(626) 加 齢 と 老 化 の 今 後

(626) 加 齢 と老 化 の 今 後

今日は皆さん方がたいてい知っておられる事のお話だが、きっと 改めて聞けばビックリするだろう。

♣ まず「加齢」とは一年に一歳ずつ年齢の数値が増えることであるが、小学生が「加齢する」とは言わない。それは「成長」と言うし、成長が終ったら「成熟」であり、ここまでの年齢は遺伝子によって完全に管理される。

♣ 生命は 成長・ 成熟 とともに繁殖を始め、子孫の確保とともに一生を終える。ただし人間は特殊で、繁殖を終えた時期から「老化」のステージに入る。老化の始まりは「更年期」 とも呼ばれ、以後 子を産まないから、老人の身体情報は子孫に伝わらない。つまり 「老化」 の生命上の特徴は 「適応・ 進化の道から外れること」 と言える。

♣ さて、老化にはいろんな定義があるが、意味する所は 病気ではない「更年期以後の心身機能の低下」 と言えば当たるだろう。病気なら人さまざまだが、老化は誰にも必ずある。びっくりすることに、老化は 自然界の” 動物には存在せず、人間だけにみられる現象なのである ! え ナゼ?とあなたは思う。

♣ 自然界の動物は 「生存と繁殖」 以外に生命の目的は無く、子を産み終えると生命の目的は達成されるので、世代を交代して命を子孫に繋ぐ。これは 「生存と進化」 の王道であり、地上のすべての生命が 過去 38 億年 に亙ってやり続けて来た道である。つまり動物は子を産み終えたら逝ってしまうので、更年期にも老化現象にもご縁がない訳だ。え 本当?

加齢と老化の今後

♣ でも、不思議に思わないで欲しい … 我々人間だって 半世紀前 までそうだったのだ。その頃、人の寿命は更年期の手前で終わり、その後の老年期を迎えられる人は限られていた 1 ) 。「お爺さんは山へ芝刈りに、お婆さんは川へ洗濯に出かけました」 と童話にはあるが、その昔は 40 歳 前後で 爺・ 婆 だった()、今なら 80 歳 でやっと 爺・ 婆 と呼ばれる。

♣ では、ナゼ今、世の中に長寿の老人が増えたのか? それは人間には「知恵」 があったからであり、近年の福祉と 「衣食住・ 電水熱」 の環境コントロールにも成功したからである 2 ) 。これらの要素無くして みんなが高齢になることは不可能であり、老化は 「知恵」 の勝利といえるだろう。そこで人間の老化は 「もう、子を産まない」 と宣言する 50 歳頃 の更年期とともに始まる。

♣ がんらい生命は 「発育 ― 繁殖 ― 世代交代」 だけ を繰り返す存在であるから、更年期や老化を保護する遺伝子機序は進化の歴史の中で求められなかった。人間でさえ老年期以後に進む人は少数派で、そんな保護は必要なかった。その上 遺伝子(DNA)は死亡の主因である 「飢餓・災害・病気・捕食」に対してほどんど無力であり、「老いた体を守る役目」は遺伝子の守備範囲ではなかった。では、老化とは人が生きて行くうえで そもそもムリな現象なのだろうか?

♣ 老化は大別して 「病的老化」 と 「生理的老化」 に分けられる。病的老化は、病気・ たとえば糖尿病や高血圧による動脈硬化などで引き起こされる老化であって、更年期以後になって発生する老化とは区別される。

♣ これに対し、生理的老化は更年期以降に遅かれ早かれ、誰にでも必ず起こってくる心身の老化であり、その 4 大特徴 は、 内因性 (遺伝子が決めている)、 普遍性(すべての人に必ずある) 、 進行性 (ジワジワ進行し、後戻りしない) 、 有害性 (常に体へ不利をもたらす 」である。たとえば、老眼、白内障、難聴、女性の閉経、骨粗鬆症などがその代表であって、避ける手立てはナイ !

♣ これを何に例えれば適切だろうか?自然界の動物は繁殖が終ったらさっさと死んでしまう 「ピンコロ型」 である。これに反して私らの平均的な将来は、更年期 生理的老年期 病的老年期 逝去とゆっくり進み、死にざまは 「ジワコロ型」 である 3 )

♣ つまり人間は、このところ 「50 年 の繁殖期と 50 年 の老年期」 を持つ 「ハイブリッド生命4) になったと言える。しかし、人は 前半の 50 年 を十分エンジョイして文句はないが、後半の 50 年 については不満が溜まっている …後半がたった 50 年 では足らない、と老人たちは言うのだ。

♣ 何とおっしゃる ! ! 生き物が子を産まずして 50 年 もの長い間 のうのうと生きていられるって、38 億年 の生命史の中で 前例のない 大きな矛盾 なのだ ... 繁殖しない生き物は ”ヒトの老人” だけだ  ... 永く生きていたかったら、永く産みなさい ... 生き物の宿命である生命進化から離れてはいけない ... 知らなかったの?

♣ そこで私は “空飛ぶ飛行機” を人生にたとえてみる。飛行機はお客や荷物を運び、調子よく空高く飛ぶ … これは人間の繁殖期に相当する。運航上の設定が来ればエンジンは止まり 「滑空」 しながら地上に向かう … これは老年期に相当する。上手に操縦すればグライダーのように長く滞空するが、いずれ空港に降りる … 後は滑走路を滑らかに進んでエプロンに到着する … お疲れさま、だ。

♣ 言葉は 「加齢・ 老化」 と言って好かれないが、人間は 「老年期」 という、野生動物には決してない有難い期間を獲得したのである。老年期は繁殖期と同じだけの長さの 50 年 があり、動物の せわしない 「ピンコロ」 とは違って、ゆったりとした 「ジワコロ」 で幕引きが出来るのである。何の 不満・ どんな不平 があると言うのだろうか? 2023字

要約: 生命は すべて 「発育・ 成熟・ 繁殖」 の道を歩んだあと世代交代をするが、人間だけは繁殖の後に 「老年期」 を迎え、ハイブリッド生命を獲得した。 生理的老化の 4 大特徴 は「内因性・ 普遍性・ 進行性・ 有害性」であり、老年期に入った人間はこれを避けることはできない。 老化の特徴を空高く飛ぶ飛行機の有様にたとえてみた … 「飛翔・ 滑空・ 到着」 が人生の有り体 (ありてい) の現実なのである。

参考: 1) 新谷:「老後の半世紀」;福祉における安全管理 # 512, 2015. 2) 新谷:「遺伝子の新しい指令」;ibido # 600、2016. 3) 新谷:「ジワコロで満足」、ibido # 577, 2016. 4) ハイブリッド = 「異なった要素を混ぜ合わせたもの・組合わせたもの;雑種」; ... ハイブリッドカーは「電気」と「ガソリン」の力で走るので、雑種=ハイブリッドである。

職員の声 

声1: 天然の動物は繁殖に精をだすのに、ナゼ人間だけが繁殖よりも自分の生活をエンジョイすることを優先し、少子化に無頓着なのか?(答:過去の生命史をみると、少子化は種(しゅ)の絶滅に、高齢化は社会の淘汰(とうた)につながっている)。

声2: 親の長寿念願は 「本人と家族j」 にしか分からない熱望なのである(答: もし自費の勘定で長寿ができるのなら、どんな長寿であれ、異議を挟む人はいない ..... 問題はそれに必要な巨大な老齢の「公的予算」をどう賄うか なのである)。

声3: 今の日本では認知症の老人が長生きを享受しているのと裏腹にに、子孫は毎年減りつつある ... それで良いのか?(答:二千年昔のローマ以後、同じことが何度も繰り返されたーー子孫が減る国は没落し、子孫が増える国は興隆してきた ... その舵取りは政府次第である)。

声4: 今の日本の老人は世界一優遇されて長生きだ ...また我々の遺伝子構造から見て、今以上に寿命を延ばすことはムリである ... 老人は今の寿命で満足して欲しい(答: 北欧先進国は老人に 「愛」 を注ぐが、「医療」 は控えている ... 医療で出来ることには限りがあることを知っているからだ)。

声5: 私は「鮭」の一生を思い浮かべる ... 彼らの生まれは「川」、育ちは「海」、ふたたび戻って生まれ故郷の川で産卵した後、やがて死ぬ ... もし知恵ある者が介入して「産卵のあとすぐ死ぬのは可哀そう、施設に連れて行って延命しよう」と言い出せば、親切か? 100 年前の日本人は誰にも介入されず、老いて死ぬ人は自然に死んで行ったけど(答: 誠にしんみりするご意見である ! )。




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Author:ふじひろパール
「ふじ」=新谷冨士雄
「ひろ」=新谷弘子

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