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(665) 3 倍 で は ま だ 不 足 か

(665) 3 倍 で は ま だ 不 足 か

皆さん方は、介護保険が過去 19年間行われ、そのお陰で老人の寿命が延びたと思うだろう ―― ところが、そんな話題はウェブを開いてみても、どこにも ない ! つまり 介護保険が始まって以来、日本女性の平均年齢の延長は 「鈍化・停止」 しているのだ 1 )

♣ さて、生命一般は 「発育・成熟・繁殖」 … このサイクルの繰り返して行う。ところが人間だけは、更年期の 50 歳頃までは子孫をつくり、その後は老年期に入って子を産ままない 50 年を過ごす。

♣ 生命の進化の観点から見ると、子を産まないまま繁殖期の 2 倍にも及ぶ老年期を持つ動物は「人間のみ」だ。子を産まないのだから、老年期の動物は 営々と続いた生命の進化機序に決別した 不思議な存在となる。

♣ 動物実験で延寿の試みは様々に行われている。「線虫」 という “みみず” のような動物は寿命を 6 倍に延ばすことが出来た;そこでその発見者は「人の寿命だって 6 倍にすることは出来る」と意気込んで人間の長寿化に取り組んでいる。

♣ しかし、仮に人間で 6 倍 の延寿が可能となれば、それに必要な生活費は 一人の老人につき 約 25 億円掛かり(= 1 年 500 万円 × 500 年)、税金を担当する若者は死ぬ思いをするだろう。しかも長生きする老人は 100 歳から 600 歳の間 “要介護 5 を越える認知症” から醒めることなく、 呼吸している ミイラ状態 のままだろう。

♣ 私らは 「老いる」 とはどういうことなのかを知っている。それを司る原則は 「普遍・内在・進行・悪化」 の 4 原則 2 - 3 ) であり、復習しておこう。

① 「普遍」 とは、誰の体にも起こり、例外はないことだ。ソクラテスは死んだ、ナポレオンも死んだ、でも私だけは例外にして下さい… それはムリである。

② 「内在」 とは、老化の機序はその人の体の内側にあることである。つまり他人様はどうであれ、あなたの老化はあなたの DNA の中で進行する。

③「進行」 とは老化は必ず進行する、という意味であり、後戻りすることはない ! テレビで「若返りのサプリ」が宣伝されるが、それは不可能であるにも拘わらず、多くの人がこれに引っ掛かる。

④ 「有害」 とは、老化現象は健全の反対、つまり害をもたらす現象であって、白髪・老眼・難聴などの例を挙げるまでもなかろう。つまり老化とは、日々健康から遠ざかることであり、それゆえにエジプトではピラミッドが建設され、日本の「前方後円墳」もつくられて、永遠の命が追及された。

♣ これら ①~④に反対意見を出す人は 「大きなビジネス」 が約束されるほどである。

3倍ではまだ不足か
♣ ところで、人間は いろいろな動物の中でどんなに高級な位置を占めているのだろうか?図 1 は「動物の体重と心拍数」の面白い関係を示す 4 ) 。体重の一番軽い カナリア の心臓は一分に 1000 回も拍動する。ハト・ラット(ねずみ)など、体重が重くなるにつれ心臓はゆっくり打ち、ゾウは毎分 30 、クジラは毎分 20 くらい、… 拍動というよりも地鳴りというイメージになる。

♣ そして体重が 60 kgの 人間 は 図のちょうど中間体重の ヒツジ と似ていて(○印)、毎分 70 回ほどの心拍を打つ。つまり、人間は高級な動物であるから、なにか「心臓に特典」がありそうに思えるが、実際には他の動物たちと何も変わらず、平等に自然そのもの中に収まっている。

3倍ではまだ不足か

図 2 は「動物の体重と寿命」の関係を示す図である 5 ) 。小動物のネズミ・モグラの寿命は 1 年余しかない。体重がもっと大きいウサギやキツネはもっと長生きになり、ウマ・ライオンの体重で 30 歳くらい。更に体重が何トンもあるカバ・ゾウになると 50 歳くらい生きる。

♣ さて、人間の位置も他の動物と平等な自然態であるか?よく見よ ! 青い基準線を何度も折り返した遥か下、90 歳ほ どの別格な位置に人間はいるではないか ! 象を越える人間の場所は明らかに特典であり、これは 「人の知恵と努力」 = 大脳 の所産と言えるだろう。

♣ この位置にあるお蔭で人間の心臓は一生の間、対応する動物の 約 3 倍の鼓動を打つことができるようになった。他の動物の心拍数は一生のあいだ、およそ 10 億回、これに対して人は 30 億回以上にも及ぶ。神様、有難う!と言うべきではないか?

♣ 老人たちは「長生きは辛い」とおっしゃるが、同時に「もっと長生きをしたい」と矛盾することをおっしゃる。すでに 3 倍もの特典付きの心臓を持つのが人間なのに、もっと もっと、と熱望される。それは罰(ばち) 当たりの欲張りではなかろうか?

♣ 人間の得意技は大脳の中にあり、平和を愛し医療・福祉に励むのだから、「知恵と努力」できっと「更なる延寿」を切り拓いて行けるかも知れない。

♣ ただし、ここでみんな よく考えて欲しい――昔の 50 歳が今の 100 歳に増えたときは 確かに「幸せ」 が訪れた。でも、それが 200 歳 以上に延びた時、はたして人の心に 「幸せ」 が留まってくれるだろうか?人も動物の一種であるから、あまり無茶な望みを求めず、「特典は 3 倍」ほどで こらえる のがよいのではなかろうか? 1988字 
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要約:  人間は厳しい「老いの 4 原則」の下でありながらも長生きを重ねてきた。 心臓は、人間も動物も全く同じ原理で働くが(図1)、有難いことに、人の心臓は 3 倍もよぶんに打つ特典を持つ(図2)。 振り返って図 2 をよく見よ… 人間の特典ある位置が他の動物よりも更に下方に離れて 、なお一層長生きするようになれば、老人の心に もっと多くの幸せが訪れて来ると思うか?

参考: 1) 新谷:「長生きの秘密」、福祉における安全管理、#428, 2013. 2 ) Strehler BL, General theory of mortality and aging. Science Jul 1960: 132 (3418), pp14~21. 3 ) 新谷:「加齢と老化の今後」;ibid # 626, 2017. 4 ) 新谷:「心拍数と寿命」;ibid # 520, 2015. 5 ) 新谷:「ライオンの 3 倍生きる」、ibid # 616, 2017.

職員の声

声1: 仮に 100 歳を越える長寿を得ても、本人は認知症で長生きを感謝することを知らず、しかも社会負担は激増する … 誰が得をしているのか?(答: 得をするのは、老人長寿を建前(たてまえ)として選挙に勝つ政治家である …スエーデン等では 「寝たきり」 などを作らず、このような矛盾は存在しない)。

声2: 急速かつ特異な進化を遂げた人間ではあるが、老人の公的扶助は予算限度一杯だ、私費で長生きして下さい(答: 老人問題のすべては 「他力」本願 が原因である… もう少し 「自力」 で生きる姿勢を示して欲しい)。

声3: 人間は知恵のゆえに 3 倍も長生きが可能となった …. ならば、知恵を働かして ピンコロ で逝く方法を発明して下さい(答: 統計によると、女性は 12 年ほど病気をした後でなければ死ぬことは出来ない… だけど、もしこの病気の 12 年を取り除いたら、厚労大臣のクビが飛ぶよ。ジワコロは辛いけれど、「死んではいない」ほうを有難がられるのだ)。 ( cf: ジワコロ = ジワリ ジワリ 生き続けた後 逝くこと)

声4:今以上にヒトが長生きするのは遺伝子的にムリがあるのか?(答: 視力・聴力・歯の寿命・骨折など多くの生命力は 100 歳でさえ もう遺伝子の保護を受けていない。そもそも子を産まないまま、進化論の点では意味が付けられない老後の 50 年は、ただ慣性だけで生きているのではないか。それだけに病気も多く、また老後という期間がある動物は人間だけに限られているのだ)。

プロフィール

ふじひろパール

Author:ふじひろパール
「ふじ」=新谷冨士雄
「ひろ」=新谷弘子

社会福祉法人 パール
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