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(655) チ ビ 漏 れ へ の 対 応

(655) ち び 漏 れ へ の 対 応   
 
「おしも」のトラブルのうち、自分でなんとか処理できる範囲のものなら 内緒ごと としてすまされるが、高齢者介護の場合、ここが問題となる。

♣ お年寄りは赤ちゃんとは違って、羞恥心 は残っているのに 「ちび漏れ」 を他人に知られたくない思いが強いのだ。だから、ちび漏れしたパンツを引き出しの奥に隠す、などの行為は ごくありふれた行為である。

♣ そもそも、私たちは生まれた赤ちゃんの時 100 % 「お漏らし」である。体の発育とともに 膀胱も大きくなり、排尿を司る神経も発達し、お漏らしの頻度が減る。その頻度は 「2 歳で 2 人に 1 人、3 歳で 3 人に 1 人 . . . 5 歳で 5 人に 1 人程度である。夜尿症の頻度の目安は :- 幼稚園年長で 15 %、小学校 6 年生で も 5 % 程度はある —— 小学 4 年生だった頃のあなた、世界地図を物干し竿(さお)で干されて みじめだった記憶はないだろうか?

♣ これほどに排尿習慣は生後 遅く完成する代物なのである。そして、高齢になれば、何事によらず 「赤ちゃん帰りをする」 のはやむを得ない。つまり 我々は、特に女性は、再び「ちび漏れ」()から 「全失禁」 になる。長生きすれば 誰でもこれを経験する。
チビ漏れへの対応

♣ ここで「尿」に関する生理学を二つ三つ。尿は血液が腎臓で濾過(ろか)されてできる。濾過とは血液が「濾し取られること」で、赤血球や白血球などを残した水分が「原尿」 (げんにょう)となる。これが体格にもよるが毎分約 100 cc。原尿の中には まだブドウ糖などの栄養素がたくさん含まれているので、腎臓はそれを再吸収し、最終的には 毎分約 1 cc の尿を膀胱へ送る。

♣ 時計で一日は 1440 分、つまり、尿は「毎分 1 cc、一日 1440 cc ≒ 1.5 リットル」と覚える。もちろんビールを飲んだかどうかによって尿量は変化するが、基礎は「一日 1.5 リットル」だ。

♣ さて、あなたは 一日何回排尿するか?そんなことを考えたことない? では 考えよう。(1) 起床時、(2) 勤め先に到着時、(3) 昼食前、(4) オヤツの頃、(5) 退勤前、(6) 夕食後、そして (7) 寝る前——全部で 7 回、こんなものだろう。 では、一回に何 cc の尿が出るか? 入院すれば 測られるが、計算上は 1500 cc / 7 ≒ 214 cc … オー!これで常識に一致した成績が得られた。水洗トイレでは約 200 cc の尿を流すのに10 倍の水( 2 リットル)が使われる、すごいことだ !!

♣ そこで症例の相談に移ろう。デイサービスを利用される A 様(86 歳 女性 認知症 要介護 2)はトイレに 5 分前に行ったにもかかわらず、すぐに「漏れてしまう」と言い、一人でトイレを独占するほどである。家庭でもそうだとの事。私たち職員の正しい対応法はどうするか? 

♣ 答えは目指す病気の種類によっていろいろだが、いま腎臓・膀胱・尿道の病気がないものとしよう。すると 二つの状態 が考えられる:――

① 神経因性膀胱 = 膀胱に尿がどれだけ溜ったか、いつ排尿しようか、などの情報は「自律神経」が操作しているが、この神経が高齢になると弱まって「尿漏れ」となる。これを神経因性膀胱と呼ぶ。これに対しては 膀胱訓練・薬物療法などの かなり有効な治療法がある。

② 認知症 = もし認知症と共に「お漏らし」が現れたのなら、認知症の特徴 = 性格の先鋭化 が関係してくる。つまり がんらい 頻尿の傾向があった人なら、その傾向がより強調されるようになったと考えられ、程度の軽い認知症、とくにデイサービスでしばしば見られる。「お漏らしに塗り付ける薬はない」から “恥ずかしさ” を理解してあげる。この場合、大事な事は病気の理解と本人への配慮であろう。どんな場合でも、本人の精神的な負担を軽くしてあげる 「言葉掛け」 が大切である。

♣ とくに あなたは介護のプロなのだから、頭の中で暗算してみよう —— 5 分の間に生じる尿量は 5 cc、つまり大匙 2 杯くらい? そんなものを いきんで排尿できると思うか?無理だね。つまり、A 様は「身の置き所のない無目的な行動」をしている訳だ。こんな場合、認知症の対応として「体に危険の無いように見守る」ことが大事だろう。言うは易く、行うは難いことだ。私どもの失敗例をお伝えしよう:――

♣ 95 歳のチビ漏れの女性が先月、私とトイレに同室することを拒み、一人にしたとたん、中で 転倒・骨折 という例に出合った。入院・手術・リハビリで何百万円かの請求書が回ってきた(保険で対応) 。これもすべて私の一瞬の気の緩みのせいだったのか? 

♣ あっさり 「失禁」 なら こんなことにならないだろうが、「ちび漏れ」 は心理的にとても危険な状態である。上記の尿生成の生理学を思い出して賢く対応することにしよう。1923字

参考: 新谷: 「天寿の終点はB.M.I. ≒ 12 」;福祉における安全管理 # 33, 2010.

職員の声

声1: ご紹介の A さん は私をトイレから追い出し、内から鍵を掛けてしまうので危険この上ない … 自尊心や羞恥心を尊重したいのだが、難しい(答: もしトイレ内で転倒や骨折が発生したら、その責任は重大であり、対策を練っておくべきだ)。

声2: 「吸尿パッド」 は多種類のものが売られており、チビ漏れに悩む女性の多さがわかる(答: 生理用ナプキンと同じくらい種類が豊富で、調べてみて驚く! )。

声3: 尿が一分 (いっぷん) で 1cc 出来るとは知らなかった … 老人のトイレは実にデリケート、他の点では呆けてくるお年寄りながら、この点で敏感なのは不思議なほどである(答: トイレ問題は、人生始まりの赤ちゃんと、人生終わりの高齢者にとって そびえ立つ難所である)。

声4: 私もチビ漏れを感じる齢になった ... 誰にでもあることながら感慨深い(答: 膀胱から先の尿道は男女で著しく異なり、男 18 cm、女 4 cm ... だから女性にチビ漏れの大問題が発生する ... 逆に男性には前立腺肥大という難所があり ”尿の切れ” が悪くなる)。昔は 「人生 50 年」 だったから、何にも問題が起こらなかった のだ ! !
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ふじひろパール

Author:ふじひろパール
「ふじ」=新谷冨士雄
「ひろ」=新谷弘子

社会福祉法人 パール
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