FC2ブログ

(610) M.C.I. (経度認知障害) の 予防

(610) M.C.I.(軽度認知障害)の 予防

「坊主が屏風に上手に …. 」 は早口言葉のサンプルである。もし あなたが聴いた時、それが「ボ・ウ・ズ・ガ・ビヨ・ウ・ブ・ニ …」であったら、何が分かるか? 「齢」が分かるのである !

♣ お年寄りの簡単な特徴は 「白髪 ・前かがみ・ 歩幅の短縮」 の他に、しゃべり言葉の一文字ごとの間隔が広がることであって、全体的なスローではない。ナゼそうなるか?一つの理由は「発声に関わる筋肉の量」である。25 歳 の筋肉は 75 歳 で半分に、100 歳 で 4分の1 に減るのだ … しかも、これは異常ではなく、生理的に正常な老化現象であり、誰だってそうなるのだ。

♣ 今日の話題である MCI (軽度認知障害) もこれに似ている(Mild Cognitive Impairment)。我らは更年期 (50 歳)までは、あまり齢をとらない。しかし、それから 100 歳 に至るまでの 50 年 には日々齢をとる。視力・ 聴力は薄くなり、残歯の数はゼロに近づき、 「髪の毛・ 姿勢・ 歩き方・ しゃべり方」 まで変わってくる。ナゼそうなるのか?大きな理由は、「子を産まなくなった生命 (老人) 」に若さは不要となるからだ … 子を産まずに 50 年 も長生きする奇特な動物はヒトだけなのである。

♣ 同時にヒトの特徴である「知能」も衰えてくる … それは「悪化」ではなく、極めて正常な老化現象なのである――長生きして知能の衰えなかった人物は過去に存在しない。つまり、「軽度認知障害」という立派な名称がこのことを示している。多かれ少なかれ年寄りはみんなボケるのだ。
M.C.I. (経度認知障害)の予防
♣ そこで認知症の源である「痴呆」 (ボケ)の定義を復習してみよう。痴呆とは、ヒトの生育に伴って獲得された「知性」が、老齢の進行に沿って非可逆的に失われる状態である。 を見てみよう。認知機能は正常なヒトであっても加齢に伴って低下していく。その低下の途中で MCI と記載されている部分が 「軽度認知障害」 に相当し、その経過時点では正常者との区別は困難である。

♣ ここで MCI の定義を五つ述べれば―― 本人や家族から記憶障害の訴えがある; 年齢や教育レベルの影響のみでは説明できない記憶障害がある; 日常生活には問題がない; 全般的な認知機能はおおむね正常; 認知症ではナイ ! つまり 「うちの爺様、齢とったなー」 の程度だろう。でも識者は警告を発する … 診断された MCI の半数は 5 年 のうちに本物の認知症に進展する、と。図でみると、上から二番目の線がそれに相当し、早期に治療を始めれば症状の遅延、または回復をするという (確証はない) 。だから MCI といえども 早期発見・ 早期治療 が必要だと、どの教科書にも書いてある。

♣ でも考えて欲しい。5 年 で 50 % が認知症になるのなら、10 年 で 75 % が罹患するスピードだ。老人にとっての 10 年 は、何でもなかった普通の老人だって認知症を発症する可能性は極めて高い。全人の統計で、65 歳 をスタート点とすると、5 年 おきに認知症の頻度は 2 倍 ずつ増える 「倍々ゲーム」 なのである 1、2)

♣ また 早期発見・ 早期治療 とは言うものの、それは 掛け声倒れ である。上記したように、MCI の定義は五つあるけれど、「うちの爺様、齢とったなー」 だけで MCI と早期診断されて、いったい何をどうするつもりだ?だってキチンと診断される以前に認知症の保険薬を処方することは出来ないだろう?

♣ では 一般的な予防法 はないのか? それがあると言うのだ ! たとえば「認知症予防の 10ヶ条 」 (認知症ねっとなど) 3、4) はこう述べる:――生活習慣病を避け、酒・ 煙草は禁止、適正な運動・ 食事習慣 を確立し、趣味と好奇心を養い、人間関係を整え、おしゃれも忘れずに … 。これは何も認知症専用の 10ヶ条ではなく、万能な人生訓ではないか !

♣ 第一、思想信条にもよるが、認知症って予防できるの? 現在のところ、認知症の原因は 「脳内にアミロイドβとタウ蛋白τが蓄積して脳細胞を徐々に死滅させるからだ」 とされるが 2、5) 、その蓄積には 20 年 程度が必要である 。たとえば 45 歳 頃からアミロイドの蓄積が始まり、65 歳 になって病理所見が完成した頃、初めて認知症の臨床症状が現れる――つまり、症状が出た頃には病気の 90 % が完成しているのだ。本気で予防を考えるなら 45 歳 のころから 「薬物療法」 を始めなければ有効ではない 2) … しかも、アミロイドβ説が認知症の正しい標的かどうかは まだ不明であり、それは 「修道女の研究」 でも提起されている 5 )

♣ 私は思う――更年期 50 歳 までヒトはあまり病気をしない。だがその後 100 歳 に至る老いの 50 年間 は文字通り 「有老長寿」で、知性も衰えてくる。知性のない他の動物には存在しない老年期 ... ヒトだって知性の衰えと共に、「老年期の存在理由」は もはや希薄になり、MCI を通り越して認知症という終焉 (しゅうえん) 形式で人生が終わるのは理の当然ではないだろうか? 1999字

要約: 老年期に入れば、肉体・ 知性が不可逆的に衰えるのは当たり前である。 衰えには個人差が大きいが、MCI (軽度認知障害)は知的衰退の一時期を示し、認知症への入り口でもあると言われる。 MCI の予防は 加齢の予防とほぼ同義であり、科学的発想と言うよりも 人生の願望 6) なのではあるまいか?

参考: 1) 新谷:「幻の認知症」、福祉における安全管理 # 594, 2016. 2) Newton編集部:「アルツハイマー病 研究最前線」、Newton、March 2017、p24~57. 3) 「認知症は予防できる」;認知症ネット、Yahooより。 4) 清原裕:「生活習慣と認知症の発症予防」、学士会会報 No.922: 86, 2017. 5 ) 柳沢勝彦:「認知症最新研究」、学士会会報 No,920: 76, 2016. 6) 新谷:「木を見て森も見よう」;ibido # 598, 2016. 7) 新谷:「認知症を早く見つける」;ibido # 563, 2016.

職員の声

声1: イギリスでは 10ヶ 条 を守って認知症が減ったという報告がある(答: 認知症が病気であるのなら防ぐ効果もあり得るだろうが、現実には 認知症=「老化」 とほぼ同義語であり、「防げた」 という結論には誤認が多いと思われる)。

声2: アリセプト内服 は認知症予防に有効と聞いたことがある(答: 予防に使うのなら健康保険は使えず、自費扱いの服薬だけで(1 錠 5mg = 300 円 )、年間 11 万円 も掛かる … 元気な人が病気予防に ペニシリン を 20 年間 内服するようなもので、遥かに副作用が怖い)。

声3: MCI と診断され、5 年後 に実は違った、と訂正されたら、それは幸運なのか?それとも過剰診断で脅かされただけなのか?(答: 後者であろう … 例えば 90 歳 で 「齢相応」 の ボケ と MCI の鑑別は困難である)。

声4: 治ることのない老化を 早期発見・ 早期治療 するのは問題ではないか( 7) ):認知症は “加齢” とほぼ同義な状態であり、“加齢の発見” は簡単だが、“加齢の治療” とは 「論理のエラ-」 ではないか… 初老の白髪を早期に発見して、早々と がっかりするようなものだ)。
プロフィール

ふじひろパール

Author:ふじひろパール
「ふじ」=新谷冨士雄
「ひろ」=新谷弘子

社会福祉法人 パール
安全管理 ふじひろのページ

最新記事
全ての記事一覧
月別アーカイブ
カテゴリ
リンク
QRコード
QR