FC2ブログ

(577) ジ ワ コ ロ で 満 足 ?

(577) jジ ワ コ ロ で 満 足 ?    
                
 介護施設で働く職員たちは、ご自分のピンコロを切実に願望する。ナゼだろう?

♣ それは、お世話する ほとんどのお年寄りが 長患いで 痩せ細って 手当の限りを尽くしても ものも言えないまま 逝ってしまわれるからだ。病院で亡くなる場合でも、スパゲッティ状態 で管理され ものも言えないまま 命を終えるのを見る。

♣ 2400 年 前、お釈迦様は 「生老病死」 とおっしゃって、「死」 を人の悩みの中心に定められたが、死への 「対応儀式」 は 昔も今も 大変だ。だから 自分の場合は、死の直前まで ピンピン と元気、そして何を考える暇もなく コロッ と行きたい ―― これは ごくごく自然の願望であろう。

♣ ところが 現実はどうだろうか?パールでは 介護保険のスタート以来 17 年 間、たった一例の 「ピンコロ」 が観察されたのみである ! その方は 86 歳 女性、認知症・ 大動脈瘤の陰影あり; 要介護 3; 歩行は自由、杖は飾りのみで、体格指数(BM I)は 27.9 の肥満を減量中であった。大学病院の定期受診で安定状態と告げられていたが、その翌朝 食事を前にして 即死 ! 大学で 動脈瘤破裂によるとの診断であり、ご家族・ 近親の嘆きは言葉にならなかった。
ピンコロで満足?
図 1 は死亡原因を表すが、時計の 12 時 から右回り 8時 までは 主に老人の死亡 である。この中で 「ピンコロ」 に該当するものは、8時 の位置の “不慮の事故” 及び 9 時 の位置の “大動脈瘤” であり、他のすべては 「じわコロ」 1 ) である。ピンコロを人々が好む傾向があるとは言え、警察の介入する 変死 は 誰も好まないし、大動脈破裂 も ウエルカム とは言えないだろう? 変死の頻度は稀であり、夢を見るほどに ピンコロは美 しい死ではない。

♣ 日本では 年間 死亡数は 約 110 万人 で、およそ 半数が病気、残る半数は 「老衰」 である。病気のうち ガン (約 30 万人)、心不全 (約 20 万人)、重症の脳発作 (約 10 万人)は 皆 「じわコロ」 だ。「老衰」 はもちろんの事 「じわコロ」 であり、病気の平均期間は 男 9 年 ・ 女 13 年 の長きに及ぶ。この実態は決してウエルカムではないけれど、日本人が 世界一長命 であるのは 主に 「じわコロ」 期間が長いから なのである。
ピンコロで満足?

♣ したがって、死亡原因の中に ピンコロ が入り込む余地は ほとんどないけれど、人間は アマノジャク なのか、ぴんころ地蔵尊 や ぽっくり寺 に参拝する ツアー が ますます増えているという(図 2)。なるほど、老人に限らず 人は 家族に迷惑をかけず、病気や介護で苦しまずに逝けるように ピンコロ を願うのは当たり前ではあろう。だが、「高齢 + ピンコロ」 の両方を同時達成する のは かなり 稀なケース であって、お寺や地蔵さまにお詣りしたからと言っても その達成は 願い下げ になってしまうだろう。

♣ では、私たちに必要な “現実の覚悟” は何なのであろうか? 死亡診断書で多い 「老衰」 の真実を見てみよう。長い 「寝たきり」 のあとでの診断病名で 統計的に多いのは 「心不全」 であるが、たいていの場合は やっぱり 「老衰」 なのであって、心疾患であることは少なく、「呼吸不全」 でも同じく、である。

ピンコロで満足?

♣ 本当の実態の 8 割 程度は 「食事の不具合」 = 嚥下(えんげ)不全に基づく 「誤嚥性肺炎」 と それによる 慢性の体力消耗 である。この場合、早くて一年 、 ふつう 数年かかって逝く経過となり、まさに 「老衰」 というイメージ そのものである。図 3 に示した 二つの症例 は それを代表する症例である 3 ) 。図の上の例は 94 歳 女性、認知症: 8 年 に亙ってBM I = 20 と安定した正常、8年 目に 誤嚥 → 体調失速、1 年 後 にBM I = 12 で逝去。下の例は 96 歳 の女性、認知症: 10 年 かけて体重が漸減、BM I = 12 で死亡。”生と死の狭間”は BM I = 12 であった 3 ) !

♣ でも ご心配なく ! 老人を よく観察して見られよ … 85 歳 人口の 約半数 弱 が、100 歳 の 約 8 割 が“認知症” を患っておられ 4 ) 、「見当識の障害」 がある ―― つまり、「時の見当」 は失なわれており、ご自分が 将来 死ぬ運命 にある事を理解できていない。若いあなたは 先行きの事が心配だろうけれど、そこはうまくしたもので、 「超高齢とは 時を失う年齢」 の事なのであって、ご本人はちっとも 先行きを悩まず 幸せ なのである。この幸せこそ 「神の最大の 有難い 贈り物 = 認知症」 なのではないか?

♣ 人間の ‘願いと行い’ は、しばしば矛盾に満ちみちている。多くの老人は、口を開けば ピンコロ願望で、「長生きさせられている」 現状に “幸せ を感じない”、と言うが、 歳をとるにつれ、 結果的に 「じわコロ」 人生 を 不自由なく歩む … つまり 長生き → 認知症 → ピンコロ希望を忘却 → たっぷり ジワころ → 他人迷惑も どっさりだ。

♣ 良いではないか ! … 私たちは そんな老人を ちっとも責めてはいない ―― これこそ 人生の理(ことわり)であって、ピンコロ願望 も 終末の 「肺炎」 も みんな了解されている生命現象であり、矛盾に悩む必要は全くないのである。1998字

  要約:  人は 尋ねられると ピンコロ願望 であるが、現実のピンコロは極めて稀な現象である。  超高齢で 圧倒的に多い病名は 「老衰」 であるが、その実態の多くは 「誤嚥性肺炎」 と それによる 「慢性の体力消耗」 である。超高齢では 認知症が ほぼ 必発 であり、“時間の見当識” を失う ―― つまり、以前の ピンコロ願望を すっかり忘れており、ごく常識的な 「じわコロ」 によって 人並みの静かな人生を閉じる。

   参考:  1) 新谷:「ピンピンコロリの現実」; 福祉の安全管理 # 481, 2015. 2 ) 新谷:「中核症状・周辺症状の おさらい」; ibido # 558, 2016. 3 ) 新谷:「体格指数(B.M.I.)から見る 生と死の狭間」; 老人ケア研究、 #33: 13~23, 2010. 4 ) Robert Epstein: “Brutal Truths About the Aging Brain”; Discover October 48, 2012.

職員の声

声1: 老衰の多くが “誤嚥性肺炎” を患い、ジワコロの経過で亡くなることを 私は 初めて知った(係り: こんな事実が ナゼか 教科書には書かれていない ! )。

声2: 認知症もジワコロもイヤ ! 私はクリアな頭で逝きたい(係り: 何をおっしゃる?認知症は 「神様 最大の有難い贈り物」 でありますぞ ! )。

声3: ピンコロは望んでも叶わないし、家族にとってもピンコロは悲しい … ゆっくりと逝って下さい(係り: ご本人と ご家族の希望が一致しない場合、どっちが選ばれるべきでしょうか?)。

声4: 私の運命は きっとジワコロなので、皆様方にご迷惑が掛からないように神様に祈っている(係り: あなたはナースとして立派な仕事をなされて来たので、きっと ご幸運に恵まれます)。

声5: 私はピンコロ願望だが、理事長が言われたように、歳をとればキットその願望を忘れ、周りに迷惑をかけかけ ジワコロの結果になるのかなー?(係り: 特養の入居者で 今更 ピンコロを求める方は ゼロ … 参考データとして:――パール特養の “ジワコロ・ レベル” は、平均入所期間は 3.6年 、半数は “要介護 5” 、一番長いご滞在は 17年 である)。

声6: 私の担当ケースを紹介: エレベーターの数字も分からず、歩行も弱々しいご婦人 … 「お迎えの日」 を待ち望んでおられるが、病院通いは 几帳面 だ(係り: どんなに苦しくても、人は 「生」 と 「死」 のうち、「ジワコロ」 を選ばざるを得ない ―― 他人様は “お迎えが欲しければ 病院通いをやめたら?” と思うようだが、これは あながち矛盾ではない ! )。

声7: 北欧の施設 のように、食事を目の前にお届けするだけなら (食事介助はしない) 、ジワコロ期間は著しく短縮されるだろう(係り: ということは、要介護 4 ・ 5 を廃止するということだが、それは日本の 国民倫理 に反する)。

声8 : 現実には ジワコロが多いのだから、ジワコロを肯定する 社会的度量 が必要ではないか?(係り: 日本の平均ジワコロ期間は 男性 9 年、女性 13 年 であり、世界一 長い ! パールでは最長が 17 年 (予算でいえば 500 万円×17 年 = 8,500 万円 が 過去の経費 ―― お一人の老女への予算が これで良いのか悪いのかを越え、国の存廃が問われている)。

声9: 日本の女性平均年齢は 86 歳 で世界一だが、‘幸せ’ も世界一だろうか?(係り: 核心を衝くご意見; だが残念ながら 本人に ‘幸せ’ を問うても 認知症のため、答えは無い ―― 平均寿命も この数年 86 歳 で停止している … 介護総予算の 10 兆円 は 「延命効果」 を求めるためでなく、「高齢者への礼儀」 としての支出であろう)。
    これは 国家税収の 約 2 割 : ちなみに 「国防予算」は 5 兆円。
プロフィール

ふじひろパール

Author:ふじひろパール
「ふじ」=新谷冨士雄
「ひろ」=新谷弘子

社会福祉法人 パール
安全管理 ふじひろのページ

最新記事
全ての記事一覧
月別アーカイブ
カテゴリ
リンク
QRコード
QR