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(633) 命 の 設 計 図

 (633) 命 の 設 計 図

もし あなたの気分が高揚していれば、私はあなたに「ヒトの生涯」の設計図を依頼してみたいと思う。

♣ そもそも「ヒト」を設計したのは誰だったのか?これには二つの答がある:―― それは 38 億年 に亙る生命の進化の賜物である、と、これは唯物論の チャールス・ダーウィン が説く進化論だ。 とんでもない ! ヒトはモノではなく 神が 特別に泥を捏ねて創られた最高の作品である、と、これは唯心論の宗教的な神による創造論である。

♣ ① と ② の考えは相互に揉めていて、未だに結論が出ていない。だが、お年寄りの命を日々観察しているあなたは、きっと「お年寄りの命」はどこから来て どこに行くのだろう、と考える日々があるハズだ。昔の優れた先人たちは「身体髪膚 (はっぷ)、これを父母に受く … 敢えて毀傷 (きしょう) せざるは、孝の始めなり」と抽象的に教えたが、介護の実務にこの教えをどう役立てればいいのか?

♣ 江戸の末期、杉田玄白 と言う人が「概念ばかりあって実態の解剖図がない日本の古典医学」に “もどかしくてイジイジ” していたが、ターヘル・アナトミアというオランダ語 の図説解剖学の書籍に出会って目が覚めた。独学でヒトの体の設計図を理解してから初めて正しい医学に進み、その 姿勢が現代にも受け継がれている。

♣ そこで、老人介護の諸問題を「各論」として “どう解決するか” が今 問われてくるが、問うだけではダメだ。ヒトには天寿があるけれど、“この老人が今 その天寿のどの位置を歩んでいるのか?” を確かめなければ話は進まない。それを明らかにするためには、杉田玄白がやったように、「解体新書」のアプローチで、つまり理論だけでなく 「ヒトという生涯の設計図」 を俯瞰 (ふかん) してみるのが手っ取り早いだろう。以下、四つの図 でそれを試みたい。
命の設計図

図1 は年齢別に見た「残歯の数」を示す。歯は「親知らず」の 4 本 を除けば、誰も 28 本 持っているハズだ。図を見れば、30 歳 までは歯の数は欠けていない。しかし 50 歳 を越える頃 から歯の数(残歯)は直線的に減り、80 歳で 10 本 だ …100 歳 ならたぶん残歯は 0 本 と見てよい。これがヒトの歯の健康実態なのである。考えても見よ … 齢とともに残歯が減る理由は何か?歯磨きがヘタだから? それも関係あろうが、遺伝子による歯の設計寿命は、子孫を残せる年齢を考えて 50 歳用 にデザインすれば十分だ、と設計されたのではなかろうか? 子孫に遺伝子を渡さなくなった更年期後の人の歯は朽ちるにまかせても 種 (しゅ) の保存には関係ないからだ。

命の設計図

図2 は年齢別に記録した脳梗塞の頻度を棒グラフにしたものである。見よ、脳梗塞は 50 歳代 で始まり 70 歳代 でピークを迎えている。その年代以後に頻度が減っている理由は、脳梗塞に間引かれて、生き残った人が少なくなるからである。この所見は高齢の動脈硬化によるものであって、心筋梗塞の頻度分布もほぼ同一である。つまり、子孫に遺伝子を渡さなくなった更年期 50 歳 を過ぎると、ヒトの命は 「進化と淘汰」 に無関係な存在となり、統計的に間引かれ始めていくという様子がうかがわれるのだ。

命の設計図

図3 は 年齢を横軸に取った「癌死亡」のグラフである。癌は男女共に 40 歳頃 から増え始め、死亡のピークは 75 歳 である ! 図 2 の脳梗塞の頻度と大変 似ていて、ピーク点が僅かに 5 年 ほど遅れているのみだ。癌は若年性のものもあり、動脈硬化疾患とは趣を異にするが、それにしても 「人生疲労病」 として一括される “三大死亡疾患” = 「脳梗塞・ 心筋梗塞・ 癌」 の頻度パターンが 相互に類似していることに驚かされる。遺伝子は人の健康を 更年期 まで守り、そのあとは 「知らん顔」 なのであろうか?遺伝子の守りが薄くなれば、老眼・骨粗しょう症・糖尿病・高血圧などがぞろぞろ出てきて、図1~図4の現象に至るのか?

命の設計図

図4 は 認知症が年齢と共に多発して行くさまを表し、上記 1~ 3 図 の頻度パターンとは本質的に異なっていて、「ピークを示す年齢」は無い !! 認知症は齢が増すほど増える のであり、このような分布パターンは他に類例を見ない ―― この有様は、頭髪の量や色・ 顔の皺の深さ・ 目耳歯の機能レベル・ 歩行のぎこちなさ など加齢性廃用状況 (歳のせい) を目で見ているような図である。

♣ 認知症は病気なのか?と問われることがあるが、あなたは「白髪・ 老眼・ 難聴・ 入れ歯など」を病気と考えることもあろうが、“歳のせい” とも思うだろう。図4 の頻度分布を見れば 、「認知症の治療」 とは 「年齢を治す」 という行為に通じるものがあり、もし認知症が病気なら治せるかもしれないが、白髪のような「齢」なら治せまい。

♣ あなたがヒトの生涯を設計するとする場合、理想と願望を盛り込む としても、「健康上の分水嶺 = 50 歳の壁」の意味を無視することはできないだろう。杉田玄白は古典医学の伝統理論に満足せず、解体新書の真実を知ることで新しい医学の道を発見した。私たちも彼のように、ヒトの生涯の真実を 「延命願望」 で歪めることなく、上記のような図として俯瞰してみよう。そうすることで、50 歳 以後の健康をより深く理解することができるのではないか?1876字  

要約:

ヒトは更年期まであまり病気をしないが、残歯の年次経過で見られるように、50 歳 以後の老化減衰は直線的である。遺伝子は 子孫を作らなくなった更年期以後の健康に ”知らん顔” をするのだろうか?

50 歳 以後 一番先に ”集団死因” となるものは 70 歳 にピークを持つ動脈硬化(脳梗塞・心筋梗塞)、75 歳 にピークを持つ癌がこれに遅れて続く。① ② を免れても、次の ③ が待っている。

認知症の発症とその経過は独特であって、まず 65 歳 でスタート、以後 5 年 ごとに倍々ゲームの高頻度となり、たぶん 110 歳 で 100 % の罹患となる。もし認知症が “病気” であるのなら必ずピーク年齢があるハズだが、図の罹患パターンは 「老化の深まり」 を示すだけである。

進化論 も 神様も ヒトの生涯を「更年期の分水嶺」で区切るような設計図で書いているように見えるが、あなたなら どう書きたいですか?

職員の声

声1: 認知症そのものは直接の死因にならず、だらだらと老人は増えるばかりか?(答: それは考え方にもよる … 老衰・ 誤嚥性肺炎・ 心不全などは 大抵 認知症が原因であり、事実 オランダの場合、死因の筆頭は 「認知症」 だと記載されている)。

声2: 動物は歯が無くなると死ぬ … その意味で 「義歯と火力調理」 は 「延命の第一方法」 と言えるだろう(答: 義歯と火力無しで 「生 (なま) の自然食」 だけで生きられる限度は 50 歳 に届くだろうか?)。

声3: 哺乳類のうち、成熟期の長い動物は長生きだ … 人間もお産を 40 歳 → 100 歳 まで延ばしたら、きっと更に長生きになるだろう(答: 歯無しの 爺・ 婆 になった後 長生きしたい、と願っても、もう遅い … 30 歳 の頃から “100 歳 まで子を産むよ” と宣言すれば、きっと長生きできると思われる)。

声4: 神様は人間の寿命を 50 歳 程度に決められたが、それを 100 歳 にまで 伸ばしたのは 欲張りの人間の知恵なのだ(答: その通り … 半世紀前まで 「人生は 50 年」 だった … それを 100 歳 までに延ばしたのは人間の知恵である。だから、神の手を借りないで、「難しい老人問題」の解決も人間の知恵で片付けよう)。

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ふじひろパール

Author:ふじひろパール
「ふじ」=新谷冨士雄
「ひろ」=新谷弘子

社会福祉法人 パール
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