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(651) 超高齢者のリハビリ

  (651) 超 高 齢 者 の リ ハ ビ リ

  現代の日本女性は 世界一長生きの記録を 25 年連続一位で保持しており、やがて 現在の平均寿命 87 歳を越えて 90 歳以上になる日が来るだろう。

♣ 平均年齢が 90 歳ということは、100 歳を越す人も多数あるということだ。1951 年(昭和 26 年)の女性の平均年齢は 49 歳だったので、「遥(はる)けくも来つるものかな ! 」と思わず驚嘆の目を見張る。でも人が 90 歳を越えることは、やはりタダの路を歩んで来た訳ではない。

♣ テレビやドラマで活躍された「女優の原久子さん 96 歳」1 ) は、「瞑想法・内観呼吸法」 などの長寿健康法の研究をされていたが、やはり歳には勝てず、階段昇降や正座が苦手となってリハビリの指導を受けておられた。超高齢者の場合、介護者はどのような見識で見守り役を心得ればよいのだろうか? 

♣ 超高齢者への適切な対応は その道の経験者に訊けば良い。だが一昔前まで、対象の 90 歳を越える超高齢のお年よりは多くなかったし、診療に携わる医師であっても 「元気な」 超高齢者を看る機会は少なく、また適格な「運動のアドバイス」をなさる経験も少なかっただろう。元気な老人を病気の老人と同じ目で見るのも不見識だし、超高齢の「生理学」も十分理解されているとは言い難い。パールの「特養」でも近年 90 歳代の人達が半数を越え、この人たちに必要な常識的な中庸のリハビリとは何であろう?と思い悩む日々が続いている。

♣ 現実の例を挙げれば、標準的な食事のカロリーは 70 歳代までは国が標準の一覧表をこしらえて準備しているが、80 歳代以上については空白であり、これは諸外国についても同様である。超高齢者の身長・体重・各臓器の機能正常値などは発表されていない … それは病気その他の個人差要因が大きいからであろう。このことはリハビリについても同様であるから、高齢者への対応は若年・中年で得られる知識の延長線上で対応を考える他に良い方法はない。そこで リハビリについて 常識的に推測できる事実を述べる。

人は高齢になると、誰でも体の細胞数が減り、痩せてくる。つまり 脳細胞も筋肉細胞も減ってくる … 言ってみれば、全身の馬力が落ちるのだ。例えば、人の細胞数は 25 歳をピークとして、後はチビチビと減っていく。筋肉の場合、 70 歳で 1/2 に、100 歳で 1/4 に落ち込む。だから ご存知のように 運動選手といえども活動のピークは長くはない。

♣ これは生理的な加齢現象であって、誰にも起こることだから、気にしてもしょうがない。もし齢を取っても体重が減らない人があるなら、それは「脂肪組織」が体重を補っているのである。脂肪は筋肉と異なり、運動機能を持たないから、階段の昇降は苦手になってしまう。

♣ ここで、ウンチの成分を参考にしよう。一番多いのが水分(60 %)、次が腸壁細胞の死骸(20 %)、大腸菌類の死骸(15 %)、そして食物カスは僅か(5 %)… ウンチは大部分が「食べカス」かと思う人が多いが、水分を除く半分は腸壁の死骸なのだ ! にも拘わらず、私たちの腸壁細胞の喪失は健全に補われている ! !

♣ 信じ難いことだが、それほどまでに私たちの体は細胞の 大量喪失~~大量補給 のバランスの中で生きているのである。超高齢者の体の中で、はたして喪失に見合う補給が順調に行われていると思いますか?

超高齢者のリハビリ

リハビリテーションという言葉は、「リ」 と 「ハビル」 の二つの合成語である:「リ」は「再び」、「ハビル」は「動かし得る、適応させる」 というラテン語。つまり、怪我や脳卒中で いったん動かなくなった体を 再び動く ようにする のがリハビリの「本来の意味」である()。多くの人は「リハ」とは 「筋トレ」、つまり筋肉を鍛錬して増やすことと考えているようだが、それは間違った理解である。

♣ 事故にも遇わず、高齢だけが理由で だんだん動かなくなった体は それこそ天然現象そのものであり、リハビリの必要性がどこにあるのだろうか? 「リハ」という片仮名が一人歩きすると、「リハ」の元々の意味が分からなくなってしまうようだ。

♣ ところが、人々は高齢者にリハビリを奨める。それは若かりし頃の華やかさを今一度、という願望によるものだろうが、筋肉が 1/2 から 1/4 に減っているのにそれを若返らせるのはキツイ仕事だ。老人の筋肉運動は、心地よく本人が「充足感」を感じる程度に限って行うのがベストなのであ。もし、運動を行わないと「廃用萎縮」に陥るが、「やり過ぎる」と筋細胞は破損されてしまう 2)

♣ 高齢者のリハビリは 「自分で出来る能力を温存すること」 に尽きるのだ。その目標を、その人らしく設定し、ルー(Roux)の法則 2 ) にのっとってほどよく行うのが一番賢いやりである。1805字  

要約:   人の筋肉は 70 歳で 1/2 に、100 歳で 1/4 に減り、体重も脂肪組織で徐々に置き換えられる。 「リハビリとは筋肉を鍛錬して増やすという理解」は間違いであり、老人を鍛錬すると「ヘたる」のみである。 運動は、その人らしく目標を設定し、ルー(Roux)の法則 にのっとって賢く行うべきであろう。

参考: 1) 原久子: 2005 年 12 月 4 日 21時 32分、家族と夕食を終えた後に意識を失い、東京都内の病院へ搬送中の救急車の中で 急性心不全のため死去、96 歳没。最期の言葉は「ごちそうさまでした」だった。 2) 新谷:「筋トレとルーの法則」;福祉における安全管理:# 638, 2017.

職員の声

声1: 普段 実行していないことをリハビリで補おうとするのは所詮ムリではないか?(答: 今出来ていることを持続できるようにすることが老人リハの目標であろう ... ルーの法則こそが頼りになる 2) )。

声2: 「筋肉は鍛えればいつでも増えるし、その後はそれを維持すれば良い」 と私は思っていたのだが、それは間違いか?(答: 先回お話したように、筋肉は 25 歳で絶頂に、以後 衰え始め 75 歳で 1/2 に、100 歳で 1/4 に減る――この流れに逆らう人の寿命は短縮する傾向がある)。

声3: 私の個人的な経験談――入院していたある高齢者、自己判断で毎日リハビリに熱心だったが、ある日の朝、死亡・退院なさっていた…ご家族希望のムリなリハビリ希望だったのだろうか?(答: 因果関係は推定するしかないが、ショッキングな経験でしたね)。

声4: 超高齢者を観察していると、「長生きは辛い」 とおっしゃる方が多いが、現状温存のリハビリは必要なのか?(答: 「元気で長生き」 な人は稀、よって 「辛くても長生き」 のほうを受け入れざるを得ない――そんな方のリハビリは適応の有無をよく良く検討するのがよい)。 
  
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ふじひろパール

Author:ふじひろパール
「ふじ」=新谷冨士雄
「ひろ」=新谷弘子

社会福祉法人 パール
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