(618) 金子みすず と 私たち

   (618) 金 子 み す ず と 私 達

童謡作家 金子みすず さんは、私の父と同年の1903年、山口県 仙崎村で生まれた(父は近くの萩市で) 。彼女は 21 歳 から童謡を書き始め、当時の中央歌壇で活躍していた西條八十(さいじょう・やそ)に見出され、独特の才能を発揮し、世に知られるようになった。約 600 編 の作品を残し、残念なことに 26 歳 で亡くなった。

 金木美鈴 と 私たち

        ~~ 木 ~~

     お花が散って 実がうれて、
           その実が落ちて 葉が落ちて、
     それから芽が出て 花が咲く。
          そうして 何べん回ったら、
     この木は ご用がすむのかしら。

私が選んだこの詩は「木のご用って何だろう?」と思わせてくれる。本来、人は “木のご用” なんてあるとは思わないだろう。でも多感な彼女は庭の木を眺めて思わず呟いた: 「去年のお花 … あら、今年もお花の季節が巡ってきたのね?」。 目を細めてみすずは囁く: 「偉いわ あなた … 誰かに言いつけられたご用ではないんでしょう? … よくやるわね … でもあなたはきっとお花を咲かせ続けなければ 気が済まないんだわね」。

♣ 筆者も自分が歳をとったものだと思う … 思えば特養パールを開所したのが 1999 年 … その年に私は 第一回の 「ケアマネ」 試験を受けて資格を取得したのだった …それは 65 歳 の年だった。あれからもう 19 年 の年月のあいだ、何度 「花」 が咲いたのかな? 私も歳をとったけど、あと 何べんまわったらご用がすむのだろう?」。

♣ 私はいまパールの職員たち 170 人 ほどと一緒に働いているが、みんなも毎年 綺麗な花を咲かせている。日々仕事をしていて私の目はうるんでくる。またこのほかに多数のご利用者たちが待っていらっしゃる… お年を召している方ばかりだけれど、まだまだみんな ご用が終ったようには思えない。

♣ ところで、私は時々、みんなの 「ご用」 って何だろう?と考えたりする。

金子美鈴 と 私たち
     
                      ~~ 見えぬもの ~~

                     ご用って 見えぬけれども 
                                 あるんだよ、
                      ご用って 見えぬものでも
                                  あるんだよ。

そう、パールで働く人たちは みんな分かりやすいご用を持っている。でもパールがお世話している多くのご利用者にもご用があるんだろうかな、と考えたりする … きっとあるんだよ。

♣ この詩は人生そのものを詠っているように感じる。ご利用者たちはただサービスを受けるだけだと理解されているけれど、彼らにもキチンと生きる人生があるのだ。そのことを金子みすずは 20 歳代 の若さでありながら、率直に表現している。生きることの本質をみつめ、百年後に生活する私たちの世界観を創作しているように思う。「何べん回ったら この木は ご用がすむのかしら」… 奥の深いこの言葉。私はパールで働く自分たちのご用を「何べんなのかしら?」 としみじみと振り返る。

        ~~ わたし と 小鳥 と 鈴と ~~

    わたしが両手を広げても お空は ちっとも飛べないが
       飛べる小鳥はわたしのように 地べたを速く走れない
    わたしが体をゆすっても きれいな音は出ないけれど
       あの鳴る鈴はわたしのように たくさんの歌は知らないよ
    鈴と小鳥と それからわたし
       みんな違って みんないい

  私たちは みんな、それぞれ 「得意なところ」 が違う。でも「ご用」をするために、みんなが目や耳を広げ、なるべく「介護の資格」を取得して自分を磨くけれど、それぞれ人の対応力はみな異なる。そして、個人ごとの能力の違いは、お互いに相乗効果をもたらしていると思う。金子みすずは 100 年 も前に「鈴と小鳥と私、みんな違って みんないい」と詠った … 生きることをみつめて創造する世界観に心がなごんでくる。1590字

職員の声

声1: 私は金子みすずの詩を初めて聞く … 「ご用」という言葉の中に人生の “深さ” をしみじみと感じる(答: 福祉の世界で「ご用」と言えば、それは「聞く」ものではなく きっと見えないものを 「知る」 ことだろう)。

声2: 「みんな違って みんないい」… 個性を尊重し、人をその人の “味” の中で理解することが大切なのだ、と彼女は言う(答: テレビでも取り上げられてブームにもなったフレーズだ …みずみずしい感性の言葉が光り輝く)。

声3: 私たちが励んでいる「支え合いの地域づくり」は金子みすずの詩とよくマッチしていると思う(答: 100 年 も前のことながら、彼女は平成時代の福祉事情をちゃんと予見 したのだね)。

声4: 理事長が 20 年前、第一回目のケアマネ試験に合格したのは 65 歳 の時だった、と聞いて驚いた … もう何度も花を咲かされただろうが、今後もまだ枯れないで私たちを引っ張っていって下さい(答: みんな十人十色の個性ある職員が共存して新 しい価値観のある仕事をする … 素晴らしいことです)。
プロフィール

ふじひろパール

Author:ふじひろパール
「ふじ」=新谷冨士雄
「ひろ」=新谷弘子

社会福祉法人 パール
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