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(108) クオ・ワディス と 緑革命

   (108) クオ・ ワディス と 緑革命

「クオ・ ワディス」とは、ポーランドの作家・ シンケビッチ が書いた小説の名前である。

♣ 二千年 前、ローマで弾圧され殺される信者たちを見捨てて、ローマに背を向け逃走中の 使徒ペテロ 、ふと目の前に現れ ローマに向かう キリスト の姿を見、「主よ、いずこに行かれるや?」( = クオ・ ワディス・ ドミネ? ) と尋ね、自分の「いくじない心」を反省する有様を描く。

♣ 今日は、「クオ・ ワディス」に因んで 過去 50 年間に 二度 あった「緑革命」を考える。緑革命とは、赤い革命と異なり、政治革命ではなく、農業革命である。

♣ 200 年 まえ、イギリスの 経済学者 トーマス・ マルサス は有名な法則を導いた: 人間の数は「等比級数的」に増えようとするが、食糧の増産は「等差級数的」にしか増えない、というものである。つまり、ほっておけば、人間はネズミ算のように増えるが、食糧補給がそれに追いつかない、と主張する。

♣ 200 年 まえのイギリスでは、農地開拓を追い越しての「子沢山」であり、この状態は以後、世界中で 150 年間 も続き、戦乱の源となった。ところが 50 年 まえ(1960年 ころ)、第一次「緑革命」 1) が起こった。それは農業生産に 農業科学の成果である雑種で強いタネを用いる、 肥料・ 給水・ 殺虫剤 を工夫する、というものであった。これで世界の食糧は 3 倍 に増えた と言われる()。世界人口も 10 億 から 30 億 の 3 倍 に増えた。でも世界の空腹な人々も 3 倍 に増えたのだ。
クオ・ワディスと緑革命

♣ 20 年 まえ、こんどは第二次「緑革命」が起こった。その原理は「遺伝子改良」である。荒れた土地、乾いた土地、人手の足らない土地 . . . で、みごとに 2 倍 の食糧増産ができた。今、私たちが食べている穀物の相当量は遺伝子改良によるものだ。このお蔭で、世界の人口は 30 億人 から 60 億人 に増えた。ありがたいことだ。

♣ でも、世界で空腹な人口も、ご存じのように、ますます増え続けている。だから、次には「第三次の緑革命」が期待され、その結果、人口は 9 0億人 が予想されている 2) 。しかし、これで、いいのだろうか? 有限の地球の土地、次の緑革命が果たして適切なのだろうか?

♣ ここで人々は、初めて 自分たちが正しい望みを立てているのかどうかを、考え始めた。それは地球環境 (エコ) から来た悩みである。これぞ 現代版の「クオ・ ワディス・ ポプリ?」( = 人々よ、どこに行くのか? )である。

♣ 日本だけを見よう。明治維新までは、緑革命がなかったので、日本の人口は 3000 万人 で、ずっと頭打ちだった。その後「産めよ、増やせよ」の国策とともに、6000 万人 まで増え、戦前の 1940 年 には 朝鮮・ 台湾・ 樺太 の人口を含めて1 億人 になった。

♣ 敗戦後、日本の人口は、元の 6000 万人 に戻ったが、その後の繁栄によって現在、1億 2000 万人 までに増えた。最近の問題は、人口そのものではなく、その年齢構成にある。赤ちゃんの数は思うように増えず、他方、お年寄りは従来の 2 倍 もの長生きになった。それは日本の GDP が世界有数の大金持ちになったからこそ可能になったのである。

♣ でも、金持ちは “少子高齢” と関係あるのか? ――あるのだ ! なぜって 人は誰も長生きしたいのだし、赤ちゃんを産み育てるのは面倒だから、こうなるのだ。つまり、日本の人口も上記の「第三次緑革命」と全く同じ問題を背負っているのであって、これは 一言で言えば「多々老・ 少子化」の矛盾と言える。

♣ 日本は戦後、平和と勤勉 によって富を得、みんな幸せに長生きするようになり、平均寿命は 45 歳 から 86 歳 まで、およそ倍増した。しかし、さすがに みんなが高齢になると、ここで「老人介護の問題」に直面し、その解決法として「介護保険」が施行され、結果、幸せが戻ってきた。だが、老人たちは 進行する身体の老化衰弱にも拘わらず、飽くなき長寿を求める。クオ・ ワディス?(あなたがたは どうしたいと言うのか?)、 この質問は これからもずっと続くだろう。

♣ 私たちは食糧と長寿の問題を解決したが、現在の寿命を更に延伸させたい人々の願望にほとほと困惑している。なぜなら、医療・ 看護・ 介護 は月進・ 年歩 し得るものの、肝心の「願い人 (びと) の身体」は老衰の極みに達し、90 歳 を越える多数派の人々は 長生きのために他人のケアが欠かせない状態に陥っているからである。

♣ クオ・ワディス (いずこに行くや?) と自問自答するに、「今や、人の寿命、これ ここに極まれり!」という現実を感じざるを得ない事態になっているのである。1820字 

要約:  困難に背を向けてローマから逃げようとした 使徒ペテロ の前に キリスト が姿を現した――ペテロは思わず尋ねた:ク オ・ワディス? (主よ、いずこに行かれるや? )。 人は二度にわたる “緑革命” で現在の繁栄を得たが、有限の土地の上で 更なる緑革命の繁栄を重ねられるか? 人は積年の望みを叶えられ、寿命は 倍増・ 体は老衰の極み に達した … にも拘わらず人々は更なる延寿を求める … クオ・ワディス?

参考 : 1) Joel K. Bourne, Jr. : “The end of plenty” ; National Geographic, June 26~59, 2009. 2) Robert Kunzig : “There will soon be seven billion people on the planet” , National Geographic, January 32~69, 2011.

職員の声

声1: クオ・ワディスとは「いずこに行かれるや?」という意味――老人も その倅・娘 (せがれ・むすめ) も超高齢者の時代だ … 共に老人なのに “自立せよ、だと?”(係り: それが介護保険の設立趣旨である … いつまでも 他人依存を続ければ 国もあなた方も 共倒れだ)。

声2: 第一次・二次の緑革命は理解した … 第三次革命で人をもっと長生きにすべきなのか?(係り: 長生きよりも‘幸せ’が優先されるべきだが、ナゼか人は‘長生き’を選ぶ)。

声3: 日本の人口減少が騒がれている … 少ない人口は不幸か?(係り: とんでもない ! 英・ 独・ 仏は日本の半分= 6千万人のレベルで最高の幸せを得ている)。

声4: 医療・ 看護・ 介護 の費用は莫大なのに、その上 延寿を求めるのは無責任である(係り: おんぶに抱っこ、乳母車とはこのことである――限度を越える要望は どうぞ「私費」でなさって下さい)。
 
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Author:ふじひろパール
「ふじ」=新谷冨士雄
「ひろ」=新谷弘子

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