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(648) 病 気 予 防 は ど こ ま で ?

(648) 病 気 予 防 は ど こ ま で ?  

 病気予防とは、想定される病気に対して事前に備えておくことである。「予防は治療に勝る」とは ほぼ万人が受け入れる金言のようだ。

♣ 予防が効を奏する典型は感染症防止であり、「結核予防法」は見事な効果を挙げた。その根拠は主に経済的な損得であり、予防のほうが治療に比べて格段に金が掛からないことであろう。

♣ 戦後、日本は、何事によらず「予防網」を敷くことで成功し、貧血・栄養・健康一般のすべてに良い効果が得られ、その結果、目覚ましい寿命延長の幸せが得られた。

♣ だが、幸せと言うものは “かげろう” なのか、長続きはしない … 人の寿命が倍増するにつれ、もっと予防して欲張りの長生きはできないものかと思案する。ガン、脳卒中、老衰などの老人病は特にそうである。これらの病気は「感染症」ではなく、高齢化に伴う 「生活習慣病」 () であるから、予防の方法は感染症の集団予防とは異なって、個別的な予防が必要となる。

♣ 生活習慣病は若年期から初老期に至るまでの長い期間に、積もり積もった生活態度の総合評価として表われてくる。つまり、ある日、老齢の入り口で閻魔(えんま)さまに質問されて通信簿を付けられるようなもので、「優」が多ければ極楽へ、「可」が多ければ極楽に行けない。その場で慌てて後出しジャンケンの勝負を張っても、もう間に合わない。
病気予防はどこまで?

♣ さて、死に至る病気は広く「三分類」される。 ① 感染症とは 細菌・ウイイルスなどの感染による病気で、昔の死因の多くはこれであった … 今では医学の進歩により多くの感染症は 「予防可能」 となった。

② 生活習慣病 )は近年、人間の「知恵と平和」がもたらした「老後の病気群」である。自然界の動物は繁殖期が過ぎると世代交代をするから「老後」がなく、したがって生活習慣病もない。人間も第二次大戦以前には この病気は特定の富裕層だけにみられていた。

♣ このうち 「ガン」 は死亡原因のおよそ 1/3 を占める。ガンの原因は多数あるが、タバコが 3 割・生活習慣が 3 割、残りの 4 割は目下 「原因多数」 とされる 1 ) 。つまりガンも “自己責任病” になりつつあるから、「予防可能」に分類される。また “老人の元気さを維持” するために、パールライフ予防教室などに参加される高齢者の方々は「老廃状態」の予防がはっきりと可能になっている。

③ 変性症 とは、新品のモノを使っているうちにセコンハン古物になっていくような病態を表す …例えば黒髪が白髪に、白くなめらか肌が焦げ茶の皺々肌になるような 主に年齢性の老化を指す。老化はどの体にも必ず起こってくるものであり 2 ) 、体操や美容などで外観をだますことはできても、一年生きれば必ず一年分の老化がある。老化は予防不可能」である。数ある「難病」の多くは変性症であって、治療に奮闘するけれど、なかなか予防にまでは手が届かない。

♣ 以上の三分類の病気と「予防」との関係を整頓してみよう。 ① 感染症 は文句なく 前述のように「予防可能」である。可能という意味で同格なものは、交通事故・火事・泥棒・風呂の事故などのようなものがあるけれど、なかなかゼロにはならない。

、♣ では ② 死に繋がる生活習慣病 はどうか?ガンは今や「予防可能」時代になった 1 ) 。ただしそのガンの原因と発症の間が 30 年~ 50 年 もあるので、「今日の一念発起が明日の予防」に繋がるものではない。酒・煙草・食生活などは数十年続く原因であり、そのうち まだ因果関係の特定されていない年齢・遺伝子・外部環境なども絡んでくる。

③ 変性症 は予防できるか? あえて答を出そう … 治療努力はなされているが「予防不可能」である――なぜなら変性は「物」でいう “使い古し” であるから、「使っても新品」という矛盾は有り得ないからだ 2 ) 。変性症の重要な例は「動脈硬化・脳卒中・老衰・認知症」などがあり、病気の共通分母は「老化」である。従って、この分野の病態は医療の発達によっても 今後とも予防は困難であろう。

♣ 我々は戦後生活が豊かになって世界に誇れる介護保険まで実現したので、何事もその気になれば予防可能、と不遜になっている。だが考えても見よ … 望んで身の丈一寸が延びるか?更年期を過ぎて妊娠が可能か?百歳の顔の皺が消せるか?更に言えば 「死は予防できるか?」 。動物の寿命というものは、その種(しゅ)によっておよそ決まっており、天然寿命の領域に立ち入ることには限界があるのだ 3 )

♣ 我々は「願うだけ」なら好き勝手に願える。また日本では戦後平均年齢が 45 歳 から 90 歳 に倍増したのだから、今のお年寄りたちをもっと長生きにしてあげたいとも願う。その願いはいつか叶えられるかも知れないが、現実には「百歳の体」のお世話でさえ大変なのに 4 ) 、それを更に延ばしてあげてどうするつもりか?

♣ 私は考える … 予防・予防と世の中の声は大きいが、一次予防の可能なものは ① の感染症と ② の生活習慣病に限られるのではないか?③ の変性症の予防とは “歳をとらないこと” であるから、原理的に「不可能」である。このことを理性で納得し、超高齢者への正しい愛情と明るい対応の仕方を工夫しようではないか。 1994字

要約:  予防の効果が有効なのは「感染症」である。 生活習慣病は近年予防の対象として口やかましく認識されており、驚くことに「ガン」も予防される時代になっている。 別の意味で驚くことは、「変性症」を予防したいとい思う老人の願いである。変性症は「加齢の年月」の証明書なのではないか ! 私たちは素直に歳を取っては如何かな、と思う次第である。

参考: 1) 中川恵一:「がんのひみつ」; 学士会会報 #880, p106~118, 2010. 2) 新谷:「加齢と老化の今後」;福祉における安全管理 #626, 2017. 3) 新谷:「病気か?使い古しか?」;ibid # 583, 2016. 4) 新谷:「普通の百歳とは?」; ibid #636, 2017.

職員の声

声1: 「予防」は効果がはっきりしないし、そんなものに公費が必要であろうか?(答: 健康保険でも その適用範囲は“治療”に限られ、“予防”なら自費で、となっている)。

声2: 悪い習慣は “分かっちゃーいるけどやめられない ! ” という実状があるし(答: 酒もやらず女もやらずで 100 まで生きたバカもいる、という冗句もあるね)。

声3: ガンの予防やアンチエージングは役に立つのか?(答: もしガンが撲滅できれば 5 年ほど寿命が延び、老人の介護費用も 5 年分増える;アンチエージングが無駄ならマスコミと業者は困るし、はかない延寿の夢も消える)。

声4: ある大臣が主張した――予防できる病気になったら「罰」を与えよう … 健康保険は 5 割負担だ、と(答: たとえば、勝手に食べ過ぎ糖尿病になって、その医療費を全額 国へ 請求するなんてとんでもない … なるほど大臣らしい発想だね)。

声5: 老人の変性症が予防できる日が来たら、心は幸せになるだろうか?(答: 認知症は歳ごとに増え―― 100 歳で 8 割・ 110 歳で全員――その中核症状のボケによって 老人は ご自分の「幸・不幸」を理解不能になっている)。
プロフィール

ふじひろパール

Author:ふじひろパール
「ふじ」=新谷冨士雄
「ひろ」=新谷弘子

社会福祉法人 パール
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