アフリカでは 出生直後から 毎年平均 1 % ずつが死亡していく(→ 典型的な三角形のピラミッド)。

♣ 振り返って、図 1 の1950年前後 の日本の人口ピラミッドを見ると、これは 屈折年齢ゼロの典型的な 三角形のピラミッドそのものであった ! この三角形が 戦後 70年 の歳月をかけて 屈折年齢 70歳 の現在の形に移行したのである。つまり、屈折年齢が ゼロから上方に移動することは とりもなおさず、社会構造が “低福祉” から “高福祉” に移行 した結果を暗示すものではなかろうか?

屈折年齢と福祉

♣ “屈折 ” という名称はアフリカの ダハシュール にある “屈折ピラミッド” (Bent Pyramid、図 4) の形状から得たものであって、福祉とは何の関係を示すものではない。しかし、世界の諸国が 様々な屈折年齢レベルを示すことから 2 ) 、国々の福祉 進展度を表す 分かりやすい一つのイメージ」 になるだろう。

♣ 屈折年齢の今後は どうなる だろうか?人々は 健康な長寿を求めているから、屈折年齢は年ごとに上がって行くに違いない。 ただし人間の天寿はおよそ 100歳 を大幅に越えることは 生理的に不可能だろうから、屈折年齢は今後 ますます 100歳 の天寿に近づくけれど、100歳を越えることはないだろう。つまり、人々は 延長された屈折年齢 ( = 健康寿命) を享受したあと、短縮された非健康寿命 (ジワコロ期間) を経て 天寿を全うするようになるのではないか?しかも、これこそが 福祉の至高目標 なのではないだろうか?1998字  

要約:  世界の代表的な人口ピラミッドを観察すると、いずれにも老年人口が直線的に低下し始める時期が見られ、その “曲がり年代” (bend) を 「屈折年齢」 と考えた。屈折年齢は、0歳 から 70歳代 までに分布し、それぞれの数値は 各国の福祉の進展度を代表する指標として役立つと思われた。 日本の屈折年齢 70歳 はスエーデンのそれと並ぶ 高度福祉の進展国であることが伺われた。 屈折年齢が上昇すれば するほど、人々の 天寿に至るまでの非健康期間 (ジワコロ期間) は 短くなるのでは ないか。 

 参考:  1 ) 新谷:「70歳の壁」;福祉の安全管理 # 573, 2016. 2 ) United Nations; 「人口 ピラミッド、世界 2016」、Madewulf. 2016.

職員の声

声1: 私は 「屈折年齢」 と言う言葉を初めて聞く; 世界各国の福祉発展をよく反映する指標であると思い、興味をそそられた(係り: 従来の人口ピラミッドは、福祉の進展により 「三角ピラミッド型・ 蛸壺型・ 逆さ三角型」 などと表現されていたが、単に 「型」 を言うだけでなく、国民の 健康 ・ 天寿への筋道 が読み取れる 「屈折年齢」 の考え方は優れた見解の導入である)。

声2: アフリカや終戦直後の日本は、屈折年齢は 0歳 で、誕生後 すぐ毎年 1 % ずつ亡くなる、とは驚いた … アフリカが こんなに早く死に始めるのでは 「介護」 は必要ないのか?(係り: 少なくとも “老人介護” は発達しないだろう)。

声3: “人生 50歳 ” は日本の戦前の型だった … それは、現在の イタリア型 なのか?(係り: ヨーロッパ諸国は 概してスエーデン型 (70歳)であるが、イタリアは屈折年齢がやや低くて 50歳 だ)。

声4: 屈折年齢は国々によってバラつくが、世界人口の中では均衡が取れているのだろうか?(係り: 大昔なら 国によらず すべての屈折年齢は 0歳 だった だろうが、たぶん 社会保障の進捗次第で それは上がって来たのだろう)。

声5: 日本は 屈折年齢が 70歳 に達した後、毎年 3.3 % ずつ減っていくが、この減少は改善できないか?(係り: よーく 図をみつめること ! 日本の屈折年齢とは “人口が直線的に減り始める年齢 = 70歳 ” であり、他方 人間の天寿を 100歳 と仮定すれば、それまでの 30年間 で人口が ゼロ になるから (100 % 割る 30年 = 3.3% / 年)、統計的に 3.3 という数字はいじれない ―― もしイタリアのように、屈折年齢が 50歳 なら 100歳 に至るまで 50年ほど あるので、この数値は毎年 2 % になる ( 100 割る 50年 = 2 % / 年); 同じように アフリカは毎年 1 % だ)。

声6: “中福祉” で、ほどほど に生きられる社会がちょうど良い(係り: 確かにナー ! “高福祉” は、‘聞こえ’ は良いが、“寝たきり期間” が長くて かなわんわ ! )。

声7: 「ただ ひたすら 生き永らえているだけ」 の老人の増加に ‘歯止め’ が掛からない … もっと 「働ける老人」 を増やしたい(係り: おっしゃる通りだ … しかし大きな問題もある ―― つまり人間は 85歳 で 約半数 が認知症にかかってしまうので、超高齢者の労働力は あまり 当て にならないのだ … “食っちゃ寝” しか能がなくなる)。

声8: 私の理想は 「アメリカ型」 だ、だって ① 定年 60歳 まで生きられて、そのあと人口が減り始めるのは 「理」 に叶っている、② 子供の数が健全に確保されている、③ 高齢福祉を必ずしも 全国民に強制 していない (係り: すごい点を見抜いた ! )。

声9: 結局、屈折年齢で言えることは、(イ) 屈折年齢が高いほど ‘福祉’ が徹底している国家といえるだろう、(ロ) 人間の天寿は 100歳以下 だから、屈折年齢の上限は それを越えない、(ハ) 屈折年齢があまり上がりすぎると、福祉の メリット (健康) と デメリット (経費) のバランスが崩れるかも知れない ―― 75歳 あたりが至適ですかな?)。
プロフィール

ふじひろパール

Author:ふじひろパール
「ふじ」=新谷冨士雄
「ひろ」=新谷弘子

社会福祉法人 パール
安全管理 ふじひろのページ

最新記事
全ての記事一覧
月別アーカイブ
カテゴリ
リンク
QRコード
QR