(627) 図説: ピンコロで逝きたい人

(627) 図 説:ピ ン コ ロ で 逝 き た い 人
  
夢のような 60 年 が過ぎ去った … 私 (筆者) はその昔 学校を出て就職し、初任給は 1 万円、手取りは 8 千円。

♣ 戦後の厳しい復興期で、社会の平均年齢 50 歳余、みんな生きることに必死で、コロッと死にたいなんて思う余裕なんてなかった。誰もが 「健康寿命」 でよく働き、その寿命が終ったら静かに世を去った。その運命に何の不思議も感じなかった。

♣ ところが、あれから数十年、国は治まり、人々の寿命は 「倍増」 して「みんなが 100 歳寿」 という繁栄が世に満ちあふれてきた。そこで人々は初めて「老齢の不安」に直面したのである。

♣ 人間はいつまでも若くて健康ではいられない。特に介護保険と共に、身近で観察される超高齢者の立ち居振る舞いを見れば、 「あれほど憧れた長生き」 の魅力が遠のいてくる。その結果、つい口にする言葉が 「ジワコロはいや、私はピンコロで逝きたい」 であった。つまり 「健康なまま死にたい」 という願望、極端な人なら 「私は健康であるためなら死んでも良い」 と 健康願望の鬼になるのだった。

♣ WHO (世界保健機構) は戦後 世界の長命傾向をみて「老齢」の定義を 「65 歳」 と定めた。そして寿命が延びるにつれ、他人に助けられずに自立して過ごせる老年期を 「健康寿命」 と名付け、他方、自立できず他人に依存しながら生活する老年期を 「依存寿命」 と定義した。

♣ それによると、日本の場合「健康+依存の割合」は、男: 71+9 歳、女: 74+13 歳 となった。つまり、入院 したり介護保険で他人さま依存の期間が 男 9 年・ 女 13 年間 であり、言ってみれば 「病気勝ち」 で 「ジワリジワリ」 と衰えて行く期間がジワコロなのである。

♣ 多くの日本人はその気性 (きしょう) として、右でもなければ左でもない どっち付かずを好まず、サッパリと ケリ を付けたい … つまり 生きる訳でもなく死にもせず、というジワコロが嫌い、あっさりとピンコロで死にたい、とおっしゃる。欧米では頻度が少なく、日本では多い 「寝たきり」 には批判的、さりとて「寝たきりの人」を捨てるわけではなくお世話する。そのストレスによって 「ジワコロは嫌い、私はピンコロで死にたい」 となる。さてそこで、ピンコロの統計を見てみよう。
図説: ピンコロで逝きたい人
図 1 は 「希望する理想の最期」 で、人々のピンコロ希望は 64.6 % + 31.7 % = 96.3 %、これに対して認知症などになってジワコロ希望は わずか 1 % である。このアンケートで勝負はついた ! 誰だって死ぬ時はピンコロがお好きなのだ。でもピンコロと言っても中身は広うござる。統計によると、ピンコロの 1/4 は交通事故であり、いかにピンコロ愛好家であっても、自動車に跳ねられて死にたくはないだろう。

図説: ピンコロで逝きたい人

図 2 はピンコロの 3/4 を占める家庭内でのピンコロ内訳を示す。見ると震えがくる … 風呂などの溺死 30 %、窒息 30 %、転倒 21 % で計 80 % を越える。火災死と中毒死を加えると 95 % になる。ピンコロ愛好家の方々、こんなのがお好きなのか?年齢分布を見ても、ピンコロは高齢者に頻発するものであって、若者のピンコロは主に 災害・ 交通事故 である。残る 5 % が やっと期待の多い病気のピンコロだ。

図説: ピンコロで逝きたい人

図 3 を見よう。病気のピンコロはもっぱら「心臓病」である(74 %)。典型的には 「急性心筋梗塞・ 心臓~大動脈破裂」 であるが、その大部分は中高年に発生する。パールの 19 年間 の経験で前者 2 例・ 後者 1 例 の稀な事件であった。つまり心臓病であればピンコロの危険をつねに念頭に置かねばならないが、心臓病であるかないかは 「心電図とエコー検査」 であらかた事前に分かる。

♣ 以上を纏めると、ピンコロは万人の希望であるものの、それで逝きたいための条件は (イ) 交通事故が一番近道、 (ロ) あなたが高齢であること、(ハ) 家庭内でのピンコロなら “風呂で溺れる・ 階段から転げ落ちる・ 火事に遭う” などを了承、(ニ) 心臓の健康に無関心で、心電図を撮ってもらったこともない … これらの条件を満たせば あなたもピンコロで逝くチャンスに加われるだろう。 1632字 

 要約: 人々の 「理想の最期」 は文句なく「ピンコロ」である。 ところが、ピンコロは全死亡の 1 % 以下で稀、しかもその 1/4 は交通事故であり、家庭内のピンコロは恐ろしげな不慮の事故が原因で、誰も決して望まない。 ピンコロに固執する人の将来展望は:―→ 皮肉にも、結局 長生きし → 認知症になり → ピンコロ願望であったことを忘れ → たっぷりジワコロ人生を享受 → 他人のお世話もたっぷり受ける。 私は 人並みのジワコロをお奨めする。

職員の声

声1 : もし 60 歳定年で 90 歳 まで生きれば、30 年 もの間 家でゴロゴロ過ごすのか? … 長くて気が遠くなる、ジワコロしかない ! (答: 今の時代は 「死の前日まで社会貢献」 が求められる … 長患いはご法度だ)。

声 2: 痴呆になると死期が早まるのか?(答: とんでもない ! 認知症はジワコロの塊だ …その予後はおよそ 15 年; 85 歳 で認知症になれば 100 歳頃 に逝く … ただし多くは誤嚥によって早めに世を去る)。

声3: ピンコロは周りの人に迷惑を掛けると言うが、ジワコロ 20 年 なら 経費を 1 年 500万円 として計 1 億円 の国庫負担、その間 社会貢献はゼロ ! (答: 戦前はピンコロが主流で福祉予算は微小だった … 今は政府がジワコロを奨励、予算は国防費の 2 倍 (10 兆円)に膨れ上がった)。

声4: ヒトは元来 動物と同じようにピンコロで逝くのが常だった … 近年、医療や福祉が 発達したので、ピンコロが減ったのか?(答: 1977年のダッカ・ハイジャック事件以後、 「ヒトの命は地球より重い」 という不文律が日本社会にはびこったーーそれ以来 ヒトの重い命は ピンコロで失われることを 極力避けるようになった)1, 2 )

参考: 1 ) 新谷: 「人間の命は全地球よりも重いーー 大嘘 ! 」、福祉における安全管理 # 416, 2013. 2) 新谷: 「命の重さはどのくらい?」; ibido # 597, 2016.
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ふじひろパール

Author:ふじひろパール
「ふじ」=新谷冨士雄
「ひろ」=新谷弘子

社会福祉法人 パール
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