(631) 近 未 来 の 死 亡 原 因

(631) 近 未 来 の 死 亡 原 因

  私が小学生だったころ、町内を見渡しても 爺さん・婆さんは少なかった(1940年代)。

♣ 老人と言ってもせいぜい60歳過ぎ … 子供は多かったから、何らかの理由で人々は早死にしていたのだろう。遊び友達も一人二人と死んで行った。今と何が大きく違ったのだろう? 今日は 死因の今昔を整頓し、近未来に向かって「定説」とは異なった見解で検討する。

近未来の死亡原因

♣ 1.戦前 : 図 1 の左半分を参照。ここには 三大特徴 がある … つまり戦前の死因は 「肺炎・胃腸炎・結核」 で代表されている。突出した「肺炎と胃腸炎」は主に子供の伝染病であり、いったん罹ってしまうと、高熱・脱水により一週間程度で死の転帰をとった。

♣ 「結核」は 今の「癌」と同じように “不治の病” と呼ばれ、青年・中年層に多く、罹ったら 10 年 以上の経過で喀血(かっけつ)・体力消耗(しょうもう)により世を去った。

♣ 若死にであったにも拘わらず、有能だった人々の例と死亡時年齢を示すと … 滝廉太郎 (荒城の月・ 23 歳)、樋口一葉(にごりえ・ 25 歳)、正岡子規 (俳句・ 34 歳) 、夏目漱石 (坊ちゃん・ 49歳) などがある。これら戦前の三大疾患は今やほぼ根絶された。

2. 戦後 : 図 1 の右半分を参照。現在は 三大成人病、つまり 「癌・心疾患・肺炎」 の時代に変わった。戦直後から 1970 年 までは「脳出血」が頻繁だったが、近年は食生活の改善によって欧米型の「脳梗塞」に代わってきた。

♣ 平均寿命が 50 歳 から 90 歳 に延びるにつれ、疾病構造は「若年病」から「老年病」へと移った。まず、平均年齢が 50 歳 から 75 歳 に近づくにつれ “不治の病” = 癌 が年々増えた。癌死は平均年齢が高まるにつれ増えていることを 図 2 から読み取ることができる。つまり、「癌という病気」 が増殖したのではなく、癌年齢の老人が増えた結果なのである。

近未来の死亡原因

♣ なお、寿命延長に伴って増える他の病気として、図で “右肩上がり” の 「心疾患・肺炎」 の二つが目立つ。つまり、戦後に増えた三大成人病とは「長生き病」として捉えられる。理由はヒトは 70 歳 の屈折年齢を境にして世を去り始め、100 歳 を前にしてほぼ全員が死ぬ運命であるから 1, 2 ) 、長生き状況の一つ一つに異なる病名を付けても疾病管理の意味合いは乏しいのである。

3. 問題点 : 近年の高齢者はほとんどが 「複数の」 病気を持ち、「死の第一原因」の選択に迷いが生じている。例えば、脳卒中で寝たきりの老人が最期に肺炎で亡くなった場合、死因は「脳卒中」か?「肺炎」か? あっさり、「老衰」とするのは悔しいから、「天寿」としては如何か?

♣ また、近年増えてきた「認知症」を「老衰」としたり、往診先での死亡診断を無難な「心不全」とする例 も少からず有る。確実な根拠もないのに 「心不全・呼吸不全」の診断は不可」、との厚労省の指導にも拘わらず、心疾患が死亡の高位というのは良くない ! … 真の心疾患死なら 10 位 程度のハズなのである。

♣ また、昔は「脳出血死」の病名に迷いはなかったが、今は代わって「脳梗塞」が増え、後者は死亡診断名としての頻度が減った。なぜなら、多くの患者は急性期を生き残り、麻痺などの後遺症があっても、その症状は他の病名の裏に隠れ、「命取り」の診断名から外されてしまう。また、肺炎は “細菌性”、と “誤嚥性”、に大別されるがが、その疫学的意味は天地ほど異なる。

♣ 4. 近未来 : 現在 第一位の  は「細胞の確率病」と言われる。つまり我々の体には 癌細胞が 確率的に 毎日 1 万個 以上発生し、免疫機構がそれらを全部 退治する。万一、退治し損ねた癌細胞が一個でも残っていれば、それは 20 年後 には 「指先大の癌」 に成長し、全身転移が発生する。現在の癌死ピーク年齢は 75 歳 だから 3 ) 、癌になるのを、確率的に “30 年 ほど遅らせる治療” が開発されれば、ヒトは癌死の前に自然死で世を去ることができるようになる。将来の癌は 105 歳を越える超高齢者だけに見られる稀な病気になるだろう。

♣ また、慢性経過の 「心不全・呼吸不全・脳卒中」 の三つ(= 寝たきり)は、その死因を無理やり「心・肺・脳」疾患に求められて来たが、疫学的な区別の意味は乏しく、これらは「老衰」または「天寿」として纏めても良いだろう。実際、オランダでは死因の筆頭を「認知症」(= 天寿)としており、既に「癌」の頻度を抜いている。「老衰・天寿・認知症」の中身はほぼ同一であり、「天寿」という名称がが時代に即しているのか?

♣ 平和と知恵のお蔭で、ヒトの将来の死因は 1 位が「天寿」 (他人への依存期間は必然的に長期) ; 2 位 以下に 「事故・自殺・その他 」 (依存期間はほぼゼロ) などが続くようになるのではないか?1820 字  

要約:  戦前の三大死因は「肺炎・胃腸炎・結核」の “若年病” であり、戦後はすっかり変わって若者は死なず、三大死因は “老人病” =「癌・心疾患・肺炎」に入れ替わった。 近年の死亡統計で増加中の「老衰・認知症・心肺停止」などは “寿命の満期終了現象” と捉えることができる。 将来の死因は、ほとんどの人 が 長生きの天寿で 「ジワコロ4 ) ... 2 位 以下は 少なくて事故・自殺などの 「ピンコロ」 に集約される社会になると予想される。 

参考: 1 ) 新谷:「屈折年齢」; 福祉における安全管理 # 579, 2016. 2 ) 新谷:「百歳の壁」; ibidem # 619, 2017. 3 ) 新谷:「命の設計図」; ibid # 633, 2017. 4 ) 新谷:「福祉はジワコロを優先するのか?」; ibid # 507, 2015.
  
職員の声

声 1: 癌は、人生 50 歳 の頃 患者数が少なく、人生が癌年齢の 75 歳 に近づくにつれ 著しく増えた … 私は癌死のピークが 75 歳 という事に気付かなかった(答: 多くの老年癌は典型的な “長生きの自己責任病” なのである)。

声2: ある 99 歳 の女性、“まさか自分がこの齢まで 幸せに生きるとは予想しなかった” とおっしゃる … 美しい最期なら長患いの “ジワコロ” も良いものだと思う(答: 一昔前なら有り得なかった微笑ましい現代風の会話だ)。

声3: 死亡時診断名は高齢時代と共に当然変わってくる(答: 若者が死なないのだから、年寄りが死ぬ他はない … その診断には病名など必要なく、「110年間 生存」 などで十分 診断目的を達する。

声4: 若死にはとぅの昔に卒業、癌も近々卒業、そうすれば 「超長寿」 時代が来る … 他人様のお世話をたっぷり受けて 遠慮なく ジワリジワリ と逝くことができる(答: 介護保険の無かった時代なら初老期の悔しい ピンコロ しかなかった … 今は介護保険のお蔭で幸せな ジワコロ を百歳超えまで楽しめる … 何と有難い制度になったのだろう ! )。
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Author:ふじひろパール
「ふじ」=新谷冨士雄
「ひろ」=新谷弘子

社会福祉法人 パール
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