(635) ヒ ト は ナ ゼ こ け る の ?

(635) ヒ ト は ナ ゼ こ け る の?
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今から 320 万年 前、アフリカのエチオピアで人類 “初めて” の女の子が生まれた。名前は “ルーシー” (図 1)

♣ ナゼ “初めて” と判ったのか? それは彼女が二足歩行専用の骨盤を持っていたからである。サルは移動時には 四足歩行 で、それに適して下肢は骨盤から直角に曲がっている。ところが、ヒトであれば、背骨・骨盤・下肢 が一直線の配列であって、この所見からルーシーが二足歩行に適していた「人類の先祖」と判ったのである。

♣ 二足歩行の発達によって、ヒトの 「手」 は歩行の役目から離れ、物を運ぶ器用さを獲得、大脳も発達、人類の文明・文化に繋がったと言われる(図 1 )。なるほど、「手」の役目が人の運命を新しく開拓したのはよく分かるが、手が失った役目もある … まず、木の枝から落ちるようになったこと、続いて転倒 した時 手を前について顔の怪我を防がなければならなくなったことである。

ヒトはナゼこけるの?

♣ え? ルーシーは平地を歩くとき転倒したの? … したとも ! その面影が現代高齢女性の転倒に名残りとなっているのだ。そう、二足歩行の最大の欠点は 「転倒の発生」 だったのだ。日本では「転倒予防学会」という特殊な学会があって、高齢者に「安全で効果的な」転倒予防の内容と方法の 確立と普及・啓発に努めている ―― それによって日本社会は天国になった。そこでまず 「日本天国論」 を考えよう。

♣ 天国になった理由は:――  一般人は体重を減らすことにお金を掛けられ幸せ; 文明生活の基本=「衣食住・電水熱1 ) が世界一発達し、盛夏や厳冬で多数 間引かれていた老人の死亡が極めて少ない; その結果、老人寿命が世界一長く、介護保険も世界無比で充実している。

♣ 天国に地獄は付き物だ … そこで 「日本地獄論」 を述べると:―― 老人の割合は増え続け(4 % → 40 % )、子供の割合は減り続ける(36 % → 10 % ); 昔の親は還暦の 60 歳、今の親は米寿の 88 歳 … 同じように 「親」 とは言うけれど、今の親は 祖父母 以上に長生きし、孝行と介護が大変; さらに、転倒・骨折は増え続け、誤嚥性肺炎・胃瘻などの問題が山積みである …. . . アー ! 天国 イクオール 地獄 なんだ !!

♣ では、ナゼ 転倒は起こるのか?人は誰しもミスをしようとしてミスをするのではない。いくら気をつけていても、人と動作の接点があれば、ある確率でミスは発生する 2, 3) 。お皿を洗えば いつかは割れる; 車は衝突する; 飛行機は落ちる; これらと同じように、お年寄りを預かれば、転倒事故が無いはずがない; これはシステムの持つ確率 (二足歩行) に依存することである。

♣ 転倒は「骨折」、なかんずく 「大腿骨頸部骨折」 を誘発する。ある報告によると 5) 、全国調査での推計値であるが、一年間に 70 歳代 の女性の 0.41 % 、80 歳代 で 1.48 % 、90 歳代 で 2.81 % が「頸部骨折」を起こす。つまり高齢の女性を預かれば、「お覚悟を ! 」と申し上げるほかはない。ところが 特養・パールでお預かりする方の約半数は この 90 歳代 の女性なのだ。

ヒトはナゼこけるのか?

♣ そこで、私は 「六つのべからず」 という警鐘を鳴らした ので6 ) 、ここで、おさらい したいと思う: 急がすべからず(急がせたら 転倒・骨折)、 後ろから声を掛けるべからず(お年寄りは、振り向きざまに転倒・骨折)、 まさか ! と思うべからず(待っててね、と念を押したのに (図 2) 、戻ってみると転倒・骨折 ! )、 (ほか)で他者に呼ばれても、持ち場を離れるべからず(気を利かせて呼ばれた方に行き 助け、持ち場に帰ってみると 転倒・骨折 ! )、 押し問答すべからず(トイレ内で こうしましょうと、分かってもらえたのに、転倒・骨折)、 日頃は「杖歩行」であっても、気を許すべからず(安心して見ていると 杖に足をからませて転倒・骨折)。

♣ アフリカの女の子 ルーシー は 20 歳代 だったから、転倒しても 「絶対に」 骨折には至らなかった。だから、問題は転倒だけでなく、高齢の骨粗鬆症にあるのだった !!  

要約:  二足歩行は転倒する運命、 80歳を越えた女性の骨は「お皿のようなもの」、こけたら 割れる ! もし割れたら 誠意をもって対処すること !  あなたの人格が見えてくる !!  1717字 

参考:
1) 新谷:「遺伝子の新しい指令」; 福祉の安全管理 # 600, 2016. 2) 新谷:「過失と責任、とくに骨折」; ibido # 62, 2010. 3) 新谷:「ミスの秘密」;ibido # 84, 2010. 4) 新谷:「想定内と想定外」;ibido # 155, 2011. 5) 原田敦(国立療養所 中部病院):高齢者の転倒障害、(ネット)。 6) 新谷:「六つの“べからず”」、ibido # 50, 2010. 

職員の声

声1: 「六つの “べからず” 」のおさらいが出来て良かった(答: まったく同感 … 特に “ちょっと待っててね” で案外に転倒事故が多いのに驚く)。

声2: 転倒するから骨折する、と言うよりも、高齢かつ骨粗鬆症があるから 「コワレル」 のだろう(答: そのもの、ドンズバリだ ! たとえば駝鳥 (だちょう) は二足歩行だが転ぶことばない、しかし人に追われるとコケることもある … ただし野生の駝鳥は若いから骨折はしない―― 問題は やはり “年齢” なのだ)。

声3: 骨折しても病院に行かず、自分で治す身内がいる(答: 昔はほとんど手当て方法がなく、骨折は 「変形治癒」 をしていた … 死には至らないが、身体障害が残り、不自由な余生となる)。

声4: 昔の親は還暦(60 歳)、今の親は米寿(88 歳)… 親が長生きなら子の苦労も多いが、親には長生きして欲しい ―― ジレンマだと分かってはいるけれど(答: パールでお預かりしているお年寄りは半数が 90 歳代、そのうち 2/3 の方は大腿骨骨頭骨折。お世話は大変、しかしコケても折れてもそれが現実の人生の内だよね)。
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Author:ふじひろパール
「ふじ」=新谷冨士雄
「ひろ」=新谷弘子

社会福祉法人 パール
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