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(586) タ ダ の 混 乱

(586) タ ダ の 混 乱
                   
もう だいぶ 昔になるが、私(弘子)の 3 歳 の次女が保育所で育っていた頃の話だ。

♣ 夜遅く、会社帰りのお父さんが幼い子供の手を引いて保育所から出てきた。髪も乱れ、暗い表情で向こうのほうへ、トボトボと 歩いて行った。きっと彼は疲れていたのだろう; 「子育ては国がタダで行うべきだ . . . 」 とつぶやいていた。私も苦しい状況は同じだったから、そのお父さんの気持ちは良く分かったけれど、疑問も感じた。だって、「国が子供をタダで育てる」 といえば、2500 年 まえの ギリシャ の都市国家スパルタ を思い出したからである。

♣ スパルタ では、子が生まれると、国の年寄りが検査をし、肉体的に劣る子は谷に捨てた、という。乳児期を過ぎた男の子は国が一括 して 「タダで」 預かり、教育をほどこし、スパルタのために役立つ闘士に育て上げた。その国力の結果、先輩格であった都市国家の アテネ を圧倒 し、スパルタはギリシャ半島の覇権を握った ―― スパルタ主義の立派な成果であろう。しかし、一世紀後には、北国 トラキア の アレキサンダー大王 に敗れ、以後、歴史のおもてから消えてしまった。

タダの混乱

♣ 「タダほど高いものはない」 と、よく言われる。他の例をあげよう:―― 昭和 4 7年(1972年)、美濃部都政 が高齢者医療をタダにした。すると本来、受診する必要のない老人までもがどっと病院に押し寄せ、病院の待合室は年寄りの サロンと化 した。このため、本当に医療が必要な患者さんの診療に大きな支障が発生した。つまり東京都としては、サロンに来る年寄りと、病気の年寄りの両方に 手間とお金がかかるようになった訳だ。

♣ 近年の 「小児医療無料化」 の動きも同じ轍を踏むようにみえる。現在の専門化医療は、昔よりさらに複雑化している。経験的に自然治癒することが分かっている病気であっても、なにしろタダだから、親は単なる救急医では満足せず、小児科医で、かつ その病気の専門の診察を求めようとする : 「専門の先生、休暇でいない? じゃ呼び出してよ!」 。 このため、小児専門医は疲労困憊(こんぱい) し、本来の専門分野での医療がおろそかになり、助かるべき患者が苦しむ。産科についても事情は同じである。

♣ 「すべての医療をタダにする」 ―― 結構だ ! 素的なことだ ! でも、疑ってみることも大事だ。それって、競争原理 が働かなくなる。無駄がふえ、も落ちてもチェックできない; このことは 天下りの官僚を見ていれば想像がつくだろう。いくら病院といえども、消費税を払わねばならない … 社会の経済枠を乗り越えなければならない。

♣ 医療コストはみんなで負担? みんなって誰だろう? 所得のない人からも取るのだろうか? 医療費をタダにすれば、コストは 「無制限に膨らんで行く」 だろう。 「衣食住」 の場合には、おのずと消費の限度があるから、タダの政策があっても良いかも知れない。しかし、「医」 にタダを求めることは、命や健康が関わっているので、だれもが 「王様や殿様レベル」 の平等を求めることに他ならない。

♣ 安全管理 (# 3) で、私は 「ソロモン大王の介護」 というお話をした。それは、3000 年 まえ、ソロモン大王が年老いて、体温が下がってきたときの介護の方法として、「若い女性二人を 裸にして王の傍に寝かせ、体温をお移し申し上げた」 のだ。 「タダ」 になると、万民がこのレベルの医療と介護を要求するようになる。大混乱は必至だ !

♣ 日本の厚労省は、用心深く 「医療費亡国論」 、「介護費亡国論」 を掲げて、自分に責任が掛からないよう、煙幕を張っている。それもこれも 「タダのツケ」 を払わされてはかなわないからだ。

♣ 私どもは、素朴に 「タダほど高いものはナイ !!」 と理解すれば、「タダの混乱」 は避けられると思う。どんなことでも、「無理のないコスト意識」 を念頭に設定して置くことが、事物判断の本質に関わる、と私は感じている。1590字 

要約: タダを希望する4っつの例 (保育所・スパルタ・老人・子供)  タダにするための財源をどこに求めるか?  厚労省の煙幕は 「医療費亡国論」 と 「介護費亡国論」 。

職員の声
声1: タダの場合、誰かがその価値の大きさを失うし、別のどこかで 必ず 「シワ寄せ」 が発生する(係り: つまりタダのモノは ① 価値が無いか、または ② 所有者が価値を放棄する訳で、① の場合は ’責任’ があいまいになり、② の場合 ムリ が無いことを必要とする)。

声2: 私が子供の頃、モノの借り貸しが頻繁だったが、決してタダではなく、必ず “お返し” があった(係り: 現今の 「タダ」 は 「タダ取り、ぼったくりのタダ」 が多く、心が汚い … “お返しする” という 感謝の心 が欠如している)。

声3: 研修会の費用にしても、自腹で参加すれば ‘居眠り’ で終始することはない ―― 何事もタダは駄目である ! (係り: 人間は ‘性善説’ でも ‘性悪説’ でもなく、誰が教えなくても 「理」 が自然に通れば 美しく行動するものだ)。

声4: 日本の介護費用は安いけれど、外国の人が学んでくれるだろうか?(係り: 日本の介護は 「延命」 が基本理念だから、外国人は学べないだろう ―― 食事介助に おんぶに抱っこ 乳母車 で、甘やかし介護は世界で通用しない)。 
プロフィール

ふじひろパール

Author:ふじひろパール
「ふじ」=新谷冨士雄
「ひろ」=新谷弘子

社会福祉法人 パール
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