(640) 中 核 症 状 は 蛙 に 似 る ?

(640)  中 核 症 状 は 蛙 に 似 る ?

ケアの現場では理解に苦しむご利用者の不思議な行為に “たじろぐ” ことが少なくない。

♣ 毎週火曜日の “Ask Pearl” という勉強会で 精神科の神定先生 が職員のいろいろな質問に答えて下さるが、職員たちは症状が「中核か?周辺か?」について判別が “苦手” (にがて)のようで、不勉強な質問をすることが少なくない。そこで、今回は具体例を含めて 「それって中核?周辺?」 の勉強をする。まず “中核症状” から始める:――

♣ そこで意識して欲しいことは、すべての認知症には 必ず中核症状がある … もしこれが無かったら それは認知症ではない。その特徴を五つ (キケソハジ) でまとめる。

① 記憶 … 近過去の事を覚えられない~~朝の食事は済んだのに “まだ食べていない” と言い張る ~~ 娘さんの面会をまるで覚えていない、など。記憶とは 「記銘・ 保持・ 再生」 から成るが、認知症では、そもそも「記銘できない」のであり、その原因は大脳細胞数が減って、蛙の脳 に似てくるからだ 1 ) 。 (例)= 今朝のことさえ覚えていない重度の認知症、昔の歌を歌い始めるとほぼ完全に歌詞も曲も覚えていた … この例は過去の記憶はないが過去の記憶なら残っている … 昔に記銘したことは脳の中に残っていたのであり、認知症として別に矛盾はない 2 )

中核症状は蛙に似る?

② 見当識 … 何をしたらよいのか “見当も立たない” の “見当” のことであり、① (=記憶) に次いで重要な症状だ。その症状は 「時・ 所・ 人」、この順でボケてくる。一番失われやすい概念が (A)「」だ。幼児は時間が分からないし、我々だって時間は失われやすいから “腕時計” を離さない。(例)= “今は夏ですか?冬ですか? ――春です”、と即座に答えたりする。午前・ 午後も分からないし、将来って何のことか分からず、死の不安もない

♣ 次に (B) 「」 … (例)= コンビニへ行く道を何度教えても覚えて貰えない … これは典型的な見当識障害であって、大事な中核症状である。ど忘れ・ モノ忘れと違って、訂正しても治ることはなく、キョトン としている特徴がある。外出すれば我が家に戻れず “徘徊” を始める。トイレの場所や今居る場所に無関心だ。

♣ 三つ目の (C) 「」…(例)= 傍に付き添っている人を、迷わず 「弟です」 などと即答する ―― 実は 「夫」 なのだ。以上の① (=記憶) と ② (=見当識) の所見で認知症の重さがほぼ推定できる。ここまでは介護に従事する職員はたいてい理解しているが、あと少しの項目をゆっくりと学ぼう。

③ 喪失 (そうしつ) … 誰もが普通持っている能力を失うことを 「喪失と言い、三種類 ある」 :―― (イ) 失認  (しつにん)(例)= 鉛筆を見せても、それが筆記用具なのだとは分からず、いじり回して匂いを嗅いだりする ―― 動物並みだ。 (ロ) 失語 (しつご) … モノの名前が出てこない … (例)= 「靴」を指さし、これは何ですか?と尋ねる … 知っているけど名前が出てこず、認知症の進行と共に悪化・ 無関心になる。 (ハ) 失行 (しっこう)… 行為の方法を失うこと … (例)= ボタンを掛ける行為ができず、ズボンを頭にかぶる、スマホを手にして角をかじる 、など。

④ 判断 …(例)= 物事の判断ができず Yes もN o も言えない、3 + 5 の計算ができない、「暑い・ 寒い」の判断が出来ず、厚着をして汗をかく ―― このあたりの症状で新米の職員なら戸惑い始める。

♣ ⑤ 実行 …物事の段取り・ 計画が困難、(例)= 料理の段どりが分からない、家電や自販機・スマホの使い方に無関心となる。

♣ 以上が中核症状の概要であり、自分で紙にメモを書き直し、分類して頭に整頓して頂きたい。そして、くどいことながらここでもう一度述べる ―― 中核症状はナゼ起こるのですか?とバカな質問をドクターにしないで欲しい。中核症状は大脳が小さくなって蛙の脳に近づく病理を表しているのだ。言ってみれば、祭りの「お神輿(おみこし)は 20 人 ほどの若衆(脳細胞)でかつぐが、それを 5 人 ほどでかついでいる有様を想像してみよう ... ご期待に沿う振る舞いができなくなるだろう?。

♣ 認知症の症状を一つずつ覚えるのは大変だ … そこで 「脳細胞の数が減ったら「どうなるのかなー?」 と想像しながら学ぶことにしよう ... 覚え忘れをなくすために、症状の「頭文字」をとって キケソハジ で確認すれば良い。

♣ 神輿をかつぐ若衆(脳細胞)は今後も増えることはない ! … じゃ、どうすればよいのか?を自分なりに考えて対応しようではないか。1763字 

要約:  認知症の特徴は 「記憶と見当識」 の障害であり、前者は新しい事が覚えられない; 後者は “時・ 所・ 人” を誤認する障害である … これだけの知識で 病気の 9 割 の理解ができる。 業務として認知症に接する場合には、あと三つの障害 (三つの喪失・ 判断・ 実行)についても勉強しておこう … ここまでくれば 99 % の理解が可能だ。 認知症には 「中核症状」 の他に 「周辺症状 … BPSD」 がある… これは次回に勉強する。

注意: 指さし確認 ! ==日々、それって中核症状ですか? と先輩職員に尋ねよう !

参考: 1 ) 新谷:「認知症は治るか?」; 福祉における安全管理、# 603, 2017. 2 ) 新谷:「記憶にございません」; ibid, #632, 2017.

職員の声

声1: 認知症の人は 「時の流れ」 を理解しないのか?(答: 「時間」 とは高度な抽象概念だから、認知症では一番先に失われてしまう … ちょっと待っててね、の意味は相手に伝わらず トラブる)。

声2: 歳を取ると大脳が小さくなって蛙の脳に近づく … これはショッキングだ … 私の脳も年々蛙に近づくのか?(答: 脳神経細胞は「誰でも」毎日 10 万個 ずつ減っていく … 悔しいことながら、100 歳 人口の8 割 は認知症になる)。

声3: 私は、症状が 「中核か周辺化?」 を考えずに仕事をしていたが、今日は考えを改めた(答: 中核症状は治ることがない … 他方、周辺症状はかなり回復する、その違いは明瞭だ)。

声 4: 中核症状は キケソハジ … つまり 「聞け ! 創史 ! 恥だぞ ! 」 と覚える … 堀川創史君、怒らないでね(答: とんでもない、僕の名前を思い出してくれるなんて大変な名誉だ ! )。

声5 : まともに勤務していれば「中核症状」は自動的に覚えるものだ … 覚えられない職員は仕事に不適応である(答: 次回には「周辺症状」を勉強するが、案外、ゴチャマゼにしている職員が多い)。

プロフィール

ふじひろパール

Author:ふじひろパール
「ふじ」=新谷冨士雄
「ひろ」=新谷弘子

社会福祉法人 パール
安全管理 ふじひろのページ

最新記事
全ての記事一覧
月別アーカイブ
カテゴリ
リンク
QRコード
QR