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(657) 余 命 い く ば く ぞ ?


(657) 余 命(よめい) い く ば く ぞ ?

  お年寄りが病院や施設で弱ってくると、家族は職員に尋ねる ―― あと “どれくらい持つ” でしょうか?と。

♣ これを文章で書くと 「余命 いくばくぞ?」と なる。病気や老衰の枕元で話される場合、たいてい「後 1 週間ほど持つでしょうか」と短い日時が語られるし、ガンの場合なら 「後 2 ~ 3 年 …」など長い年月となるだろう。ところが一般人であっても、世間では、「借金」をしたり、「事故の補償」の場合は 「当事者の “余命” 」 が大きい問題として取り上げられる。

♣ つまり「余命」 (よめい) とは、ある年齢の人がその後何年ほど生きていられるかという期待年限である。これは「平均余命」と呼ばれ、その年数は総務省が統計を取って発表、5 年ごとに改訂する(表 1)。

余命いくばくぞ?

♣ 表をよく眺めて見る。四捨五入 の値で読むと、平均余命は 0 歳児で 男 81 歳・女 87 歳であり、この数は表が作成された時点の「平均寿命」(平成 27 年)に他ならない。よって、生まれたばかりの赤ちゃんは 「男 81歳・女 87 歳」 の年月ほど生きていられる、と予想される。

♣ この子たちが 10 歳に育てば、既に 10 歳ほど生存寿命を消費した訳だから その分を引いて 男なら 81-10 = 71 歳が平均余命となる。このように、生きた年数を平均寿命から差し引いた年数がその人の余命であると計算されるハズである。

♣ つまり、50 歳の人の余命は 31 年と計算されるけれど、表 1 をご覧になれば分かるように 実際の余命は 32.4 歳である。ナゼ 1.4 年ほど多いのか? その理由は、人間 50 年も生きていれば途中で間引かれる人もあるだろう ―― にも拘わらず 50 年間生きていた人であれば、そのマイナスの危険を乗り越えた人であるから、1.4 年ほど「おまけの」余命が加わるわけである。

♣ 同じ考えで 表 1 を眺めて見る。もし男 80 歳の人なら(「平均寿命」は 81歳であるから、そこまで生きれば) “もう残りがゼロ ! ” というイメージがあった。だが「平均余命表」を見れば まだ 8.89 年も余命があり、むしろこの方が現実の経験によく一致する。

♣ つまり、長生きすればその年齢までに死ぬ確率を乗り越えた訳であるから「おまけの余命」が付くのである。よく錯覚されるのは 「平均寿命平均余命」 の違いであるが、0 歳児は将来生きて行くのにどれだけ危険があるのかわからない … つまり 0 歳児の平均寿命は平均余命と同じ数値となる。もし 50 年生きれば 50 年分の危険をクリアしたのだから、おまけの余命 12.4 年が付き、80 年生きれば おまけの余命は 8.48 年ほどあるのだ。

♣ こうして平均余命の流れを見れば(表1)、面白い現実が見えてくる。以後は 「女性」 のデータを読んでいこう。女性が 90 歳になれば、既に平均寿命( = 87 歳)を越えているから、従来なら “もう盛りを過ぎた” と錯覚するだろう。だが女性 90 歳の余命は まだ 5.56 年もあるのだ表 2)。そ れどころか、100 歳になっても余命は 2.5 年、今パールの最高齢(107 歳)の女性の余命は 1.57 年もある !
余命いくばくぞ?

図 1 をご覧あれ。これは 2020 年(予想)の人口ピラミッドの 65 歳以上部分をカットして拡大したものである。横軸は人数、縦軸は年齢。男女共に 70歳 を越えると 100 歳に向かって ほぼ直線的に生存者が減る ... いわゆる「屈折年齢。しかし定規を当ててよく見ると、90 歳過ぎの頃から直線を上にはずれて曲線状に生存者が男女共に残っている。

♣ 定規を当てて直線とみれば、男は 95 歳あたりでゼロに、女は 100 歳あたりでゼロになるハズだが、現実には余命が長引いている ! この所見は他のピラミッド(各 2000 年、2010 年、2030 年、2040年)で検討しても同様であった。つまりグループとして見る限り、男 95 歳・女 100 歳あたりを越えると、死亡率が緩やかになっている ―― というか、元来 長生きの一群の人達が粘り強く生存期間を延ばすように見える。男女ともに この最期の期間を 6~7 年ほど粘り稼いでいる ... 「粘り年齢」と名付けよう」。

表 2 には 90 歳以上の余命を 1 年おきに示したが、驚くことに 男は 95 歳になっても余命は 3 年近くあり、勇ましい事である ! (左欄は「年齢」を、中央欄は男性の余命を、右欄は女性の余命を記す)

余命いくばくぞ?

♣ 私たちは 90 歳を越えると「超高齢」と呼びならわすが、表を見る限り、90 歳代後半の余命は堂々と 2 年を越しているし、100 歳を越えても余命表は延々と続く ... この「粘り年齢」現象は どの人口ピラミッドにも観察されている !  

♣ ここで 「不思議なパラドックス」 (逆説)に出会う !! 今、女性の場合を考えると、90 歳であればすでに平均寿命の 87 歳を 3 年も越えているのに、なんと平均余命はまだ 5.56 年ほども残っているので、平均 95 歳まではまで生存できる訳だ。そこで 95 歳女性の平均余命を見ると 3.63 年ほど残っているから 98 歳まで生きても不思議はない。同じように実年齢と平均余命の関係を 指でたどっていけば、余命表で 115 歳まで生きても、まだ残りの余命は 1 年近くあって、「女性はなかなか死なないパラドックス」に出会ってしまう。

♣ これは大変嬉しいパラドックスではないか ! だか 「種も仕掛け」 もあるのだ。要するに、人がそれぞれの高齢の欄に達した場合、次のステップに登り詰めるだけの 粘るスタミナ があれば、その女性は死なない訳であり、もしそのスタミナがなければ、そこでお終いとなる。図面上で はっきり分かる このパラドックスは 見るだけで 「励み」 になるではないか !

♣ 近年、特別養護老人ホーム(特養)では 90 歳越えの超高齢者が増え、パールでも過半数を占める。従来 この気分でハラハラしながらケアを続けて来たが、“今にも終わりか?” と警戒する人は 上記のパラドックスにより わずか 1 人~ 2 人のみに減り、とくに女性の 90 歳代はまずは三桁に届くものと見ることができる根拠が得られたようだ。 

要約:  平均寿命とは人口統計によって 「国が計算する 0 歳児の生存予想寿命」である。これは世界各国の健康状況を比較するために用いられる。 平均余命は国が計算する ”各年齢ごと” の 「後 平均何年生存できるか」 を示す年限であり、表 1 および表 2 にその詳細を示した。 人々が高齢になって知りたくなる情報は 「余命いくばくぞ? 」 を表す表であり、この 粘り年齢 を読み解くと、「女性はなかなか死なない」というパラドックスが見えてくる不思議を解説した。

参考:  新谷:「屈折年齢と福祉」; 福祉における安全管理 # 579、2016

図の出典: 人口ピラミッドのダウンロード: WWW.ipss.go.jp/site ad/TopPageData/pyra.html- キャシュ. 

職員の声

声1: 私は平均余命の表を初めて見る… 1年ごとに努力をすれば、思いの外に長生きできることを知った(答: 平均寿命の表なら「男 81 歳」でチョンだものね… 余命の表を見れば「男 112 歳」まで努力次第だ ! )。

声2: 平均寿命を告げられると 「こんなに短いの?」 と嘆くが、平均余命を聞くと 「え?こんなに長いの?」 と戸惑う(答: 確かにナ ! 女 115 歳で まだ先の余命が有るんだもの ! )。

声3: 女の余命がこんなに長いと「怖い」気がする … その長い余命は「健康」なのですか?(答: 残念 ! 人間は たぶん 90 歳を越えれば ほとんどの場合、病気寿命だろう … だからこそ 「介護保険」 が設立されたのである)。

声4: 「余命」と言うからには、余分の命は社会貢献に用いたい(答: 実は逆で、貢献どころか 余命の大部分は若者依存の年月である … ちょっと寂しい気がするが、人間の歴史は一万年の昔から 「楽して長生き」 が夢だったのだ)。


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ふじひろパール

Author:ふじひろパール
「ふじ」=新谷冨士雄
「ひろ」=新谷弘子

社会福祉法人 パール
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