(599) 長生きできれば 病気でも構わない

   (599) 長生きできれば 病気でも構わない  
  
前回の “安全管理” は「福祉は “じわコロ” を優先か?」であった。目覚めるような所見は ヒトの病気寿命が 男 9 年、女 13 年という想像を越える長期間であることであった。“職員の声” としては「そんなに長い実体があるとは知らなかった . . . やりきれない . . . 何とか病気を短くする方法はないのか?」 というものであった。

病気寿命は 長引くのみ

♣ ここで再確認するが()、ヒトの寿命は「健康寿命と病気寿命の和」であり、健康寿命とは “健康上の問題がなく日常生活を普通に送れる状態 ” を指す(WHO)。病気寿命の実例としてパール入所の 90 歳代 の 4 例 を挙げれば、M 氏 93F = 20 年間、I 氏 95F = 17 年間、N 氏 97F=17 年間、K 氏 104F = 13間年、等であり、ふだん気づくことはないけれど、改めて病気寿命が軒並みに長いことに驚く。

♣ 先回の結論は ① ヒトは建て前として病気はイヤ (病気寿命は短く) を切望するが ② もし病気になれば、簡単に逝くのはイヤ、良い治療と介護を受け、病気であっても長生きしたい、という完全な矛盾なのであった。要するに「何が何であれ、生きていたい」 …. その気持ちは分かるが、福祉の方針として どちらを優先すればいいのだろうか?せっかく世界一の長寿を誇る日本女性でありながら、その実態が “世界一長い病気寿命” であっては威張ることはできまい。

♣ そこでヒトの希望は病気寿命の期間の せめて一部を健康寿命に繰り込みたいということになる。具体的にいえば、上記の女性で、病気寿命を半分の 6 年 にできれば健康寿命を 73 年 から 80 年 に延ばすことができるのではないか?

♣ さらには、病気寿命を 0 にできれば (ピンコロで死ぬこと) 、女性の 86 年 の全寿命を健康に過ごすことができるではないか?つまり、このことを言葉で言えば「これ以上望めない最良の延寿法」であり「人類の夢」そのものである ! 人類はこの点に関して 20 世紀 に著しい発展をみせ、日本で言えば、戦前の昭和 15 年 の平均年齢は 43 歳 であったものが、現在はほとんど 2 倍 の 86 歳 に達している。だが、女性たちは これでも まだ足らないと言う。それなら人間の寿命の構造を覗いてみよう。

♣ 男女別に過去の「寿命の年次経過」を見ると、男の寿命延長は “毎年 3.0ヶ月 ”・ その内 0.5ヶ月 は病気寿命の延びであった。女は “毎年 3.5ヶ月 ”・その内 2.0ヶ月 は病気寿命であった。換言すれば、戦後 男女の寿命は著しく延びたけれど その内の半分近くは病気寿命の延長であったのだ。

♣ その説明はいろんな立場からなされるだろうが、我々が身の回りの老人を観察してみると、これは もっともらしい所見と言える。一口でいえば、(イ) 現在、ヒトが死ぬ前には 男 9年 ・ 女 13年 ほど他人様へ依存する病気寿命がある; (ロ)男は女より短命で、病気になれば、4 年 も早くバテやすい、となる。

♣ ここで人生 50 年 だった その昔を振り返ってみる。その頃には健康寿命などの概念も また統計もなかったが、現在の女性のように 病気寿命 13年 ということはありえなかった。昔にも結核などの病気はあったが、医療レベルは各段に低く、介護保険はなかったので、病気寿命は 平均すれば 1 年 もなかっただろう。その後、平均寿命の延長に伴い 影のように病気寿命が付きまとうようになり、現在それが 男 9年 ・ 女 13 年 に延長したのである ―― 単純に健康なまま長生きすることは出来ないようだ。医療・ 介護が発達すればするほど、延びた寿命の半分は “病気” になってしまった。

♣ では、今後はどうなるだろうか? ここで仮に 平均寿命 100 歳 に、あるいは 110 歳 になったものとしよう。その年齢の老人は たぶん 完全に 他人様のお世話なしでは生存できない ―― つまり、人間、ある年齢( たぶん90歳頃) を越えると もう健康寿命の増加は期待できなくなり、あるものは病気寿命が増えるだけの余生となるのである。

♣ パールに入居されている 一女性 M氏 93 歳 は「くも膜下出血後の認知症」ですでに 20 年 の病気寿命を辿っておられるが、今後とも自立できる見込みはない。我々は 病気寿命を治療によって なんとか健康寿命に転換したいと願うが、高齢化が日々進むこの頃、そのハードルは極めて高いのだ。

♣ みんな、口では簡単に「病気寿命はイヤ、健康なまま一生を過ごしたい」とおっしゃるが、どんなに日々介護に勤しんでも、増えるのは病気寿命だけ、これが現実なのである。それは悲しい事であるが、他にどんな選択肢があるのだろうか? 1882字 

結論:   平均寿命は戦後 目覚しく延びてきたが、それに連れて病気寿命も延びてきた。 病気寿命は現在 男 9 年・ 女 13 年 に及ぶが、ヒトは何とかして病気寿命を短縮し、その短縮分を健康寿命に繰り込みたいと願う。 介護保険の主旨は「老人の自立支援を援助すること」であるが、「長生きを望めば病気寿命も延びる」という、 「自立」とは相反する矛盾に阻まれ、両者をどのように調和させるのが良いのかが 今後の課題となる。

職員の声
声1: 男の寿命が女のそれより 4 年も短いのは、男が 酒・ 煙草・ 過食・ 過労などで寿命を縮めているからなのか?(係り: これは「生活習慣病」として全世界的に認められていることだ;特にロシアでは平均寿命が 男 63 歳 ・ 女 75歳 なのである)。

声2: ヒトは健康寿命を長く、病気寿命は 短くしたいと願うが、いったん病気になってしまえば 病気のままでもよいから、長生きしたいと願うものだ… 介護は “病気寿命” を長引かせる効果しかないが矛盾はないか?(係り: お金は掛かるが、要するに人は理屈抜きで長生きしたい のである ! )。

声3: 日本は平均寿命が世界一に延びた ! と浮かれている人が多い… 実は病気寿命も世界一長いということをもっと周知させることが必要だ(係り: “食っちゃ寝” の 長生きというところか)。

声4: お年寄りが 末永く元気でいたいという気持ちと、最後はポックリ逝きたいという気持ちはとてもよく理解できるが、それは無茶苦茶な「二律背反」である(係り: しかし理屈抜きで「長生したい」と言う気持ちを支えてあげたい)。
 
プロフィール

ふじひろパール

Author:ふじひろパール
「ふじ」=新谷冨士雄
「ひろ」=新谷弘子

社会福祉法人 パール
安全管理 ふじひろのページ

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