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(653) 拘 縮 と は 何 か ?そ の 対 応

  (653) 拘縮 (こうしゅく) とは何か? その対応

  認知症デイサービスの K 様(85 歳 女性)は、半年前から 左右とも上肢の拘縮が進行し、肘の伸展がほとんど不可能な状態になった。リハビリをすれば どの程度 治る のだろうか?これは職員たちの率直な疑問だろう。パール嘱託医の整形外科 Y先生 にご意見を聞いてみた。

Y先生のご意見: 関節の中で 接触する骨同士が固まった状態を「強直(きょうちょく) と呼ぶ。その前段階が 「拘縮」 である。麻痺・高齢などによって、筋肉や関節を使わない状態が続くと、関節嚢 (かんせつのう … 二つの骨があい接触する関節部を袋状に包む組織) の軟部組織が 廃用萎縮によって硬くなり、その結果 関節嚢内にある骨の動ける範囲が狭まってくる。

♣ 関節の周辺に付着する筋肉は「拮抗筋群」であり(伸びる筋肉、縮む筋肉) 、人体では 「屈筋」 のほうが強力であるため、屈筋が伸筋の力を負かして収縮状態で固まろうとする——この状態が「拘縮」である。つまり拘縮とは四肢の関節が「屈曲位」で拘縮する訳だ。これが高度になって固定化すれば「強直」となる。



拘縮とは何か?その対応

♣ 時に、ご利用者の入所時の所見として、両膝を曲げ しかも両膝がくっついて開かない高齢者を迎えることがある()。こういう方の “おしも” のお世話には苦労が重なる――その実態は「拘縮」を通り越して「強直」のことが多いが、もし対策があるとすれば、硬化した腱を切開することの適応がある――が、ご家族は大抵困惑されてしまう。

♣ 初期のうちは、観察者 ご利用者の肘や膝を動かそうとすると、滑らかさのない「ギー」と感じる抵抗を感じる。それが進行すると「拘縮」、さらに進行すると「強直」である。強直の場合、収縮した筋肉が「腱組織」のように硬化し、関節はビクとも動かなくなる。典型的な姿は 「子宮内の赤ちゃん」のような 縮みこまった四肢状態の姿になる。

♣ ご家族は「動かせば動かすほど良い」と注文されることがあるが、運動やマッサージなど、「何ごとにも適度がある」 と知るべきだ――やり過ぎの運動はかえって逆効果を生む。拘縮は 大きい関節のほうが小さい関節より先に起こる。また、下肢は通常 座った姿勢であまり動かさないから上肢よりも先に拘縮が起こる … つまり膝と腰が先、続いて肘と肩、要するに 「動かない水は早く凍る」 ということだ。

♣ これを防ぐための対応は、「関節を使い、その血液循環をよくすること」に尽きる。自分自身で関節運動を行うのが一番良いが、それが困難であれば 他動的に マッサージ などで補助する。関節運動は 「やり足らないのはいけない」 ;しかし やりすぎるのは最悪だ ! なぜなら、やりすぎると、仮骨(かこつ)ができ、筋肉炎を起こし、かえって拘縮が進行してしまう。適度な運動量は個人別に定めるほかの名案はない。

♣ ご質問の K 様 (85歳 女性)の場合も 基礎疾患の脳梗塞・本人の意欲・周辺の協力程度などに応じて対応するのがベストのようである。ご家族は、「寝たきりにすると拘縮が訪れる」という理由を良く理解しよう。そこで整形外科の知恵では誰もが学ばなければならない 「ルー(Roux)の法則」 をおさらいする 1~4)

要約: 適宜な運動量を設定するための法則は、三つの叙述より成る:- 身体(筋肉)の機能は 過度に使えば障害を起こす; 使わなければ萎縮(退化)し、 適度に使うと発達する。
......この 「ルーの法則」 は筋肉生理学の教えであるが、実際には私たちの生活の どんな行為にも応用の効く法則だと思われる。たとえば、勤勉・娯楽・ジョッギング・脳トレ・食事・睡眠 … 大抵のことに応用が利く法則である。 1490字

参考: 1) 新谷:「ルー(Roux)と智恵」;福祉における安全管理 # 45 、2010. 2) 新谷:「介護の不足と過剰」; ibid # 74, 2010. 3) 新谷:「残存機能の保持」;ibid # 151 , 2011. 4) 新谷:「筋トレと脳トレ」; ibid # 334, 2016.

職員の声

声1: 私はパールへの入職時の研修で初めて「拘縮」を学び、そんなことが起こるとは?と驚いた(答: 病気の人が安静を守ることは理に叶うけれど、「拘縮」 という “伏兵” がいることに気を付けよう)。

声2: 関節の固まりは “大きな関節” (腰や膝) から “小さな関節”( 肩や肘) へ進行するのか?(答: その通り ... 関節の固まりもルー(Roux)の第 2 法則通りに従う訳で、つまり「何事にも適度がある (第 3 法則) ということをも学ぶ)。

声3: 拘縮は老人だけに起こる現象か?(答: 誰にでも起こる … 例えば、若者のスキーの事故などで関節を長期に亙って固定すれば拘縮が発生する。また、宇宙飛行士は、飛行中、重力に対する運動機能がゼロになるので、地球に帰って来た後もリハビリが必須となる)。

声4: 強い ストレッチ・リハビリ よりも、軽いストレッチを毎日のほうが効果的か?(答: もちろんのことだ … つまり 「日常生活の中に リハビリ を組み込むこと」 が一番効果的なのである)。
プロフィール

ふじひろパール

Author:ふじひろパール
「ふじ」=新谷冨士雄
「ひろ」=新谷弘子

社会福祉法人 パール
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